病気やけがによる入院や手術の費用に備える医療保険。公益財団法人生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、疾病入院給付金が支払われる生命保険(=医療保険)の加入率は73.1%にものぼります。   一方で、日本には充実した公的な医療保険制度があるため、民間の医療保険は不要という考え方もあります。   そこで今回は、会社員が無駄なく医療保険に加入するにはどうしたらよいか考えてみましょう。

会社員の公的医療保険制度とは?

公的医療保険制度とは、病気やけがをしたときに医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことをいいます。公的医療保険には、会社員や公務員が加入する「健康保険」と、自営業者やフリーランスの人などが加入する「国民健康保険」があります。
 
健康保険と国民健康保険で共通して受けられる保障には、次のものがあります。
 

・医療費の自己負担は原則3割

医療機関を受診した際に窓口で保険証を提示すれば、医療費は原則3割負担ですみます。なお、自己負担割合は年齢や所得によって異なり、未就学児の場合は2割、70歳以上74歳以下の場合は2割(現役並み所得者は3割)となっています。また、子どもの医療費に対しては自治体ごとに独自の助成制度があり、子どもの医療費の全額または一部が助成されます。
 

・高額療養費制度

1ヶ月(1日〜末日まで)にかかった健康保険の対象となる医療費が自己負担上限額を超えた場合に、お金が返ってくる制度です。1ヶ月の自己負担限度額は年齢や所得によって異なります。
 

 
例えば、69歳以下で年収約370万〜770万円の人が、1ヶ月に医療費が100万円かかった場合、窓口での負担は3割の30万円ですが、自己負担上限額は8万7430円となり、それを超えた21万5570円が高額療養費として支給されます。
 
自己負担上限額:8万100円+(100万円−26万7000円)×1%=8万7430円
高額療養費の支給額:30万円−8万7430円=21万5570円
 

・出産育児一時金

子どもが生まれた時、1児につき42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産の場合は40.4万円(2022年1月1日以降は40.8万円))が支給されます。
 
これらの他、会社員や公務員が加入する「健康保険」だけで受けられる保障もあります。
 

・傷病手当金

業務外の病気やけがにより働くことができず、連続する3日間を含み4日以上会社を休み、給与の支払いを受けられなかった場合に支給されます。1日につき標準報酬日額の3分の2を支給開始の日から最長1年6ヶ月間(2022年1月1日以降は通算1年6ヶ月間)受け取ることができます。
 
なお、給与の支払いがあっても傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額を受け取ることができます。
 

・出産手当金

女性が出産のために会社を休み、給与の支払いを受けられなかった場合に、1日につき標準報酬日額の3分の2を受け取ることができます。出産手当金を受け取れるのは、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み給与の支払いがなかった期間です。
 

・付加給付

大企業の社員などが加入する組合健保では、付加給付と呼ばれる独自の上乗せ保障を行っている場合もあります。
 

民間医療保険の賢い入り方

公的医療保険制度により、医療費の負担はかなり軽減できることがわかりました。では、民間の医療保険に入る必要はないのでしょうか。
 
医療費の3割負担や高額療養費の対象となるのは健康保険の対象となる医療費のみです。入院中の食事代(1食460円)や差額ベッド代、先進医療の技術料などは全額を自己負担しなければなりません。また、お見舞いに来る家族の交通費なども必要ですし、場合によっては家事代行サービスやペット預け入れサービスなどを利用することもあるでしょう。
 
これらの費用をまかなえるだけの十分な貯蓄がある場合、医療保険の加入は必ずしも必要ではありません。しかし、教育費や住宅ローン、老後への備えなどと並行して十分な貯蓄を準備できない場合もあります。そういう場合には医療保険への加入を検討してみましょう。
 
貯蓄は入院費用以外の支出にも使えますが、貯まった金額しか使うことはできません。一方保険の場合は、契約が成立し1回目の保険料を払い終えれば、その直後に入院や手術をした場合でも入院給付金や手術給付金を受け取れるので、貯蓄が少ないときにはとても頼りになります。
 
また、元気なときに楽しみのために使う30万円と、病気やけがで弱っているときにその治療のために使う30万円とでは、精神的な負担も異なります。お金の心配をせずに安心して治療に専念したい場合や、先進医療などの治療の選択肢をお金のために諦めたくない場合なども医療保険は役立ちます。
 
ただし、医療保険への加入を検討する際には、すべてを保険でカバーしようとせず、貯蓄とのバランスを考えることがポイントです。また、加入後は放置せず、ライフステージの変化とともに見直すようにしましょう。
 
執筆者:宮野真弓
FPオフィスみのりあ代表、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者