海の安全を守る職業「ブルーマーメイド」を目指す横須賀女子海洋学校の生徒たち。類い希な決断力と幸運の持ち主である艦長の岬明乃と、成績優秀のエリートだが運の悪い副長の宗谷ましろら航洋教育艦「晴風」のメンバーも、4年に1度のお祭り「競闘遊戯会」を満喫していたが……。


1月18日(土)から公開されている「劇場版 ハイスクール・フリート」で、岬明乃を演じる夏川椎菜と、宗谷ましろを演じるLynnによる艦長&副長対談。
この後編では、本作のラストシーンまでのネタバレにも触れながら、明乃とましろの関係性の変化や、今後の「はいふり」への思いなどを聞いた。
映画本編を未見でネタバレが苦手な人は、映画館へ行った後に読み進めて欲しい。

(前編はこちら)


2人が家族のような関係になったからこその葛藤が描かれている


──明乃とましろは、テレビシリーズの物語を通してお互いを理解していき、友人としても、艦長と副長としても良い関係性を築いていきましたが。この劇場版の物語を通して、二人の関係性にどのような変化を感じましたか?

夏川 仲の深まり方が変わったというよりは、深まったところを一旦、はがされそうになって、さらに強まるみたいな感じだったので。

──本作では、ましろが別の学生艦(比叡)の船長にならないかと声をかけられたことで、ましろは迷い、明乃も動揺してしまいます。

夏川 テレビシリーズでは、いろいろないざこざもあったけれど、最終的にはお互いを信頼しあう夫婦のような関係になれました。この劇場版で描かれているのは、そういう家族のような関係になったからこその葛藤というか……。それに、晴風の乗組員は、明乃が言うように家族なので。その家族の中の一人が抜けて、別の船の艦長さんになっちゃうかもしれないということは、2人だけではなく、家族の問題でもあって。友情ストーリーのように見えるけれど、家族の物語でもあるのかなと思いました。

──夏川さんは、ましろが比叡の艦長としてスカウトされた時の明乃の気持ちをどのように捉えていますか? また、夏川さんご自身は、その展開を知った時、どのような気持ちになりましたか?

夏川 明乃も、艦長になることがシロちゃん(ましろの愛称)の夢だということは分かっているし。もちろん応援したい気持ちもあるのですが、同時に、自分にとっても晴風にとっても、シロちゃんは絶対に必要な存在だから、引き止めたい気持ちでいっぱいなんです。でも、自分が引き止めたら、シロちゃんは晴風に残るという選択をしてしまう。それも全部分かっているからこそ、何も言わないでおこうという結論に至ったのだと思うので。心の中では、すごくざわざわしていただろうし、引き止めたいのに引き止められない、もどかしさみたいなものを感じていたはず。それは、私も一緒で、複雑な気持ちでしたね。

──Lynnさんは、ましろの心境をどう捉えて、ご自身としては、ましろの置かれた状況について、どのように感じていましたか?

Lynn もし、テレビシリーズの序盤でそういう話があったら、間違いなく「艦長になります!」と言って、晴風から去って行ったと思います(笑)。でも、いろいろとぶつかり合い、悩みながらも明乃のことを理解して、「私は、あなたのマヨネーズになる」ってプロポーズまでして(笑)。

夏川 プロポーズって言っちゃうんだ(笑)。


──まあ、二人は、晴風のお父さんとお母さんですから。

Lynn そうそう。そうやって、ちゃんと絆が芽生えたというところで、今度はこういう展開を持ってくるんだ〜って思いました。一難去ってまた一難じゃないですけれど。

夏川 そのまま、ラブラブにはさせてくれない。

Lynn ましろも、ずっと憧れていたチャンスが目の前にあるけれど、今、私が選ぶべきなのはどっちなんだろうってすごく悩んで、明乃に相談もできなくて。決断をするために(図上演習競技で)明乃に勝負を挑んだりするのですが。結局、勝負の途中でまた別のピンチが訪れて、それどころではなくなっちゃう。

──ましろと明乃の勝負の決着が付く直前、海賊によって横須賀の水路が塞がれて、晴風も海賊対策のために出港。海賊が占拠した海上要塞にも突入します。

Lynn でも、そのピンチがあって、それを晴風のみんなと一緒に乗り越えたからこそ、ましろは、やっぱり晴風でもっと頑張りたいんだと思うことができたんですよね。「オールウェイズオンザデッキ」という言葉があるんですけれど、テレビシリーズの時、ましろは、この言葉の意味を「艦長は常にデッキで指示をするべき」という意味だと勘違いしていたんです。でも、今回、この言葉の本当の意味を理解できて。だからこそ、今までのましろはやらなかったこと、晴風のピンチを救うためにデッキを離れ、スキッパー(水上オートバイ)に乗って飛び出したりもした。それは、明乃にすごく影響されたからだと思います。

被害ゼロで解決できるのかなって。台本を読みながらドキドキしていた


──この劇場版では、新キャラクターのスー(スーザン・レジェス)という少女が登場し、明乃&ましろと仲良くなって、まさに夫婦と子供のような関係にもなります。スーの存在によって、二人の関係の新たな面が見えたりしたのでは?


夏川 この関係性になっちゃったからこそ言えないことを、スーが言ってくれた感じがあったりしました。

Lynn たしかに、昔だったらお互いに口に出してたかもしれないことを、言わずに悩んでいて。

夏川 お互いがお互いを思いやるからこそ言えなくなってることを、スーが言ってくれる。そのおかげで二人の関係がまたちょっと進むというか。問題に関して、まっすぐ向き合えたのかなと思います。変な話、お互いを思いやることを一旦止めて、自分の気持ちに正直になると、結果的にはそれがお互いのことを思いやることにも繋がっていくという形になったんですよね。それは、すごくこの二人らしいな、とも思います。

──テレビシリーズで晴風が戦ったのは、海洋学校の教員艦や学生艦だったのですが、この劇場版では、本物の海賊と戦うことになりました。その展開を知った時の感想を教えてください。

Lynn ビックリしました。

夏川 前回(テレビシリーズ)のピンチも大変なピンチだったんですけれど。相手は学生艦とかだったし、(ケガ人とかの)被害という被害はなく、ある意味、平和に解決したんですね。でも、海賊とかが出てきたら、それは穏やかじゃないというか。

Lynn 本物の悪い奴だからね、

夏川 そうそう。本当に悪意のある人たちだし、大丈夫かな、ちゃんと被害ゼロで解決できるのかなって。台本を読みながらも心配で、ドキドキしていました。

モカちゃんは、明乃とましろの関係性においても、とても重要


──この取材の時点では、まだ本編は制作中ですが、シナリオを読むだけでもクライマックスの戦闘はすごく盛り上がりそうだなと感じました。お二人は、「完成映像を観るのが特に楽しみ」と思っているシーンはありますか?

夏川 まさに最後の10分〜20分あたりは怒濤の展開で、明乃も艦長として号令を出しまくっています。アフレコの時は、自分の頭の中で映像を想像しながら収録しました。アフレコ用の(途中段階の)映像もあったのですが、細かい描写は完成しないと分からないところも多くて。台本から感じたクライマックスの緊迫感が、実際どんな風に描かれているのか。私にとっては、ある意味、答え合わせなので、すごく楽しみですし怖くもあります。自分が想像していたより、もっと激しい絵だったらどうしようとか。

Lynn うんうん、分かる。

夏川 「あーもうちょっとやれば良かったー!」とか、反省することもあるかもしれないなってドキドキもしつつ、楽しみにしています(笑)。

Lynn 最後のクライマックスで、ましろがスキッパーに乗って飛びだしていくシーンは、(テレビシリーズのOP主題歌)「High Free Spirits」が流れるんですよ。

夏川 あー、そうだった!

