倉本聰・脚本「やすらぎの刻〜道」(テレビ朝日系・月〜金11時30分〜)第47週。

マヤの自殺未遂騒動の顛末からはじまり、菊村のシナリオ執筆講座やニセ・菊村事件など、謎エピソードが多めだった。


70代の語る「もう青春は戻らない」


自殺騒動で運び込まれた病院から退院したらしいという情報は入ってきたものの、その後の消息が不明となっていたマヤ(加賀まりこ)。

騒動を「やすらぎの郷」住人たちに知られないように、菊村栄(石坂浩二)やお嬢(浅丘ルリ子)たちは「クルーズ船で北欧の旅に行っている」と口裏を合わせることに。

……よりにもよってクルーズ船! 今時、老人がクルーズ船で旅に出たら自殺未遂以上にざわつくことになるよ!

シナリオは相当前に書かれているため、時事ネタを取り入れたはずはないのだが、このドラマ、時々ビックリするくらい現実とリンクするから恐ろしい。

そんなマヤだが、太陽族の生き残りのヘンリー(マイク眞木)が管理する、逗子の会員制マンションに隠れていると判明する。

お嬢やマヤは若い頃、ヘンリーとともに、裕ちゃん(まあ石原裕次郎でしょうな)やファンファン(岡田眞澄なんでしょう)、ジミー(誰!?)たちとよく逗子で遊んでいたようだ。

「戻んないのよ、あの頃はもう。いくら気持ちだけ若いつもりでもさ、若い連中にはあの人たちだけの新しい青春の時代があるのよ。仲間入りしたくてももう無理なのよ」

老婆たちがヨガインストラクターに入れ上げていたのは、青春への憧れもあったのだろう。それでも「仲間入りしたくても無理」と一線は引いていたのだろうが、空気を読まずに深入りし、撃沈したのがマヤだったわけだ。

3〜40代くらいの俳優が「もう青春は戻らない」となげく系のドラマや映画は多いが、70代の老人が語る「もう青春は戻らない」はレベルが違う。

ニセ・菊村登場


菊村たちの説得もありマヤは帰ってきたものの、今度は菊村が「やすらぎの郷」での面倒ごとから逃れてひとり旅に。

執筆中のシナリオ「道」の舞台となっている山梨を訪れて創作意欲を高め、いよいよ執筆に入るのかと思いきや、ここでなぜかニセ・菊村栄事件が勃発。

菊村の名を騙って各地の旅館に泊まり、宿泊料を払わないどころか東京までの交通費まで騙し取る詐欺師が出没しているという。

……ということで、菊村をニセモノと疑うふたり組の刑事がやって来るのだが、この刑事を演じていたのが米粒写経の居島一平とジャニーズの長谷川純。

居島一平はまだしも、ジャニーズをこんなチョイ役に使うとは! しかし居島とのコンビはコント然としていて妙にいい味を出していた。

視聴者からしても「何じゃこりゃ!?」感の強かったこのニセ・菊村騒動で、菊村自身は腹を立てるどころか感動していたようだ。

「私の名前がまだ世間に忘れられずに知られてたということ。同時に、見知らぬその詐欺師の男が一日中、部屋にこもり書き続けていたということ」

確かに、ほぼ引退状態となっている自分のネームバリューで未だに金を貸してもらえるというのは嬉しいことだろう。たとえば、倉本聰が無一文で旅館を訪れて金を貸してもらえるかというと……ビミョーな線か。

詐欺容疑が晴れた後も、酒をしこたま飲んで淫夢を見たり、「道」の舞台にワープしたりとご乱心の菊村センセイ。前作「やすらぎの郷」では酔いすぎておしっこを漏らしていたけど、さすがに酒癖悪すぎるよ。

石坂浩二 VS 里見浩太朗


菊村が夜中に目を覚まし、旅館の中を歩いていると「夢は夜ひらく」を熱唱する里見浩太朗と遭遇した。

里見演じるニタニは、戦時中、満州で生まれ、終戦後は山梨の村で暮らしてきたという、「道」の登場人物と似た境遇を持つ人物。

菊村はニタニの案内で、現在は限界集落となっているその村を案内してもらうのだが、実はニセ・菊村はこのニタニだったという、まだ悪夢が続いているかのような謎展開だった。

山梨のシーンでは、例のごとく変な背景合成も行われており(ロケしているはずなのに……)、ますます悪夢っぽいのだ。

石坂浩二と里見浩太朗は、意外なことに今回が初共演とのこと。

「水戸黄門」では4代目黄門様を石坂浩二が……例のヒゲなしの異色な黄門様を演じ、ビミョーな評判を受けて降板。代わりに5代目黄門役についたのが里見浩太朗という因縁の関係。

ちなみに里見は、助さんを演じていた西村晃主演時代の「水戸黄門」で、ニセ水戸黄門になったこともある。

ニタニがニセ・菊村栄を演じて各地の旅館で寸借詐欺を働いていたということだが、里見浩太朗の貫禄で大物脚本家を騙られたらそりゃあ信じちゃうよな。

3月11日に合わせてきたのか!?


どう受け止めていいのかよく分からない、謎エピソード多めだった今週。おそらく「道」の執筆へと戻るためのブリッジ的な週だったのだろう。

予告編によると遂に「道」パートで東日本大震災が起こるようだ。

東日本大震災を3月11日に放送するため、調整として謎エピソードを挿入していたのだとしたら恐れ入る。

前作では認知症、尊厳死とともに、テーマのひとつとなっていた東日本大震災。

脳内ドラマとはいえ、主人公の娘夫婦&孫が福島の原発近辺に住んでいるという直球すぎる設定。どのように震災が描かれるのか注目したい。
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
・Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」「終り初物」「観音橋」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日