「ケイちゃんのお父さんは……キアヌ・リーブス」

思っていたドラマと違った。1月8日にスタートした『知らなくていいコト』(日本テレビ系)。てっきり、週刊誌編集部が舞台のお仕事ドラマと思っていたのだ。それこそ、吉高由里子主演『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)や『正義のセ』(日本テレビ系)のような。

今作は“お仕事系ヒューマンドラマ”を謳っている。くも膜下出血で倒れた母・真壁杏南(秋吉久美子)が娘・真壁ケイト(吉高由里子)に残した冒頭の言葉から事態は急変し、「ケイトの父親は無差別殺人犯・乃十阿徹(小林薫)では?」という疑惑に行き着いた。

それにしても、乃十阿徹(のとあとおる)という名前が目を引く。「のとあとおる」は「not at all」とも言い換えられ、何か意味を含んでいる? とも思ったが、まだよくわからない。ちなみに、「not at all」は「どういたしまして」という意味である。

【第1話あらすじ】「殺人犯の遺伝子は世に残せない」と婚約破棄


杏南の葬儀が終わった数日後、職場に復帰したケイトは、ずっと追っていた詐欺のネタを編集長の岩谷進(佐々木蔵之介)に直談判。ネット上の架空の人物「チャールズ」に恋をして大金を貢ぎながら、自分は騙されていないと信じる高齢女性・多賀笑子(倍賞美津子)に取材をするべく、ケイトは笑子が営む茶道教室に入門した。しかし、ガードの固い笑子を前に取材は難航……。
翌日、再びケイトが茶道教室を訪ねると、笑子はチャールズからのメッセージを翻訳していた。文面は「爆撃に遭って足を負傷したから100万円入金してくれ」。ケイトは「これは振り込み詐欺で先生を騙そうとしている人がいるんですよ!」と諭したが、笑子は聞く耳を持たなかった。
その後、自宅で遺品を見ていたケイトは杏南の結婚指輪を発見。発注したのは誰か調べると、殺人犯の乃十阿だと判明。動揺したケイトは交際中の野中春樹(重岡大毅)に事実を打ち明けようとしたが、野中は言葉を遮ってケイトにプロポーズした。
その後、ケイトは笑子の元を訪ね、「愛してるという言葉は人をどん底から頂点まで引っ張り上げてくれます。前回はお気持ちもわからず、生意気なことを言いましてお許しください」と謝罪。心を許した笑子はケイトの取材を許可し、その記事は岩谷に評価された。
数日後、野中はケイトの家を訪ね、「子どもができたとき、その遺伝子はどうすんだって思っちゃう自分がいる」と、婚約の破棄を申し出た。

今カレ・重岡、元カレ・柄本、どちらも曲者


『わたし、定時で帰ります。』と同様に、このドラマも今カレと元カレが吉高を取り巻いている。2人の男の言動がいちいち対照的なのだ。


父親がキアヌ・リーブスかもしれないとケイトが打ち明けたとき、今カレ・野中は「ケイさんの顔は可愛いけどかなり無理があると思います」と脱力させ、ケイトを笑わせた。一方、元カレの尾高由一郎(柄本佑)は「(父親がキアヌだなんて)素敵な話じゃないか!」と“父親キアヌ説”を肯定し、杏南とのツーショット写真を渡してケイトに涙を流させた。
はっきり言って、どちらも曲者だ。尾高は乃十阿が出所する写真を撮った過去がある。その写真が載った「週刊イースト」を尾高から見せられ、杏南が泣く回想シーンもあった。なのに、尾高は白々しくすっとぼけるのだ。

ケイト 「私がキアヌ・リーブスの子じゃなくて乃十阿徹の子だって、尾高さん知ってたでしょ?」
尾高 「知らないよ、そんなこと」

尾高はケイトと乃十阿の関係を知っていたから、本人に気付かせないよう“父親キアヌ説”に喜んだと深読みすることもできる。かつて報道カメラマンだった尾高は現在、動物カメラマンとして活動中だ。何が理由で、彼は転身したのだろう? 尾高は、明らかにこのドラマのキーマンである。彼の過去も今後、明らかになっていくはずだ。
それにしても、尾高を演じる柄本がいつになく色気を放っている。吉高由里子の相手役として大健闘の存在感だ。

そして、今カレの野中。「私、殺人犯の子どもなの」と落ち込むケイトを抱き寄せプロポーズしたのに、後日、他人行儀な言葉遣いで婚約破棄を告げた。ちょっと解せない。杏南と乃十阿の経歴を冷静に分析し、あんなに親身に相談を受けていたのに。この心変わりは何か裏がある気がする。
気になるのは婚約破棄を告げた日、野中が風邪で会社を休んだという事実だ。空白の一日にきっかけがあったのではないか? 例えば、全てを知る尾高に何か吹き込まれたとか……。

取材の仕方が失礼なケイトが逆の立場を味わう?


ケイトの取材は、どこか失礼だ。人のプライベートに土足で踏み込んでいく。母が詐欺に遭っているかも? と、相談に来た笑子の息子に「息子さんが相続するお金も減っちゃいますねえ?」とニヤニヤする嫌な態度。まだ笑子は生きているというのに……。笑子の心を開かせた「アイ・ラブ・ユーをお金でお買いになったんですね」という説得も、デリカシーがあるとは思えない。

他者のプライベートを暴く週刊誌記者の出生に秘密があるというところが、このドラマの肝だ。
まず、他人の秘密を食い物にしてきたケイトが尾高や野中らから逆にスクープされるという流れが容易に想像できる。ちなみに、このドラマのキャッチコピーは「信じられないスクープは、私自身のことでした。」。なるほど、ケイト本人が出生の秘密を自力で突き止め、スクープにするという展開もあり得そうだ。

お仕事ドラマのような、謎解きドラマでもあるような。焦点が絞れないうちに、人物紹介のような形で終わってしまった第1話。好作品なのか不発なのか、判断できる段階にもまだ辿り着いていない。この先、目の覚めるような展開が待っていると期待して(何と言っても脚本・大石静である)、今夜放送の第2話を待ちたいと思う。
(寺西ジャジューカ)

『知らなくていいコト』
脚本:大石静
主題歌:flumpool 「素晴らしき嘘」(A-Sketch)
音楽:平野義久
演出:狩山俊輔、塚本連平 ほか
プロデューサー:小田玲奈、久保田充、大塚英治(ケイファクトリー)
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中