Lynn そこは、リハV(アフレコ用の映像)の段階で音が入っていたので、それだけでも胸熱なんですけれど。どんな映像になっていて、どう盛り上がっていくのか楽しみですね。

夏川 あれに絵が付いて、SE(効果音)も付いたら……。

Lynn 泣いちゃうよ(笑)。

夏川 うん、泣くよ、エモすぎて。

──「はいふり」は非常に登場キャラクターの多い作品です。明乃とましろ以外にも、今回の劇場版で特に気になったキャラクターを教えてください。

夏川 テレビシリーズでは全然描かれてなかったモカちゃん(明乃の幼なじみの知名もえか)の有能っぷりが遺憾なく発揮されていて、びっくりしました。「モカちゃん、ここまで強キャラだったんだ!」って。


──海賊攻略の作戦を立てたり、大人顔負けの有能さでした。

夏川 テレビシリーズの時は、武蔵というすごい船の艦長を任されている幼なじみ、という印象だったのですが、本当にすごい人だと分かって。私の幼なじみすごいんだなって気持ちで、少し誇らしくなりました。

Lynn 私もモカちゃんなんですよね。明乃とましろの関係性においても、とても重要というか、三角関係みたいな感じでもあるので。

夏川 恋のライバルじゃないけど(笑)。

Lynn モカちゃんは、余裕のある正妻感を出しているので(笑)。テレビシリーズでは、二人で喋ったことはなかったんですけれど、今回は2人で話すシーンもあって。「あなたにとって、艦長とはなんですか?」って聞くシーンでは、ましろも、モカちゃんにはそういうことを聞くんだなって思いました。きっと、独特の存在感とたくましさみたいなものがあって、ましろもそれを認めているんですよね。

晴風のメンバーは、まだ語られていない部分もいっぱいある


──事件が解決した後、ましろが晴風に残るという決断をしたことへの感想を教えてください。

夏川 良かったーって、すごくホッとしました。「絶対にそうなってよ」と思いながら台本を読んでいたので。最後の最後に「艦長になります」って言われた時は、「え! そんなー!」って思いましたけど、「今ではない」ということだったので。シロちゃんは艦長になるという夢を諦めていないので、もしかしたらいつかは別れる日が来るのかもしれないですけれど、それは今じゃない、というところがすごくシロちゃんらしい答えだなって。シロちゃんが本当に「艦長になりますね」と言う時は、たぶん明乃が成長しきった時。明乃を演じる身としても、いつかシロちゃんが安心して艦長になれるような艦長に明乃がなれたら良いなと思いました。これからを感じさせる終わり方で感動的だし、すごく良いラストシーンだったなと思います。

Lynn 2人の関係が深まったことがしっかり描かれているシーンなので、(完成した映像でも)実際に良いラストシーンになっていたら良いなと思います。

──この劇場版も綺麗なフィナーレを迎えましたが、やはり、まだまだ新しい「はいふり」を観たい、明乃やましろを演じたいという気持ちは強いですか?

夏川 テレビシリーズでも劇場版でも、基本的には、明乃とシロちゃんが軸になって、2人の関係性が変わっていく物語を描きつつも、その中で、周りのメンバーの個々の関係性も少しずつではあるけれど、繋がって広がっている気はするので。もっと、他のキャラクターの関係が深まるところも観てみたいというか。夫婦っぽい感じなっている2人だから、晴風のお父さんとお母さんという立場から、他の晴風メンバーの問題にどう対処していくのかとかを観たいなって思います。

Lynn 晴風のメンバーは、みんなそれぞれにしっかりとした設定もあるし、実はこの子とこの子はこういう関係なんだっていう、まだ語られていない部分もいっぱいあるので、描かないのはもったいないと思うんですよね。そこは、きっとファンの人も知りたいことのはず。物語はいかようにでも広げられるし、どんな展開でもできる作品だと思うので、きっと、また何かあるでしょう(笑)。

夏川 私もそう思ってるよ! まだまだ、「はいふり」は終わらない気がする。

Lynn うん。まだまだあると思ってます。

(取材・文・写真/丸本大輔)

≪作品情報≫
「劇場版 ハイスクール・フリート」
1月18日(土)より絶賛上映中

【スタッフ】
原案:鈴木貴昭
キャラクター原案:あっと
総監督:信田ユウ
監督:中川淳
脚本:鈴木貴昭、岡田邦彦
キャラクターデザイン・総作画監督:中村直人
制作:A-1 Pictures
配給:アニプレックス

【キャスト】
岬 明乃:夏川椎菜
宗谷ましろ:Lynn
立石志摩:古木のぞみ
西崎芽依:種崎敦美 ※「崎」の字は「立つ崎」
納沙幸子:黒瀬ゆうこ
知床 鈴:久保ユリカ
知名もえか:雨宮天

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