倉本聰・脚本「やすらぎの刻〜道」(テレビ朝日系・月〜金11時30分〜)第40週。

先週、大騒ぎしていた菊村栄(石坂浩二)の原稿紛失騒動はアッサリと解決したが、竹芝柳介(関口まなと)の国外逃亡や、桂木夫人(大空眞弓)の万引き癖再発など、今週も「やすらげない」特濃事件が次々と起こった。


女装で国外逃亡!?


竹芝家からの使者がやって来て、日本では顔が売れているため表に出すのは難しい柳介を、かつて留学していたイギリスに逃亡させようという計画が明かされた。

ただ、日本から脱出するにしても、柳介の顔がバレて騒ぎになっては困るからと、女形のメイク技術を駆使して柳介を女装させ、コッソリと出国させることに。

どこかゴーンさんの密出国騒動を思わせるこの計画。シナリオの執筆時期を考えると、微妙な変装をして保釈されてきた時のことが頭にあったのかも知れないが、まさかその後、楽器運搬用のケースに隠れて密出国するとまでは思ってなかったことだろう。

イギリスでの再起に意欲を見せる柳介だったが、祖母のお嬢(浅丘ルリ子)は悲しみに暮れていた。

「今度いつ日本に帰ってくるの? ほとぼりが冷めてテレビ界からお呼びがかかったら帰ってくる? 早く帰ってこないと、おばあちゃんいなくなっちゃうわよ」

年老いた祖母から、こんなことを言われるとつらい……。

お正月におばあちゃんから「今年で最後かもしれないからねぇ〜」なんて老人ギャグを言われながらお年玉を渡された時のようないたたまれなさを感じる。

しかしお嬢、つい最近まで会ったこともなかった孫・柳介にはやたらと執着するわりに、生んだ直後に竹芝家に奪われていった息子・柳二郎(柳介の父親)には別段会いたがらないというのはどういう心境なのか。

やっぱり、おばあちゃん的には子どもよりも孫の方がかわいいの!?

突然の処女告白と、白馬の騎士妄想


柳介に対して執着心を燃やしていたのがもうひとり、バー・カサブランカのホッピーちゃん(草刈麻有)。

前作のハッピー(松岡茉優)からバーテンダーの座を引き継いだホッピー。ハッピーが、老人たちの執拗なセクハラを受けたり暴走族にレイプされたりと、濃厚なエピソードに巻き込まれていたのと比べるとだいぶ影が薄かったが、ここにきて強烈なキャラクターを全開に!

お嬢から頼まれてメッセージを渡していたスタッフの正体が竹芝柳介だと気付いたとたんサインを求めていたことから、ミーハーな子であることは分かっていたが、それ以上に、だいぶ痛い子だったようだ。

「白馬の騎士って知っていますか? 嵐の夜に現れて、孤独な少女を連れ去って行ってくれるっていう話」
「秘密なんですけど、私まだ処女なんです。白馬の騎士が現れるのをずーっと待ってました。やっと現れました。それがあの人です、タケリュウさんです」

唐突に処女を告白したかと思ったら、白馬の騎士がどうのこうのと……。夢見がちを通り越して、少々頭がおかしいとしか思えない!

長年、心の機微をていねいにシナリオへ落とし込んできた倉本聰なのに、どうして現代の若い女性のキャラクター造型がここまでトンチンカンになってしまうのか。

柳介がアッサリ国外逃亡してしまったと知った後の「白馬の騎士が逃げちゃった……ひづめの音も立てないで」という発言もだいぶノイローゼだ。

ところで柳介、マリファナ所持で一緒に捕まった彼女と、30歳になったら広島で再会するという約束をしていたはずだけど、イギリスに行っちゃっていいの!? それまでには戻ってくる計画なんだろうか?

万引きを止めてもらえるだけ幸せか……


上着をはこうとしたり、ズボンを頭から着ようとしたりと、オモシロ認知症が出ていた桂木夫人も色々とヤバイことに。最近、万引き癖&アル中が再発しているのだという。

かつては100円ショップの商品を盗む程度だったのに、次は「Ms.REIKO」なる超高級ブランド店のバッグを狙っているらしい。もはや万引き癖ではなく、普通にドロボウだ。

桂木夫人がバッグを盗むため原宿に行くと知り(認知症のくせにすごく計画的)、菊村や有坂エリ(板谷由夏)、万引きGメンの高砂一平(でんでん)たちは後をつけ、万引きを阻止することに。

万引き歴も相当長いので、それなりのテクニックがあるのかと思っていたが、桂木夫人の手口は、多少監視カメラを気にする程度で、あとは強引に服の内ポケットにねじ込むというパワープレイ(しかもバッグではなくハイヒールを)。

ハイヒールを2足ともポケットに突っ込んだところで、一平が声をかけて万引きを断念させた。……だったら事前に説得してもよかった気もするが。

認知症&盗癖&アル中と、親族であっても見放されそうなほど厄介な状態になっても、これだけ気をかけてくれる人がいるというのは幸せなことと言えるか。

「道」がドラマ化?


国外逃亡騒動、万引き騒動と、自分に関係ないはずの騒動に次々に巻き込まれていた菊村だったが、「ほとぼりが冷めてテレビからおよびがかかれば柳介が戻ってくる」と信じるお嬢からも、執筆中の「道」のシナリオに柳介の出番を作るように頼まれていた。

「あのシナリオはな、オレ自身のために書いてるものなんだよ。どこかテレビ局に売って金を儲けようなんて気はまったくないんだ」

当初は断っていた菊村だったが、かつてテレビ局の花形ディレクターだった中山保久(近藤正臣)に連絡を取り、「道」のドラマ化に向けて動く気になったようだ。

長年、商業作品としてのシナリオを書き続けてきて「もう人にいじられるのは嫌なんだよ」という気持ちも本心だろうが、書いたからにはドラマとして形にしたいという気持ちもあったのだろう。

しかし、老脚本家が勝手に書いた大長編シナリオをドラマ化し、マリファナ所持で執行猶予中の役者をキャスティングするなんて可能なんだろうか?

「できるんだったら、うちの息子も復帰させてやってくれよ!」

覚醒剤所持で逮捕され、前作「やすらぎの郷」を途中降板させられた橋爪遼の父・橋爪功が思っているんじゃないだろうか。
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
・Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」「終り初物」「観音橋」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日