国民年金や厚生年金などの老齢給付はリタイア後の生活を支える重要な収入源となります。老齢国民年金の給付金は、保険料の支払月数に応じて給付額が変わり、老齢厚生年金は現役時代の収入と保険料の支払月数に応じて給付額が増減する特徴があります。   現役時代の収入を増加させれば老齢厚生年金の給付額は確かに増加しますが、逆に所得代替率は低下してしまい、自己資金による準備をより多くする必要があるなど注意する点もあります。

老齢厚生年金の給付額の仕組み

老齢厚生年金の給付額は報酬比例金額に経過的加算と加給年金額を合算して給付額を算出しており、中でも報酬比例金額が大きなウエートを占めています。
 
報酬比例金額の計算方法は2003年4月に大きく変更され、2003年3月まではボーナスを含まない平均月収(標準報酬月額)に0.0075と加入月数を乗じて算出されていましたが、それ以降はボーナスも含めた収入の平均額(平均標準報酬額)に、0.005769と加入月数を乗じて算出しています。
 
下記の試算に示すように、現役時代の収入の平均値が高いほど老齢厚生年金の給付額が高くなる仕組みとなっています。
 

【報酬比例金額の計算例(2003年4月以降)】

・平均標準報酬額が50万円で40年間(480ヶ月)加入した場合
50万円×0.005769×480ヵ月=約138万4600円
 
・平均標準報酬額が30万円で40年間(480ヶ月)加入した場合
30万円×0.005769×480ヵ月=約83万700円

 

なぜ多くの自己資金が必要になるのか

商品やサービスの価格は一定ではなく、インフレーションなどの影響によって変動します。老齢厚生年金を含む公的年金は長期間にわたり給付金を受け取るため、金額を固定してしまうと物価の変動により年金としての効果が低下してしまう恐れがあります。
 
そのため、公的年金の給付金の金額は固定されておらず、一定の価値を保障することで年金効果を維持する仕組みとなっています。この一定の価値を計る基準として、現役世代の手取り収入に対し、何割を老齢厚生年金の給付金で補えるかを示した「所得代替率」が定められています。
 
この所得代替率は現役時代の収入が高いほど低下する仕組みとなっているため、収入の増加に合わせて家計支出も増えてしまっていると、リタイア後の生活費をまかなうために自己資金を多く用意する必要が生じます。
 

所得代替率の低下に備えるには

現役時代の収入が高いほど所得代替率が低下してしまうのは、収入が多いほど生活に余裕があり、自己資金による備えを行うことができると考えられているためです。そのため、収入を増加させ老齢厚生年金の給付額を増やす場合は自助による備えを併せて考えていくことが重要です。
 
リタイア後の生活費を自助により備える方法として、個人年金保険や確定拠出年金・つみたてNISAといった税制優遇が得られる制度を活用することで効率的な資産形成を行ったり、リタイア後の収入減少に備えて、家計支出を合わせて削減できるプランを検討しておいたりしてはいかがでしょうか。
 

まとめ

現役時代の収入を増加させ、老齢厚生年金の給付額が増えたとしても、所得代替率は低下して年金の効果は相対的に低下してしまうため、自助による資産形成やリタイア後の収入減少に合わせた支出削減プランを備えておくことをおすすめします。
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表