「特別受益分の持戻し」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?   これは、被相続人の相続財産額を計算するに当たって、被相続人が生前に相続人に贈与したり、遺言で遺贈したものを相続財産額に入れて計算し直すことをいいます。相続の基本的な考え方なので、きちんと理解しておく必要がありますが、各相続人の相続金額を決める場合においても、特別受益分が大きな影響を与えることがあります。   この記事では、こうした相続の基本的な仕組みの解説をしたいと思います。

相続財産額はどのように計算するのか?

まず、被相続人が亡くなった場合、相続財産額はどのように計算するのでしょうか?
 

(1)被相続人死亡時の相続財産の金額 △△△△△△円(注1)
(2)特別受益分
(2-1)被相続人の遺言書に基づくもの (+) △△△△△円(注2)
(2-2)被相続人が生前に行った贈与 (+) △△△△△円(注3)
(3)被相続人の相続財産総額(1)+(2) △△△△△△円

 
(注1)被相続人死亡時の相続財産の金額から、被相続人が遺言書で特定の相続人に与えるとした遺産金額(特別受益分(2-1)に相当するもの)、および墓地・仏壇などの民法上の被相続財産を差し引いたもの。
(注2)被相続人が遺言書で特定の相続人に与えるとした遺産金額=遺贈。
(注3)贈与の時期には時効はないので、基本的に被相続人が各相続人に行った全ての贈与が対象。

 
被相続人の死亡時の財産に、特別受益分(遺言で指定したもの、および被相続人が生前に行った贈与)を加算して相続財産総額を計算します。それに各相続人の法定相続分をかけて、各相続人の取り分が決まることになります(これを「一応の相続分」といいます)。
 
生前贈与を多くもらった相続人は、その生前贈与を引いた取り分(「分割時の相続分」といいます)は、法定相続分よりかなり小さくなります。また、被相続人の遺言で相続財産を多くもらった相続人も、その分が法定相続分から引かれることになるので、分割時の相続分は小さくなります。
 
これが特別受益に関する分割時の相続分の計算の仕組みです。
 

具体的な例に基づいて各相続人の相続金額を計算

前述した相続財産(1)〜(3)と、以下の被相続人・相続人の事例を使って、相続財産の総額と分割時の相続分がいくらになるか計算してみましょう。
 

●被相続人(A)
●相続人:配偶者(B)、長男(C)

 

Aの相続財産

●相続開始時=Aの死亡時の相続財産額(Aより遺贈された財産を除く)
(1):3億4000万円
 
(2)は以下のとおり
●Aより遺贈された財産
(2-1):Bあてに宅地3200万円、現金350万円
●Aが生前相続人に贈与した財産(2-2):
B 現金1000万円、株式350万円
C 別荘1100万円

※いずれも相続開始時の価額

 

Aの相続財産総額(3)

(1)の相続開始時の相続財産(除く遺贈された財産)に、(2)の特別受益分を加えた金額となります。
 
●3億4000万円(1)
●3550万円(2-1)
●2450万円(2-2)

 
相続財産総額4億円 
 
各相続人の法定相続分と特別受益分を除いた分割時の相続分は、以下となります。
 

B:

法定相続分 4億円×1/2=2億円
分割時の相続分 2億円−3550万円−1000万円−350万円=1億5100万円

 

C:

法定相続分 4億円×1/2=2億円
分割時の相続分 2億円−1100万円=1億8900万円

 

まとめ

これまでに説明してきたことをまとめると、以下のとおりとなります。
 

●法定相続分を決めるベースとなる相続財産の額には、相続開始時の相続財産の額だけでなく特別受益分も加える必要がある。
 
●生前贈与に関しては時効がないので、原則として相続人が被相続人から受けた贈与が全て対象になる(ただし、遺留分が関与する場合は時効は10年となる)。
 
●特別受益分が大きい相続人は、相続財産分割時に受け取る額=分割時の相続分が小さくなる。上記の計算例でいうと、配偶者(B)と長男(C)の法定相続分は同じ2億円となるが、分割時の相続分は配偶者が1億5100万円、長男が1億8900万円となり、特別受益分が大きい配偶者の分割時の相続分は小さくなる。

 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー