TBSの日曜劇場「テセウスの船」(よる9時)先週3月8日放送の第8話では、ついに運命の1989年3月12日がやって来た。

主人公・田村心(竹内涼真)がタイムスリップする以前の世界では、この日、宮城県の音臼小学校のお楽しみ会で青酸カリを使った無差別殺人事件が発生した。その後、事件の容疑者として地元の駐在所の警官で、心の父親の佐野文吾(鈴木亮平)が逮捕され、裁判で死刑が確定する。しかし真犯人は音臼小の生徒である加藤みきお(柴崎楓雅)だった。いったん現代に戻ったあと、それを知った心は、再びタイムスリップすると、文吾とともにみきおを探し出し、犯行を食い止めようとする……。


事件が起きるはずのその日、みきおと心・文吾が激しく対決!


お楽しみ会当日の朝、心と文吾は学校の放送室でようやくみきおを捕まえ、連行する。が、大人の男が二人がかりで子供を引っ張っていく姿は、その場にいた教師や地元の人たちからすればやはり異様だった。賢いみきおにはそれもお見通しであった。ここぞとばかりに“理不尽な目にあうかわいそうな子供”を演じてみせて人々の同情を買い、心と文吾が非難を浴びるように仕向ける。おかげでみきおは二人から逃れることができた。

計算高いみきおに対し、心と文吾は彼の行動を止めようと急くあまり強引な手段に出て、このあとも顰蹙を買いまくる。教室でみきおが友達に粉末ジュースを勧めているのに気づいた心は、とっさにそれを制止する。これに対してみきおは「このジュースのなかに毒が入ってるっていうの?」と言うと、文吾が「コップを渡せ」と言うのも聞かず、ジュースを飲んだ。するとみきおは苦しみ出し、その場に倒れ込む。文吾があわてて抱き起こすも、みきおはこと切れてしまった……かに見せかけて、すぐ目を開いて「なーんてね」と言ってのける。視聴者からすれば憎たらしいことこのうえないが、それでも一緒にいた子供や教師には、みきおを心と文吾が執拗に責めているようにしか見えないのがもどかしい。子供たちからは心に対し「ウソつき」コールが起こる。

それでも心と文吾はあきらめない。青酸カリが入れられたはずのはっと汁ができあがったのを見計らい、文吾がこっそり大鍋を持ち出すと中身を捨てた。しかし、肝心の子供たちの分は、すでに地元農家の徳本(今野浩喜)が教室に持っていったあとだった。それを知って教室に急ぐ心と文吾。文吾は火災報知器を鳴らして事態を食い止めようとするが、みきおが先回りして工作したのか報知器は作動しない。そうしているあいだにも、はっと汁はみんなに配膳され、食事の時間が始まろうとしていた。そこへ心が滑り込み、「食べるな!」とストップをかける。

子供や教師のあいだには、またかという空気が流れた。それでも心は、みきおたちの担任であるさつき(麻生祐未)の家のメッキ工場からなくなった青酸カリを、お楽しみ会のはっと汁に入れるという脅迫状が文吾のもとに届いたと言って、説得する。もちろんとっさについたウソだ。文吾も乗じて「そうだ、みんな毒が入ってるかもしれねえから、飲まないでくれ」と訴える。これに対し、みきおが立ち上がって「ウソだよ。みんな、このおまわりさんウソついてる」と反論、教師やほかの子供たちも加勢して、大騒ぎとなった。

心はしばらく考え込むと、何か思いついて「みんな!」と再び呼びかける。「先生もウソだと思う」「きっとね、毒なんて入ってない」「だから……」と言うと彼は、はっと汁の入ったお椀を手にした。そして(これで俺たち家族の未来は変わる!)と覚悟を決め、そのまま椀に口をつける。

みきおがみんなをあざむくため芝居を続けるのに対し、心も一芝居を打って事件を防ごうとしたともいえる。だが、彼としては文字どおり決死の覚悟であった。文吾もそれに気づいて「やめろ、心さん!」と止めにかかったのだが……

結果は無事だった。はっと汁に青酸カリは入っていなかったのだ。そのままお楽しみ会は無事に終了。文吾は「びっくりしたぞ、心さん。こっちの寿命が縮むかと思った」と言いながら心の背中を叩くと、「なんにも起きなくてよかった」と安堵する。そこへみきおがやって来て、「大活躍だったね、心さん」と嫌味たっぷりに言うのが、ますます憎たらしい。このあと、彼はさつきに今夜は家に泊まるよう誘われ、帰っていった。そこへ文吾に、音臼村内の路上にドアが開放されたままの自動車があるとの警察無線が入る。

村を離れたはずの妻・子供が監禁!


