37歳のサラリーマン三上悟は、通り魔に刺されて死んでしまう。
しかし、人間としての記憶を残したまま、スライムとなって異世界の洞窟に転生。本来は最弱レベルのモンスターのはずが、「大賢者」「捕食者」などの希少なスキルを有して転生したこともあり、洞窟に封印されていた暴風竜・ヴェルドラと友達に。お互いに名前を付けあい「リムル=テンペスト」となると、洞窟の外の世界へと旅立つのだった。
可愛いらしい姿に似合わぬ戦闘力と知力を持ち、頼まれたら断れない性格のリムルは、ゴブリンやオーガなど多くのモンスターを危機から救い、仲間を増やしていく。

10月からスタートしたテレビアニメ『転生したらスライムだった件』、通称『転スラ』も2クール目に突入。先週放送された第15話では、主人公のリムルがついに建国! さまざまな種族が共存する「ジュラ・テンペスト連邦国」の盟主となった。クライマックスに向けて、ますます物語のスケールも大きくなっていく中、エキレビ!では、『転スラ』を生みだした原作者の伏瀬と、アニメの制作を指揮する菊地康仁監督の対談インタビューを実施。前編では、アニメ『転スラ』の丁寧な描写の秘密を探っていく。


役者さんの芝居をどんどん拾って、膨らませている


──原作者である伏瀬さんは、放送中のアニメをどのような気持ちで観ていますか?

伏瀬 毎週、とても楽しく見させて頂いていますし、すごく良い出来なので大満足しています。

菊地 ありがとうございます(笑)。

伏瀬 小説を書く時には、自分の頭の中だけで大勢のキャラクターを考えるので、一人一人の個性を立たせることが非常に難しいんです。でも、アニメでは、声優さんの演技や、アニメーターさんの描かれる動きなど加わるので、キャラクターにさらに深みが出ているんですよね。そうやって、自分だけではなく、いろいろな人の力も結集されて、キャラクターたちが本当にそこに存在しているような世界が広がっているのを観ることができて、とても喜ばしく思っています。

菊地 セリフなどが決まっていたとしても、やっぱり役者さんの演技でキャラクターって変わって行ったりするんですよ。

伏瀬 そうですよね。 特にガビルとかは、すごく好きです。

菊地 ガビルとその部下たちは、非常に良い味が出たと思います。ガビル役の福島(潤)さんは、はじめからいろいろとバリエーションをつけた芝居を用意していて、セリフとセリフの間を自分なりの魅せ方で埋めてくれるんです。そういう芝居をしてもらえると、絵の方でも「そのテンションを生かしてやろうじゃないの!」って感じになるんですよね。他のキャラクターも役者さんの芝居をどんどん拾って、膨らませる形で作っています。

伏瀬 声優の皆さんが(台本に)書かれているキャラクターをなぞるだけではなく、キャラクターを自分のものにして演じて下さっていますよね。『転スラ』という作品をすごく愛して下さっていることを感じています。あとは、シズさんもアニメになって、すごく深みが出ました。漫画でも(原作小説より)かなりいい人になっていますが、アニメはその魅力を拾った上、さらに膨らませている感じで。しかも、花守(ゆみり)さんの演技が加わったことで、本当にいいキャラクターになりました。


菊地 みんなの『転スラ』愛がすごいんですよね。例えば、アニメーターもそうで、リムルの動きもすごくバリエーションがあるんですよ。スライム状態の時でも、走る時とか、振り向く時とか。「あれ? こんな動きのバリエーションあったっけ?」と思うくらい動きをつけてきてくれるんです。

伏瀬 跳ねさせたり、滑らせたりとか、いろいろなことをやって下さっていますよね。

菊地 そうなんです。動きに合わせて、すごくバリエーションを変えてくれていて。音楽を作る方や、音響監督さんも、こちらからお願いをしなくても「ここは、こういう音楽にしよう」とか、すごくいろいろと考えてくださっています。

「現代人がスライムになった、さて、どうする?」という物語


──『転スラ』は小説投稿サイト「小説家になろう」への投稿からスタートした作品ですが、最初はどのような動機で書きはじめたのでしょうか?

