退職金をもらい、かねてから楽しみにしていた旅行の計画など、長年勤めた自分へのご褒美を考えるのはとても楽しい時間です。しかし、その前に心しておくことがあります。   うっかりしていると、突然、住民税の請求がくるかもしれません。

住民税はどのように計算されているのか

会社員をしていると所得税はもちろんのこと、住民税も社会保険の厚生年金や健康保険・介護保険なども、会社で計算をして支払いの手続きをしてくれます。給料から天引きされますので、自分がいくら支払っているのか、金額を言える人は少ないのではないでしょうか。
 
リタイアを目前に控えた相談者Aさん。一足先にリタイアした先輩から、「翌年の住民税高いよ、びっくりした」といった話を耳にしたことがありました。実際にリタイアしたAさんは、住民税の納税通知書がきて「え、こんなに払うの!」と驚いたそうです。
 
住民税の計算方法を確認してみます。計算の流れは下記の図表1のようになります。確定申告をした経験のある方は、控除額などの違いはありますが、所得税の計算方法と照らし合わせて考えると理解しやすいかもしれません。
 


 

 

(1)所得金額

給与所得(所得金額調整控除後)や年金所得などの合計金額です。
 

(2)所得控除額

社会保険控除・生命保険控除・地震保険控除・医療費控除・配偶者控除・基礎控除などの合計金額です。
 

(3)課税標準額

(1)合計所得金額から(2)所得控除合計を差し引いた額が課税標準額となります。これは1000円未満切り捨てです。
 

(4)算出税額

(3)課税標準額に市町村・道府県の区分ごとに、税率を掛け合わせて算出します。図表2の例では、特別区民税と都民税の区分になっています。これで求めたものが、それぞれの所得割の算出税額になります。
 

(5)税額控除額等

調整控除、寄附金税額控除(ふるさと納税など)、住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)などが該当します。
 

(6)年税額

(4)算出税額から(5)税額控除額等を引いたものが所得割額です。所得割額と、区分ごとに決められている均等割額の合計が、年税額となります。これは100円未満切り捨てです。
 
こうして求めたものが、個人住民税の年税額です。給与所得者の場合、この金額を各月の納付額がほぼ均等となるように6月から翌年の5月まで1年をかけて納付します。
 

退職したら、納付はどうなる?

会社員の場合の住民税は、計算した年税額を6月から翌年5月まで12回に分けて給与から差し引かれ、給与支払者(勤務先)を通じて納付されます。特別徴収と呼ばれます。
 
ところが退職して勤務先で1年分の税額を差し引けなくなった場合は、残額を自分で納付することになります(普通徴収)。
 
普通徴収の場合は12回ではなく、6月・8月・10月および翌年1月の各月末日が納期限の4回支払いです。退職の時期によって、その時点で間に合う残りの納期限に支払い回数を振り分けられます。
 
Aさんの場合は6月で退職しました。6月の給与から1ヶ月相当分が特別徴収され、残りの11ヶ月相当分を3回の納期限で支払うことになります。これまで毎月天引きされていた住民税の約4ヶ月分の支払金額。その納付書が3枚も送られてきたのです。
 
あくまで退職の時期によりますが、数字が大きいだけに予期していたこととはいえ、“来てしまった”という感じはぬぐえません。また6月に退職したので、今年の半年分の給与所得は来年度の税額に反映されます。まだまだ気を抜けないことになります。
 
リタイアしたらのんびり旅行もしたいし、家のリフォームも考えたい。退職金の使い道を考えるのも楽しい時間です。水を差すようで恐縮ですが、厳しい現実の備えもしておくべきだと思います。
 
今回は住民税について考えましたが、それ以外に社会保険などの支払いも必要です。見慣れない書類を確認する作業と期限内の支払い、リタイア後ののんびり生活と並行して、税金の支払いという“山”を越える必要がありそうです。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士