文吾と心が現場に駆けつけると、道路に停まっていたのは、今朝方、文吾の勧めで村から離れるため家を出た文吾の妻・和子(榮倉奈々)の車だった。だが、そこには、和子も、一緒に乗っていたはずの娘の鈴(みきおの同級生/白鳥玉季)と息子の慎吾(番家天嵩)もいなかった。

心は車のシートに1枚の紙を見つける。それは以前にも彼に送りつけられた不気味なタッチの落書きで、警官がはりつけにされ、まわりで人々が泣く姿が描かれていた。その警官が文吾で、まわりの人は和子と子供たちであることはあきらかだ。心はそこから、みきおには共犯者がおり、和子たちはその人物に誘拐されたのだと察知する。それと同時に、自分は勘違いしていたのではないかと気づく。みきおは何らかの理由で人々を殺し、結果的にその罪を文吾にかぶせたのではなく、最初から文吾の命を狙っていたのではないか。そのために事件を起こし、文吾を容疑者に仕立て死刑へと追い込もうとしたのではないだろうか……。しかし、それではあまりにも手間がかかりすぎる。心の推理に対し、文吾もにわかには信じられない。

そのころ、和子たちは目隠しをされてどこかに監禁されていた。みきおも行方不明となり、文吾と心は不安なまま一夜をすごす。だが、翌朝、和子と子供たちはあっさり発見される。家族と再会して胸をなでおろす文吾と心だが、刑事から見つかったのが音臼小の体育館だったと聞き、耳を疑う。しかも、鈴によれば、みきおが助けてくれたという。だとすれば、共犯者は、あのとき小学校に居合わせた者のなかにいるのか……?

帰宅した和子に、心は意を決して、文吾が村を離れるよう命じた理由を明かす。音臼小で大勢の人が殺される事件が起こるはずだったこと、そしてその犯人がみきおであること。心はすべてを打ち明けたうえで、和子たちがまた危険な目に遭うかもしれないと、もう一度村を離れるよう頼み込んだ。だが、和子はこれを断る。文吾と結婚した時点で、警察官の妻として覚悟を決めていたからだ。これを聞いて、文吾は「俺が事件を止める」と新たな決意を固める。

文吾、一人でみきおと決着をつけようとするが…


このあと、文吾が一人駐在所にいると、みきおから電話で「僕を捕まえに来てよ」と呼び出される。その前に心からは、みきおと共犯者の狙いは文吾なのだから、一人で動くのは危険だと釘を刺されたばかりだったが、文吾は和子たちを守るためだと聞き入れなかった。そもそも心も現代で、真犯人(大人になったみきお)におびき出されて、危険も顧みず一人で音臼小跡地に向かったのだから、やはり血は争えない。電話を切った文吾は、みきおの指定した音臼村のキャンプ場に一人で向かう。その夜、外から駐在所に戻った心は、文吾の「俺が決着をつける」との書き置きを見つけると、あとを追った。

キャンプ場のバンガローに文吾が赴くと、テーブルの上に紙の束が置かれ、そこには三島医院の次女の毒殺に始まる村での一連の事件がみきおによる犯行だとほのめかす文が1枚ずつワープロで打たれていた。そこへみきおが何食わぬ顔で現れる。「どうしてこんなことをした」と文吾が問い詰めると、「鈴ちゃんのためだよ」と思いがけない答えが返ってきた。「正義の味方は僕だけでいい」「まだ計画は終わっていない。邪魔者は消えてもらう」。みきおがそう告げると、文吾は背後から何者かにスタンガンを当てられ気を失う。「で、次どうする?」。確認するみきおだが、スタンガンは彼にも向けられた。

心が現場に着くと、文吾と一緒にみきおも倒れていた。一体、どういうわけなのか。共犯者の正体、そしてみきおの「鈴のため」という犯行動機も含め、謎を残しながら、物語は今夜放送の第9話へ続く。

共犯者は誰なのか? 原作とは違うの?


というわけで、みきお役の柴崎楓雅の憎たらしいまでの演技に加え、次に何か起こるような思わせぶりのカットがいくつも用意され、見ているこちらに緊張感と驚きを与える一方で、ちょっとじれったくもなった第8話だった。じれったくなったのは、みきおがしっかり計画を立てているのに対し、それを止めようとする心と文吾があまりにも行き当たりばったりすぎたからでもある。まあ、そのあたりはほぼ原作どおりとはいえ、心さんたち、もう少し事前に策を練っておかなきゃ! と思わずツッコミを入れてしまった。ついでにいえば、心から事件とみきおについて打ち明けられた和子がほとんど疑いもしなかったことにも、ちょっと違和感を覚えた。まあ、それほどまでに心のことを信用しているということなんだろうけれども。

さて、ようやくみきおが真犯人と判明したばかりなのに、ここへ来て共犯者がいたとわかり、あらためて登場人物全員に共犯者である可能性が出てきた。大方の人がきっと思っているはずだが、共犯者はやはりあの人以外にいないのではないか(原作コミックではそうだったし)。だが他方で、劇中で徳本が、父親を亡くした(みきおに毒殺された)ばかりの田中正志(せいや)と一緒に桜を見ながら、「俺の母ちゃんも(桜が)好きだった……あんなことがなきゃな」と言っていたのも、微妙に引っかかる。徳本はこのドラマオリジナルの登場人物だが、もしかすると彼こそ共犯者なのか。だとすれば、このあとの展開は原作とはまったく違ったものになるはずだが……。どう転ぶにせよ、ドラマは残りあとわずか。最後まで見届けたい。(近藤正高)