11月21日放送『科捜研の女』(テレビ朝日系)21話のストーリーはややこしかった。全く真犯人が読めないし、演出は変だし、ミスリードばかりだし、呆れていたら急に最後に泣かせにくるのだ。

<第21話あらすじ>ぬいぐるみから亡き孫の肉声「おじいちゃん、遊ぼう」


本城テック副社長の本城雄作(尾崎右宗)が自室で刺殺体として見つかった。雄作は鉄道玩具コレクターで、榊マリコ(沢口靖子)らが臨場したときも鉄道模型2台が走行していた。現場に凶器はなかったものの、被害者の血液が付着したおもちゃの車のタイヤが発見される。さらに走っていたおもちゃの電車1台は事件前日まで壊れて動かなかったという証言もあがり、その表面からは身元不明の指紋が検出された。
現場にあった微物の鑑定結果から、おもちゃをボランティアで修理してくれる“おもちゃ診療所”の存在が浮かび上がる。さらに。現場にあったおもちゃのタイヤは、市内の宝飾店に勤務するジュエリーデザイナー・椎名小百合(遊井亮子)が息子・晴(つる井孝太)のため、診療所の“ドクターK”久保井俊平(西村まさ彦)に修理を頼んだトラックの部品と判明。久保井は5年前まで本城テックの下請けをしていたが、雄作の気まぐれから契約を切られた過去があった。
久保井の自宅にあったうさぎのぬいぐるみを橋口呂太(渡部秀)が触ろうとした瞬間、久保井は呂太を怒鳴りつける。マリコはこのぬいぐるみの中に凶器があるのでは? とぬいぐるみを解剖(分解)するも、中からは何も見つからず。そこでおもちゃ診療所にあるぬいぐるみ全てをX線検査すると、1体のぬいぐるみから工具を発見。これに付着する血液は雄作のそれと一致した。この工具は主にジュエリーデザイナーが使用する加工用のヤスリだった。
かつて、雄作は小百合と交際しており、晴の父親は雄作である。本城テック社長で雄作の父・雄大(白井滋郎)は雄作の妹・郁江(大谷由祐子)が生んだ孫の遼馬(有村春澄)を溺愛。次期社長の座が危うくなった雄作は、晴を引き取ろうと小百合に交渉していた。事件当日、小百合は断りの返事をしに雄作を訪ね、鉄道模型の修理に来ていた久保井と遭遇。おもちゃのタイヤは、そのときに小百合が落とした物だった。
小百合から修理を請け負ったトラックのタイヤを取りに久保井が戻ると、すでに雄作は亡くなっていた。久保井は小百合による犯行と考え、彼女をかばうために凶器のヤスリをぬいぐるみの中に隠した。
その後、現場にある鉄道模型から小百合が勤めるジュエリーショップ店長・高槻岳人(松木賢三)の指紋が検出される。雄作が隠すダイヤを盗みに入った高槻は雄作と揉み合いになり、雄作を刺殺していたのだ。
マリコは捜査のために分解したうさぎのぬいぐるみを修理し、久保井に返却。ぬいぐるみには、亡くなった孫が残した「おじいちゃん、遊ぼう」という声が録音されていた。


全く意味のなかった、思わせぶりな謎演出の数々


真犯人がこれほど読めなかった回も珍しい。今回はミスリードの連続だった。

まず、小百合が怪しかった。特に怪しかったのは、勤務中に土門薫(内藤剛志)から「外でお話をしましょう」と促された瞬間。束ねていた髪の毛をサラリとほどく彼女の素振りが妙に意味深だったのだ。しかもあのとき、映像がなぜかスローモーションになっていたし。

久保井も怪しかった。マリコが自宅を訪ねると中から紛らわしい悲鳴を上げるわ、「私が殺した」と自供し始めるわ。さらに、彼は疑われるべき材料が揃いすぎていた。本城から下請け切りされたことがあるし、小百合の息子は自分の孫と同じ名前「ハル」だし、小百合は亡き娘と同じシングルマザーだし。いくら何でも、乗っけすぎでしょう!

これら全て、実は目くらましだったのだ。本当の犯人は小百合の勤め先の店長・高槻で、犯行の動機は本城が鉄道模型の中に隠していたダイヤ。……そんなの、わかるわけないよ! モブすぎて、高槻なんて完全にノーマークにしていた。

じゃあ、小百合が髪をほどいたときのスローモーション、久保井の悲鳴、さらに序盤で雄作の父・雄大の眼鏡がキラリと光った演出は何だったのだろう? 元も子もないが、何でもなかった。意味のない、ただの謎演出。警察ドラマであり、ちょっとした実験映像も兼ねた60分間だったということ。何だよ、それ! 制作陣の真意が読めず、いまだにモヤモヤしっぱなしである。

どうでもよかった事件


被害者・雄作は救いようのないクズだった。妊娠した小百合をあっさり捨て、次期社長の座が危うくなると「子どもを譲ってくれたらお前にダイヤをやる」と豹変。ありえないその発想はド畜生だ。雄作に恨みを持つ者をリストアップするととんでもない数の名前が挙がるし、彼にいいところは1つもない。

対する加害者・高槻も負けてない。客のネックレスをなくしたというポンコツすぎる理由で人を殺めた、見ていられないほどの小物っぷり。つまり、クズがクズを殺した一件でしかない。被害者にも加害者にも同情できず、事件そのものがどうでもいい域に達している。刑事ドラマなのに。
今回はそれより被害者に虐げられた人、もっと言えば、おもちゃの修理のほうが気になった。

ラストで突然泣かせにきた件


久保井が大事にするぬいぐるみを風丘早月(若村麻由美)が解剖するくだりはいたたまれなかった。ついさっき、久保井から「子どもたちにとっておもちゃは友だちであり宝物」と言われたばかりなのに……。
「では、開いてみましょうね」(風丘)
開くなよ! 科捜研の面々の狂気に震えていたら、実はこれもミスリードだった。このぬいぐるみは久保井の孫・ハルちゃんの生前の声を録音しており、それを呂太が修理するという着地点。ぬいぐるみが発したのは、亡き孫の「おじいちゃん、遊ぼう」という一言である。ハルちゃんは久保井を嫌っていたのではない。恥ずかしがっていただけ。人見知りなりに打ち解けようとしていた最中、事故で亡くなるなんて悲しすぎる。残された遺品が伝えた、今は亡き孫の本心。久保井にとって、この結末は却って辛かったかもしれない。事件がどうでもいい内容だっただけに、エンディングで余計に泣けた。

「ドクターKは失敗しないから」というセリフも飛び出し、ふざけた回だなと思っていたら、ラストで突然泣かせにきた21話。感動の結末との落差を狙うフリだったか? これは反則である……。
(寺西ジャジューカ)

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中