8月29日に放送された『科捜研の女』(テレビ朝日系)の第15話。10話のお寿司、13話のお茶に続いての、食品関連回。今回、このドラマが取り上げたのはぬか漬けである。

第15話あらすじ


“ぬか漬けの女神”として有名な料理研究家・森本雪絵(森口瑤子)の夫で、所属事務所の社長でもある純一(戸井勝海)が、オフィスで殺害されているのが見つかった。
榊マリコ(沢口靖子)らが鑑定したところ、死因は後頭部を丸い形状の凶器で殴打されたことによる脳挫傷と判明。現場にはミニトマトとズッキーニの漬物が残されており、純一の胃からはミニトマトとズッキーニと人参が検出された。
雪絵はぬか床の管理を徹底するため、純一の実家である古民家に暮らしており、夫とは別居中。古民家を訪れたマリコは、ぬか漬けは発酵食なので、たとえ同じ材料、同じ工程で作ったとしても、かき混ぜる人間の手についた微生物によって違う味に変化することを雪絵から教わる。ならば、ぬか床の微生物の組成比から犯人を特定できるのでは? と思いつき、社員たちがそれぞれ管理している“マイぬか床”を調査することに。結果、現場にあった漬物は純一の愛人・柳原彩花(仲村瑠璃亜)のものと判明。しかし、柳原は人参を漬けていなかった。
凶器の形状を見た解剖医の風丘早月(若村麻由美)は、凶器はスキレットではないかと推測。しかし、事件当日に収録した番組で雪絵はスキレットを使用していなかった。ぬか床に釘を入れることがあると聞いたマリコは、雪絵の番組に出演したアイドル・河合ルミ(坂ノ上茜)が持ち帰ったぬか床を調べる。すると、ぬか床の中から件のスキレットを発見。雪絵のアシスタント・野村俊哉(少路勇介)は、事件直前に純一を訪ねた雪絵が疑われるかも……と彼女をかばう目的で現場にあったスキレットをぬか床に隠したことを認めた。
雪絵と純一はライセンス契約で揉めていた。純一は量販店で1,000円以下で買えるようなスキレットに、雪絵の名前を刺繍したハンドルカバーを付けて1万円で販売するつもりだった。このハンドルカバーを調べてみると専務・三島忠之(武野功雄)の常在菌が見つかる。犯人は三島だった。
雪絵が漬けた人参のぬか漬けを食べた純一は、森本家に受け継がれたぬか漬けの味を思い出し、ぬか漬けのライセンス契約をやめると宣言。ぬか漬けがなければ社員が路頭に迷うと憤慨した三島は、カッとなって犯行に及んだのだった。


ぬか漬けによって小さなマリコが増殖


15話のタイトルも相変わらず科捜研クオリティだ。
「何でもぬか漬けする殺人犯!? マリコの激旨ナス鑑定!!」
誰がどう見ても笑いに走っている。

開始5分で、数え切れないくらい「ぬか漬け」「ぬか床」が連呼された今回。あまりに突拍子のないテーマとも思ったが、そうではない。ぬか漬けは科学的に見ても面白く、親和性の高さはマリコのテンションを見れば一目瞭然だ。

マリコ 「雪絵さんのぬか床は深くて複雑で……まさに小宇宙よ!」
土門 「お前が味を語るなんて珍しいな」
マリコ 「味じゃなくて微生物の話!」
土門 (苦笑)

ぬか漬けというより微生物にハマっているマリコ。「ああ、お前はそういう奴だった」と土門は愛想笑いしながらあからさまに引いた。「やっぱりそっちか」と、我々も彼と同じ気持ちである。土門みたいな表情になる視聴者も多かったはずだ。

マリコのぬか漬けへの愛は止まらない。ある日、姿が見えないマリコがどこかから帰ってきた。
「お散歩。この子に外の空気を吸わせてみようと思って」(マリコ)
「この子」とはぬか漬けのことである。壊れかけのマリコ。

マリコ 「野菜と私の手についた微生物が熟成と発酵を繰り返して変化し、私だけの菌が増えていくの。それはまるで……」
日野 「小さなマリコくんが増殖してる感じか?」
呂太 「やばいよ、うっとりしちゃってる……」

ぬかから取り出したナスは無残にも色落ちしていた。

宇佐見 「肝心の味はどうなんです?」
マリコ 「味って? ちょっとわからないんだけど……」

マリコのやっていることは料理というより培養である。

「あなたのぬか床の菌が凶器の菌と一致しました」


純一の会社は問題を抱えていた。ぬか漬けを愛する雪絵と経営を優先する純一の対立。
純一の考えるプランが、またどうしようもないものばかりなのだ。量販店なら1,000円以下であろうスキレットを、雪絵の名前入りハンドカバーを付けるだけで1万円というぼったくり価格で売ろうと目論んだり。雪絵の名前が冠のぬか漬けなのに、大量発注できる工場で漬けてしまおうというやっつけぶり。会社は倒産間際の瀬戸際にあるようだ。純一の手腕を見ていればさもありなん。

そんな純一を殺したのは、第一発見者の三島専務だった。雪絵が作ったぬか漬けを食べて初心を思い出し、ぬか漬けの販売をやめようと改心した純一。クズになりきれないせいで、彼は殺されてしまった。
「俺だって……俺だって人生賭けてるんだ!」(三島)
人生を賭けているのはわかるが、動機があまりにも雑だ。いくら何でも沸点が低すぎる。子どものケンカじゃないんだから。

そんなお粗末な事件の犯人を、マリコはならではの方法で特定した。「ぬか漬けで個人が特定できる」という彼女らしい発想が、真実をたぐり寄せたのだ。
「あなたのぬか床の菌と、凶器に付いていた菌の組成比が一致しました」(マリコ)
凛々しいのか笑っていいのか迷う詰め方で、犯人をチェックメイトするマリコ。
「まさか、ぬか漬けが証拠になるなんて……」(三島)
呆然としているけども、後悔の言葉が独特すぎやしないか。

亡き被害者を思い、マリコはつぶやいた。
「人生最後の食べ物が思い出のぬか漬けになったのね」(マリコ)
すごい締めである。なんだ、この事件は……。

10話のお寿司、13話のお茶に続く、『科捜研の女』食品関連回。中でも、今回のぬか漬けと殺人の掛け合わせは間違いなく極地だった。
(寺西ジャジューカ)

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Blue Rain」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中