親の介護について、兄弟間で負担が異なる場合があります。例えば、兄が要介護状態の親と同居して介護を行っているが、別居している弟はほとんど介護に関知していないという場合です。   こういった介護の負担の差を清算する形で相続に差をつけることはできるのか、親の介護負担の相続分への反映について考えていきます。

介護の負担が違う場合に相続で差をつける方法は3パターン

結論から述べると、親の介護の負担について違いがある場合、その分、相続において差をつけることは可能です。
 
例えば冒頭のように、兄が親と同居し、ほとんどの介護を行っているような場合や、他の兄弟より介護の負担が多いという場合、兄が他の兄弟よりも多めに財産を相続するのは認められるということです。
 
その際の方法は3つあり、相続人間で行う遺産分割協議で決める方法、寄与分による方法、そして遺言書で相続分を指定する方法です。
 
では、3つの方法について順に確認していきます。
 

相続人間の遺産分割協議で決める方法

今回のようなケースで介護中の親が亡くなり相続が発生したとき、遺言書がなく、相続分が指定されていない場合、遺産の分配は相続人間の遺産分割協議で自由に決めることができます。
 
兄弟での話し合いにおいて、弟が「兄は介護に献身したのだから皆よりも多く……」と納得した上で、相続人全員の合意があれば相続分に差をつけることは可能です。
 

寄与分による方法

寄与分とは、相続財産の維持や増加に貢献(寄与)があった相続人に認められる権利で、この権利によって相続分を増額させることができるものになります。
 
寄与分は原則として相続人間の協議によって定められますが、協議がまとまらない場合は寄与をした方からの請求により、家庭裁判所が寄与の時期や方法、程度などの事情を考慮して決定します。
 
ただし、寄与分は実務上、家庭裁判所から認められるのは相当に困難です。寄与分が認められるには財産の維持や増加のほか、「特別の寄与」があったことが必要となり、特別の寄与には対価を受け取っていないことや、亡くなった方との身分関係から通常期待される以上の貢献が求められるためです。
 
具体的には、兄が親と同居して食事の世話、病院やリハビリ施設への送り迎えをしていた程度では特別の寄与として認められません。仕事を辞めて介護に専念した、一般的にはヘルパーを頼むところを自力で介護していた、といったような「通常そこまではしない」といえる事情が必要になります。
 

遺言書で指定する方法

親が存命中であれば遺言書を作成し、介護の負担を考慮して相続分を指定することも可能です。
 
そもそも相続分など相続の内容は、遺言書がある場合は基本的に遺言書に沿って実行されます。そのため、あらかじめ親が自身を介護してくれている兄の方に財産が多く渡るよう相続分を遺言書で指定しておけば、介護の負担に応じて弟と相続分に差をつけることが可能です。
 
しかし、遺言書で相続分を決定することは、遺留分(亡くなった方の兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の相続分)を侵害する遺言として相続争いの原因となることもあります。
 
仮に遺留分を侵害しない範囲であっても、相続分に差があると他の相続人から不満の声が上がる場合もあります。遺言書を作成するのであれば、その点に注意する必要があるといえます。
 

まとめ

親の介護について兄弟で負担が異なる場合、その違いに応じて相続分に差をつけることは可能です。しかし実務上、寄与分が家庭裁判所から認められるケースは少ないため、実質的には兄弟での話し合いか、遺言書で決めることがほとんどです。
 
もし、兄弟の誰か1人だけが親の介護について重い負担を負っている場合、一度相続について考えてみたり、親を含めて家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
 
執筆者:柘植輝
行政書士