3月19日に放送された『科捜研の女』(テレビ朝日系)第34話は、通年放送だった19シリーズの最終回。沢口靖子をはじめ、キャスト、スタッフの方々には心の底からお疲れ様の気持ちでいっぱいだ。

<最終話あらすじ>科警研から名指しで再鑑定を依頼されるマリコ


殺人事件で指名手配をかけられ、長らく逃亡していた芳賀悦郎(田中要次)が逮捕された。本人は犯行を否認し、弁護士も鑑定の証拠能力に疑問を唱え、再鑑定が行われることに。科警研は、榊マリコ(沢口靖子)に白羽の矢を立て、その依頼に訪れたのは、彼女の父で元科捜研所長の榊伊知郎(小野武彦)だった。科捜研メンバーたちはさっそく事件現場へ赴き、当時、兵庫県警が行った捜査について検証を行う。
「加美鳴沢写真家殺人事件」は20年前、京都と兵庫の府県境にある別荘地で発生。写真家の狩野篤文(比留間由哲)が自身の別荘「雷冥荘」で射殺され、凶器の猟銃からは友人で小説家の芳賀の指紋が検出された。事件当時、雷冥荘には2人以外にも狩野の友人、妻、モデル、アシスタントの計6人が集っていた。管理人の証言によると、他には雑貨店の店員が軽トラックで食材を届けに訪れただけで、別荘地のゲートが閉ざされた夕方以降、人の出入りはなかった。夕食を兼ねたパーティーで狩野は、芳賀と激しく言い合いをした後、1人でアトリエに籠り、翌朝、射殺体で発見された。同時に芳賀も行方をくらましてしまい……。兵庫県警は、その経緯と猟銃に指紋が付着していたことから、芳賀が狩野を射殺し逃亡を図ったものと見ていた。
マリコは猟銃の指紋に疑問を感じて検証を行い、「芳賀が犯人とは言い切れない」と裁判員裁判の法廷で証言し、兵庫県警と真っ向から対立してしまう。しかし芳賀が犯人でないなら、いったい誰が狩野を殺したのか。真犯人を突き止めるべく鑑定を進めるマリコたち。
一方、法廷には事件当時、別荘に滞在していた者たちが証人として一堂に会し、過去の秘密や本音を暴露して裁判は荒れに荒れまくる。裁判を傍聴するマリコは、裁判員の1人・矢部晋平(六角慎司)の存在に気が付いた。事件当日、矢部は雷冥荘に食材を届けていた男だ。その際、矢部はトラックの荷台にロック喫茶の店長・仙道重則(山口竜央)を乗せていた。当時、芳賀は狩野、山木弾正(東根作寿英)と喫茶店の屋根裏部屋で闇カジノを開いており、それを知った仙道は3人を恐喝していた。3人は雷冥荘に仙道を呼び出し、芳賀が仙道を殺害した。
マリコは芳賀の公判を訪れ、事件の真相を説明する。狩野を殺したのは芳賀ではなく、芳賀の妻の市香(河井青葉)だということ。芳賀が仙道を殺害する場面を狩野は撮影しており、そのカメラから市香の指紋が検出されたのだ。グラビアモデルの江草薫子(宮地真緒)に気が移った狩野の目を永遠に自分の元に留めておくため。それが、市香が狩野を殺害した動機だった。

20年間、ずっとブレなかったマリコ


気になったのは、被告・芳賀のキャラクターである。職業は小説家だが、というよりもヘンテコなポエマーみたいなのだ。事あるごとにシェイクスピアの名台詞を引用し、芸術を語る面倒臭い男。31話に登場したニーチェさんと引き合わせたくなる演劇チックな言動。そんな彼が隠す真実を掘り起こしたのは、科学でリアルを追及するマリコ。ある意味、両者は対極だ。