伏瀬 (公募の)新人賞の応募作を書く前に、物語を作る練習をしようと思って書きはじめたんです。なので、最初の頃は単純に楽しんで書きたいと思っていたし、自分のやりたいことを詰め込んでいました。まずやりたかったのは、主人公が別の世界で何かになって、その世界をどのように見ながら、楽しんだり苦しんだりするのかを主人公の目線で描写すること。その時には、人間だった時の知識を持って行く方が、読者の人も自分の知識を投影しやすく感情移入してもらいやすいだろうと考えて、「現代人がスライムになった、さて、どうする?」という内容の物語を書きはじめました。そこが受け入れられて、たくさんの人に読んでいただけたのだと思います。でも、言ってしまえば、最初の頃は不慣れなまま自分のやりたいことを模索しながら書いていたので、テーマ的なことを考えて作品に込めるようになったのは、書籍になり、その実感も出てきた2巻くらいからなんです。逆に、1巻の中には自分のやりたいことがたくさん詰め込まれてはいるのですが、入っている要素がそれぞれ違うことだったりするので、アニメとして構成する時には非常に苦労しました。

菊地 僕が最初に原作小説を読ませていただいた時も、まさに今、伏瀬さんが仰ったところ、別の世界に放り込まれた人がスライムになって、「さてどうしようか」と考えながら進んでいくところがいいなと思ったんです。一番気に入ったのは、自分の仲間をどんどん増やしていって、やがて自分の国を作っていくこと。これは物作りしたい人間にとっては、ドンピシャで刺さるところなんじゃないかなって。僕も、仲間と一緒に物を作るのがとても好きだから、今アニメの監督をやっているわけで。すごくしっくりくると感じたので、アニメでもその魅力を前面に打ち出すと良いんじゃないかなと思いました。

伏瀬 でも最初は、リムルが国を作る展開も考えてなかったんですよね。

菊地 え? そうなんですか?

伏瀬 最初に「国を作る」という目的があったのではなく、主人公のリムルにできることをどんどん詰め込んで描写して行くと、自然と国を作ろうという流れになったんです。スライムになったリムルは、最初、草を食べているのですが、何で食べているかというと、他にできることがなかったから。そういう感じで「今、できることをやっていく」というのが作品のテーマの一つでもあるんです。リムルは人間としての欲求に忠実で、自分が楽しみたいし、楽をしたいから、どんどんできることを増やしていく。だから、仲間が増えて、みんなで楽しく、楽に暮らせるようにするためにも、コミュニティが村になり、町になり、いつの間にか国になっていく流れは必然なのかなと思います。


全体の構成を見直して欲しいという要望を出した


──アニメ化にあたって、菊地監督から伏瀬さんに特に確認したことや、伏瀬さんから菊地監督を始めとしたアニメ制作サイドに、「ぜひこういう方向で」などとオーダーしたことがあれば教えて下さい。

菊地 伏瀬さんには、シナリオも全部見て頂いて監修してもらっているのですが、大きなことは何かあったかな……。けっこう前の話だから、あまり覚えてないなあ(笑)。

伏瀬 作業の流れ的に、けっこうこちらの要望を先にお伝えしていたので、その中に監督が聞きたいことがあったのかもしれないですね。

菊地 それに、ほとんどの答えは小説の中に書かれているんですよね。スタッフの中にも、原作を読んでいる『転スラ』好きな人が結構いて。「このスキルって、いつ手に入れたんだっけ?」とか聞くと、すぐに答えてくれる人がたくさんいるんです。

伏瀬 逆に、そういうことを僕に聞かれても、的中率は悪いと思います(笑)。

菊地 ははは(笑)。

伏瀬 僕からは、全体の構成を見直して欲しいという要望を一度出しました。尺の関係もあるので非常に難しいところではあるのですが、大事なシーンで削って欲しくないところがあったので、「そこは大事なところなので戻してもらえないですか」というお願いをした形ですね。とはいえ、2クールという尺は決まっているので、シリーズ構成の筆安(一幸)さんが尺と戦いながらまとめて下さった構成に対して、「ここを加えてください。でも他も削らないで」なんて言うことは有り得ない。なので、大事なシーンをこぼさないために、「原作のどこまでの内容を描くのか」というところから見直せないですかとお願いして、大人たちの会議で再検討してもらったんです(笑)。

菊地 僕は2巻くらいまででも十分に2クールの作品はできると思っていたのですが、最初に製作委員会サイドから提示されたのは、かなり先までのエピソードを2クールの中でやりたいという案だったんです。だから、「そこまでやるとなると、けっこうな駆け足になりますが良いですか?」という話もして。そこから、いろいろと折衝があったんです。

伏瀬 監督と初めてお会いしたのはシリーズ構成を決める会議の時だったのですが、その時から「2巻まででもできますよ」と仰っていましたね。僕も最初は頑張って、何とか委員会サイドが提示したエピソードまで収められないかと思っていましたが、すぐに「あ、これは無理だ」と思い始めて。無理やりつめることを考えるよりも、どこまで描くのかを再検討してもらう方が早いと思ったんです(笑)。原作者としては、当然、丁寧に描いてもらえる方が嬉しいですからね。


菊地 それは、そうですよね。

伏瀬 その後もいろいろとやり取りはあったのですが、最終的には、僕らの気持ちを察したプロデューサーも動いてくれて、丁寧に描いてもらう方向にまとまりました。
(丸本大輔)

(後編に続く)