障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気付きます。そうした人たちは、後になって「しまった! 」となりかねません。そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。   第2回は「傷病手当金とは併給できない? 」です。

傷病手当金の後で障害年金を受給するのが一般的

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外で傷病を負って就労先を休み、就労先から十分な給料をもらえないときに支給されるものです。支給額は、1日につき標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1)の3分の2に相当する額で、支給開始から1年6ヶ月間を限度に支給されます。就労先からの給料が傷病手当金より少ない場合は、その差額が支給されます。
 
障害年金は、初診日から1年6ヶ月を経過した日(1年6ヶ月以内に傷病が固定し、治療の効果がそれ以上期待できない状態になった場合は、その日)が障害認定日となり、この日以降に裁定請求が可能です。このため一般的には、傷病手当金の受給が終わった後で障害年金を受給することになります。
 

場合によっては、間違った表現になる

もし障害年金について「傷病手当金とは併給できない」と言われたのであれば、この一般的なケースについて言っているのかもしれません。
 
しかし、これは不正確な情報です。障害年金と傷病手当金を併給できる場合が、あるからです。ケースごとに、検討してみましょう。
 

障害年金が障害厚生年金のときは……

【1】障害年金の傷病と傷病手当金の傷病が同一の場合

A 障害年金が障害厚生年金のとき
 
通常は、傷病手当金の日額のほうが障害年金の日額より多いことでしょう。この場合は、障害年金が全額支給され、傷病手当金と障害年金の差額が傷病手当金として支給されます。いわゆる調整が行われるわけです。
 
例えば、傷病手当金の日額が6000円で、障害年金の年額が180万円の場合、障害年金の日額は5000円(180万円÷360=5000円)ですから、差額の1000円が傷病手当金から支給されることになります。傷病手当金の日額のほうが障害年金の日額より少ない場合は、傷病手当金は支給されません。
 
障害年金が単独の障害厚生年金ではなく、「障害基礎年金+障害厚生年金」の場合や障害手当金の場合でも同様に取り扱われます。障害手当金は、一時金としてまとめて支給されるので、傷病手当金の額の合計額が障害手当金の額に達するまで、傷病手当金が支給停止されます。
 

障害年金が障害基礎年金のときは……

B 障害年金が障害基礎年金のとき
 
傷病の初診日が就労先に就職する前にある場合などです。障害年金と傷病手当金の調整は行われません。両方がそのまま支給されます。
 

障害年金と傷病手当金で傷病が異なる場合は……

【2】障害年金の傷病と傷病手当金の傷病が異なる場合

この場合も調整は行われません。障害基礎年金と傷病手当金の両方がそのまま支給されます。
 

一般論に惑わされては、損をする

以上の検討から、注意しなければならないことが明らかになります。次の点です。
 
1 上記の【1】Bと【2】の場合です。障害年金と傷病手当金の調整がないのですから、障害年金の障害認定日になれば、すぐに裁定請求を検討したほうがよいでしょう。特に初診日から年月がたっている場合は、消滅時効の関係もあります。「傷病手当金とは併給できない」という一般論に惑わされては、損をすることになります。
 

生活設計のためにも早めに準備を

2 傷病手当金と障害年金は全く別の制度ですので、傷病手当金を受給していたからといって、障害年金が受給できるわけではありません。受給額も傷病手当金の受給額とは連動していません。「傷病手当金の後で障害年金を」と予定していると、そうはならない可能性もあります。生活設計のためには、障害年金の裁定請求を早めに準備したほうがよいでしょう。
 

「ウソ」となる場合もある

「傷病手当金とは併給できない? 」の「ウソ・ホント」は、「ホント」の場合が多いけれども、「ウソ」となる場合もあるということを知っておきましょう。 
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士