刑事部長・藤倉甚一(金田明夫)に呼び出されたマリコは、己の信念を口にした。
「私は20年前、この京都府警に来て科学捜査に携わるようになりました。この20年間現場にいた人間として、過去の科学捜査に誤りがあればそれを正し、科学の限界と向き合いながら、自分たちに今何ができるのかを問い続ける。その使命を疎かにすることは絶対にできません」
ブレずに使命を全うしてきたと、マリコはこの20年を誇りに思っている。

狩野を殺した犯人は、妻の市香だった。いつも誰かを演じていた、女優だった若き日の市香。でも、狩野が撮った写真には本当の自分が写っていた。ありのままの私を見てくれる狩野を求めていたのに、彼が薫子を撮った写真を見て、狩野の目はもう自分に注がれていないと気付いた。人間は、心も気持ちも考え方も変わる。
「だから……彼の目を永遠に私の元に留めておくために」(市香)

市香が経営するクラブには、20年前に狩野が自分を撮ってくれた大きな写真がいまだに飾ってあった。事件の真相を知ると、軽くホラーである。キツイ言い方をすると執着、良い言い方をすれば愚直だ
でも移り気な狩野が撮った写真だけは、市香の気持ちと同様に不変だった。20年後も情報として有効だった。長い年月を経ても変わらず事実を伝え、マリコを事件解決に導いた。

“親バカ”マリコパパと土門が握手した意味


20年前、兵庫県警は捜査ミスをおかしていた。マリコの鑑定でそれが明らかになると、兵庫県警から忖度を求めるクレームが京都府警に来てしまう。もちろんマリコはそれを突っぱね、憮然としながら部屋を退出する。

藤倉 「予想した通りの反応でしたね」
日野 「ええ、あれが榊マリコですから」

周囲を振り回しまくるマリコだが、なんだかんだみんなに理解されている。支えられているのだ。

このドラマのエンディングは、屋上でのどもマリデートと相場が決まっている。でも今回は、まさかの土門薫(内藤剛志)と“マリコパパ”伊知郎のデートだった。

伊知郎 「20年前、マリコが京都の科捜研に行くって聞いたときは、正直すぐ戻ってくると思ってました。あの性格ですから周りの人たちに迷惑かけて、下手したら追い出されるんじゃないか……。親としては心配で。それが気が付けば20年です。あいつも少しは変わったのかもしれませんが」
土門 「いえ、変わってません。榊は……何があっても」
伊知郎 「なるほど……。変わらずにいられるってことは、それだけ人に恵まれてるっていうことかもしれませんな」

マリコが20年間変わらないでいられるのは、仲間の支えがあったからこそ。20周年を記念する19シリーズのラストメッセージとして選ばれた着地点である。


「これからも、マリコのこと……」(伊知郎)
伊知郎は土門に握手を求めた。科警研が事件の再鑑定をマリコに依頼したと聞いて涌田亜美(山本ひかる)は「何か裏があったりして」と勘繰ったが、実際に裏があったのだ。伊知郎と土門の握手には、どんな意味があるのか? やはり、親バカ父が大事な娘の理解者として土門を“公認”したということになるだろう。わざわざ京都に来て、直接会って託したかった。マリコ不在の場で勝手に挨拶してるパパの親バカっぷりは、まさに「十分、公私混同です」(土門)だ。

通年放送のシリーズ最終話、爆破連発で見栄えのする内容にだってできただろうに、激渋な法廷劇で攻めてみせた34話。ラストにふさわしく、二転三転の緻密なサスペンスだった。1年間観てきた甲斐があったとしみじみ思う。「長かった」なんて感想はなく、今はただただ寂しさが募るばかりだ。
しばらく木曜8時にマリコの顔は見られなくなるが、2020年だけにシーズン20が今年じゅうに再開されるかも? と期待をしながら、一旦お別れだ。
(寺西ジャジューカ)

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中

(寺西ジャジューカ イラスト/サイレントT@ワレワレハヒーローズ)