現在の年金制度は、「国民年金法」という法律に基づいて運用されています。この法律では、国民年金への加入や年金保険料の納付の義務が定められています。   国民年金の加入者を被保険者といい、被保険者に対しては、保険料の納付が義務として課されています。日本で年金の仕組みが誕生したのは、明治時代にまでさかのぼります。   そこで現在の国民年金制度の運用と、明治時代から現在まで、年金制度がどのような道筋をたどってきたのかを見てみました。

今更聞けない、国民年金への加入が義務とされるのは何に基づいているのか?

給与明細を見ると、毎月天引きされている年金保険料について、なぜ、強制的に加入させられているのか疑問に思ったことはありませんか? これについては、「国民年金法」という法律があり、この法律の第七条「被保険者の資格」に国民年金の加入者である、被保険者について定められています。
 
そして、この定めにある被保険者が、保険料を納付しなければならないことについては、第八十八条「保険料の納付義務」に定められています。この定めによって、国民年金の被保険者となる国民が存在し、被保険者には保険料の納付義務が発生することが分かります。よって、国民年金への加入が、義務とされていることが説明できます。
 
ちなみに、政府が国民から年金保険料を徴収することや、この保険料の金額などについては、同法第八十七条「保険料」に定められています。また、第九十条に経済的な事情などから保険料の納付ができない場合に、毎月納付している保険料の免除についての規定があり、課せられる義務に対する一定の救済措置についても定められています。
 

公的年金制度の歴史をみてみる

日本における公的な年金制度は、実は明治時代の1875年に出された「海軍退隠令」までさかのぼることができます。この海軍の恩給制度にはじまり、徐々に同様の仕組みが、陸軍軍人、教職員や警察官まで拡大していくことになり、1923年に「恩給法」として制度が統一されました。
 
その後、1939年には民間人に向けて初めてとなる「船員保険法」が施行され、その後の1941年には工場などで働く男性労働者に向けた「労働者年金保険法」(女性は1944年から対象)が施行されました。
 
民間人向けの年金制度の成立の背景としては、当時、戦争における兵員の輸送や兵器などの製造に携わる民間人に対して手厚く保障する制度を設けることで、戦時下における愛国心を高めるといった意図があったようです。
 

国民年金の制度の始まりから加入義務化までの道のり

このように戦前から既に、現在の国民年金制度の前身となる制度は存在していました。しかし、農業や漁業従事者、および自営業者は加入対象外とされていたり、従業員が5人未満の会社や厚生年金保険加入者の配偶者の加入義務がなかったりしたために、未加入者が高齢となった際に生活に困窮したり、事故などにより障がい者となった際の保障がなかったりと、制度上の問題が明るみに出たのです。
 
そもそも、制度の制定当時の社会背景を考えると、老いた両親の世話は働いている子供が担うという暗黙のルールにより、両親の老後が支えられる構造であったため、無年金でも将来的な問題として捉えられていませんでした。
 
しかし、高度経済成長期をむかえて、日本人のライフスタイルにも変化が生じ、地元を離れて都会で自身の生活基盤を築く人が大半となりました。その結果、別世帯の両親の生活まで支えきれないという状況がみられるようになり、無年金が社会問題となったのです。
 
そこで、このような問題への対策として、これまで年金に加入できなかった自営業者などが加入できる「国民年金制度」がスタートすることとなりました。
 
新たな「国民年金制度」のスタートは1961年です。スタート当初の制度には、いくつか現在のものと異なる部分があります。例えば、当初は専業主婦や学生は任意加入とされていたり、受給開始年齢が60歳だったりと、制度制定当時の社会背景を反映した内容となっています。
 
しかし、時代が進むにつれて、当初設計された年金制度におけるほころびも目立つようになりました。例えば、任意加入の専業主婦が高齢になってから離婚した場合などで、生活に困窮するようなケースが問題視されたことから、現行制度では強制加入に変更されています。
 
ちなみに、受給開始も当初は60歳と早かったのですが、少子高齢化が進む中で、高齢者を支える若い世代が減少し続けていることを理由に、現行制度では65歳に引き上げられています。また、制度の特徴の一つでもある物価スライド制が導入されており、その時々の消費者物価指数をベースとして年金額が変更され、社会の実態に合わせた支給額の運用ができるようになっています。
 

常に時代に応じて変化を続けている国民年金制度と日本国民としての意識

現在、日本の人口構成は若年層が少なくなっており、一昔前のように高齢者を支える若者の数が多い状況とは変わっています。これは、納付者一人の負担が増したことを意味します。
 
少子高齢化がますます進む中で、財源の確保や納付者の確保、支給年齢のさらなる高齢化といった問題はありますが、不安なく老後をこの日本で送るためにも、年金保険料の納付は、国民全体で果たしていかなければならない義務となっています。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員