亡くなった夫の親族との関係を断ち切るため、死後離婚をしたい。しかし、遺族年金がもらえなくなるのではないか、遺産を返さなければならないのではないか。そう考えて死後離婚をためらう方もいらっしゃるようです。   死後離婚をするとどうなるのか、遺族年金や遺産へどう影響するのか解説します。

死後離婚とは

実は法律上、死後離婚という言葉に定義はなく、自分と亡くなった配偶者の血族(配偶者の親など血縁者)との姻族関係を終了させることを指す俗称です。
 
婚姻をしますと、配偶者だけでなく配偶者の血族との間にも姻族関係が生じ、法律上3親等以内の姻族は親族となると規定されています。これにより、扶養義務など通常の自分の親族と類似の関係が、自分と配偶者の血族との間にも生じることとなります。
 
配偶者が亡くなっても、配偶者の血族との関係は解消されないため、その関係を解消するための手続きが死後離婚となります。
 
死後離婚という名前から、配偶者の死後に配偶者と離婚するための手続きかと思われるかもしれませんが、実際にはそうではなく、配偶者の血族との姻族関係の解消手続きということを覚えておいてください。配偶者との離婚は配偶者が生きている間にしか行えません。
 
死後離婚は自身の本籍地や住民票上の住所地の市区町村役場で行います。詳細については手続きを行う予定地の市区町村役場へ相談してください。
 

死後離婚で遺族年金はどうなる?

死後離婚をしても遺族年金には影響ありません。遺族年金は亡くなった方の死亡当時、その方によって生計を維持されていた場合に受け取れるものですので、死後離婚をしたとしても、遺族年金を受給し続けることができます。
 
仮に遺族年金受給後に死後離婚をしたとしても、遺族年金の支給が打ち切られることもありません。
 

死後離婚で遺産はどうなる?

遺族年金同様、死後離婚も遺産には影響を与えません。死後離婚をしたとしても、亡くなった時点で配偶者であったことには変わらず、相続人となります。
 
そのため、死後離婚をした後でも亡くなった配偶者の遺産について相続権は残り、有効に相続財産を相続できます。相続後に死後離婚をしたとしても、遺産を返す必要もありません。
 

死後離婚によって何が変わるのか

死後離婚によって大きく変わることは少ないです。死後離婚はあくまでも配偶者の親族との関係を解消する手続きであるため、名字を変えていた場合でも名字はそのままです(死後離婚をする場合は住所地の市区町村役場や本籍地の市区町村役場で「復氏の手続き」が必要です)。
 
また、子がいる場合においては自分が死後離婚したとしても、子どもと姻族(子どもから見た祖父母や叔父叔母など)との関係性には法律上何ら影響がありません。
 
法律上、死後離婚によって変わることといえば、戸籍に姻族関係終了という旨が記載されたり、姻族関係が終了したことで配偶者の親などに対して扶養義務を負わなくなることくらいです。
 
しかし、死後離婚によって配偶者の親族などからの印象が悪くなり、亡くなった配偶者のお墓参りや葬儀への参列が難しくなったり、亡くなった配偶者の親族から今後援助を受けることができなくなる恐れもあるため、死後離婚をする際は感情面について十分に考慮することが必要です。
 

死後離婚は遺族年金や遺産には影響しない

死後離婚は亡くなった配偶者の親族との姻族関係を解消する手続きであるため遺族年金や遺産にはまったく影響しません。
 
しかし、死後離婚によって亡き配偶者の親族との関係性が悪化してしまう恐れもあります。一度死後離婚をすると法律上姻族関係を復活する手だてはありません。
 
死後離婚をする際は亡き配偶者の親族の感情や関係性も考慮して、後悔のない選択をするようにしてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士