3月12日に放送された『科捜研の女』(テレビ朝日系)の第33話。最終回直前にやらなければいけない内容だったと思う。

<第33話あらすじ>マリコの天敵・聡美が再び登場


アメリカで大人気の照り焼きソース“テリヤキング”の創業者で会長の本多嘉壱(福本清三)がニューヨークの自宅で死亡した。その2週間後、嘉壱の娘で日本支社専務の本多鏡子(美鈴響子)が、屋外で頭部に外傷を負った状態で死亡しているのが発見され、榊マリコ(沢口靖子)らが臨場した。  
土門薫(内藤剛志)は、テリヤキング日本支社を訪れた。嘉壱の長男・幸一(大場泰正)はかつて日本支社の社長だったが父と喧嘩して3年前に会社を追われ、現在は次男の光二(井之上チャル)が社長の座に就いている。しかし、嘉壱が鏡子を社長にしようとする話もあがっていた。3人の子どもたちには深い確執があったのだ。  
嘉壱が相続人にしていたのは、これまで4人もの資産家から莫大な遺産を相続し、かつてマリコにも敵意をむき出しにした“令和の毒婦”こと森聡美(鶴田真由)と判明。聡美が遺言公正証書を作らせた嘉壱は死亡し、その娘も殺害された。2人の死が無関係とは考えられない。そこで鏡子の血液から毒物の鑑定をするのだが、検出されず……。  
そんな中、鏡子の死亡推定時刻に、聡美が殺害現場のテリヤキングの日本支社を訪れていたことが判明。聡美を捜そうとしていた矢先、なんと本人が京都府警を訪問。聡美はマリコを呼び出し、「私を犯人だと思うならそれを証明して」と挑発してきた。
妻を亡くし、大阪で1人暮らしの資産家・水島宗助(不破万作)は、聡美が次の後妻業のターゲットにしている人物だ。科捜研が彼の自家用車を調べると、車内から聡美の髪の毛を発見。すでに削除されていた車のドライブレコーダーを復元すると、鏡子の遺体遺棄現場に映る聡美の姿が確認できた。鏡子の遺体遺棄は聡美の仕業だった
鏡子を殺したのは常務の宮下保(牛丸裕司)だった。鏡子が社長になる条件は、宮下をクビにすることであった。それを言い渡され、カッとなった宮下は鏡子を撲殺。その直後に殺害現場を訪れた聡美は、誤って凶器に触れてしまった。自分が犯人扱いされることを恐れた聡美はマリコと土門を思い出し、京都府警に事件を捜査させるため遺体を京都に運んだのだった。
発見された凶器からは聡美の欠けた爪が見つかり、爪からは代謝の早い毒物が発見された。その毒物は嘉壱の口内から見つかった毒物と一致した。つまり、ニューヨークで嘉一を殺した犯人は聡美だった。

どもマリを挑発し続ける「令和の毒婦」


今回はキャットファイトだった。7話に登場し、マリコをブス呼ばわりした“後妻業の女”聡美が再登場したのだ。「平成の毒婦」から「令和の毒婦」にアップデートしての再登板である。

鏡子殺害への関与が疑われる聡美は、自ら京都府警に訪れた。そして、いきなりカマすのだ。
「あのブスを今すぐここに呼んで」

俺たちのマリコをまたしてもブス呼ばわりする聡美。でも、あの超美人をブス扱いするのはどうしたって無理がある。きっと確信犯だろう。マリコはブスと呼ばれた経験がないと見越し、あえて聡美は言っている。
物凄い顔で取調室へ入ってくるマリコ。珍しく正面から挑発に乗っているようだ。マリコが唯一冷静でいられなくなるのが聡美なのだ。敵意むき出し、美女同士のキャットファイトの始まりである。

というか、土門も怒っていいんだぞ? ……と思っていたら、聡美は土門にもちょっかいを出した。
「私の好きなタイプはね、包容力のあるお金持ち。細かいことにうるさくて、お金を持ってそうにない土門さんは論外。ごめんなさいね」(聡美)
安心しろ、土門もお前には用はない。土門にはマリコがいるからいいんだよ……!

どもマリは前世からの仲


いつもはエンディングが定位位置だったどもマリデートが、今回は中盤に組み込まれた。

「付け爪はしない」と言っていた聡美が付け爪をしていることに気付いた土門は、夜中、科捜研で1人残業をするマリコに相談をしに行った。

土門 「あの女、以前はマニキュアはしていたが付け爪はしてなかったよな?」
マリコ 「さあ……、覚えてないけど」
土門 「だと思った。一応、聞いてみただけだ。お前がこの手のことに鈍感なのは100年前から知っている」
マリコ 「あのねえ……!」

夜の科捜研でイチャイチャしてるんじゃない! そのイチャつき方も妙に遠回しで甘酸っぱく、熟年夫婦というより高校生のカップルみたいに見えてくる。さらに2人の逢引は続いた。

マリコ 「それが事件とどんな関係があるの?」
土門 「いや、それはわからん」
マリコ 「ちょっ……。 だったら、こんな夜遅くに来て言うこと?」

まったくだ。こんな要件なら、別に電話だっていいはず。要するに、相談するくらいなら直接マリコに会いたくなったのだ。そんな土門に気付かず、カリカリして受け止められないマリコの歯がゆさも悪くないのだが。

何より、最大のポイントは土門の「100年前から知っている」発言だ。嫌味のように見えて、愛に溢れてる。俺とマリコは100年前からの付き合い。つまり、前世でも一緒だったと暗に宣言したということ。そこまでのろけないでも……。ひょっとして、前世で2人は夫婦だったのだろうか? 次のシリーズからは、榊マリコじゃなくて土門マリコでいい。

また、制作陣もわかってるのだ。2人のやり取りを映すアングルは部屋の隅っこからだったり、棚の隙間から捉える画面になっていたり……。深夜の密会を覗き見するような主観映像になっていた。共通の敵・聡美を攻略する前に、2人は絆を深める必要があった。だからこそのイチャつき。困ったものである。そして、そのイチャつきはいきなり功を奏した。

マリコ 「付け爪……! この前、付け爪で秘密を隠そうとした被害者がいた」
土門 「森聡美も付け爪で何かを隠してるってことか?」
マリコ 「だとしたら、一体何を……」

前回、マリコらはネイリストが関与する事件を解決したばかりだ。それが今回の手がかりに繋がるというレアな展開。「こんな夜遅くに来て……」「急に来られても!」と、夜中に気まぐれな恋人が顔を見せた的な困惑のリアクションをしていたのに、何だかんだ有意義なディスカッションに着地する。そこが、どもマリたる所以。これこそ、2人に共通する生き方。さすがは100年前からの付き合いなだけある。

化け物と言われても人生を肯定する


最終的に、聡美は逮捕された。恨み骨髄。聡美を追い詰める際のマリコからは闘気が出ていたし、明らかに勝ち誇った顔をしていた。そして、後妻業で金を稼ぐ聡美に土門は「刑務所でも愛の残高は確認できる。よかったな」と嫌味を飛ばした。聡美は2人に言い返す。
「私にはアンタたちが、何を犠牲にしても犯罪者を捕まえることで生きている実感を得ている化け物に見えるわ」(聡美)


聡美の捨て台詞、なかなかだ。ただの負け惜しみじゃなく、芯を食った一言だったからだ。聡美の言葉は土門に刺さってしまった。

土門 「自分の人生を犠牲にして犯人や証拠を挙げている……。そう思ったことはあるか? 俺はそう思ったことがないとは言えん」
マリコ 「私は、それが自分の人生だと思ってる」
土門 「ああ。俺は、この生き方をやめられない」
マリコ 「私もよ」

『科捜研の女』が始まって20年が経ったからこそ、2人のやり取りが生きてくる。まさに、それが私たちの人生。「俺はこの生き方をやめられない」と全身刑事を自認する土門に、「私もよ」と共感したマリコ。イチャつかずとも、2人は最高のどもマリを最終回直前で見せたのだ。

今夜放送の2時間SPは、19シリーズの最終話。20年前のマリコの映像まで持ち出した次回予告を観ると、シリーズとしてではなく、ドラマそのものの最終回に見えてしまった。
人生を覚悟で肯定するどもマリを大フィーチャーした今回のエピソードは、20年の集大成を迎える前に絶対に必要だったと思う。
(寺西ジャジューカ イラスト/サイレントTワレワレハヒーローズ)

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中