相続はプラスの財産を引き継ぐばかりとはかぎりません。不動産や預金、株式などのプラスの財産以外に、借金や未払金などのマイナスの財産を引き継ぐこともあります。   相続税を計算する際には、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて相続財産総額を決め、それに基づいて相続税額を計算します。これを「債務控除」といいますが、場合によってはマイナスの財産のほうが大きく、相続財産がマイナスになってしまうことがあります。   そういったケースでは、もちろん相続税を支払う必要はありませんが、相続人が被相続人に代わって借金などの返済を行わなければならなくなり、それを回避するために相続放棄も起こり得ます。

相続税の債務控除とは?

相続税の課税価格は、相続財産の価額から被相続人が残した借入金などの債務や葬式にかかった費用を差し引いて計算しますが、マイナスの財産を課税価格から引き去ることを債務控除といいます(課税価格の計算には、相続時精算課税制度や相続開始前3年以内の贈与も関係しますが、基本的な考え方は上記のとおりです)。
 
1. 相続財産(プラスの財産)
 
(1)本来の相続財産
・土地、建物
・現金、預金
・有価証券
・貴金属
など
 
(2)みなし相続財産
・生命保険金
・死亡退職金
など
 
2. 債務控除(マイナスの財産)
・債務
・葬式費用
 
3. 純資産価額(相続税の課税価格)
 

債務控除の内容

債務控除の対象となる債務は、借入金と未払金です。ただし、相続開始の際に存在するもので、確実と認められるものに限定されるため、ある条件を満たせば債務となる性質のものは、債務控除の対象とは認められません。
 
また、債務ではありませんが、葬式費用は相続税を計算する際に相続財産の価額から差し引くことができます。それでは具体的費用について、債務控除の対象となるもの、対象とならないものを説明していきます。
 

借入金

 

1. 債務控除の対象となるもの

 

(1)金融機関など第三者からの借入金

金融機関など第三者からの借入金は、相続開始の時点において確実と認められる債務であるため、債務控除の対象となります。債務控除の対象となるのは、亡くなった日の借入金の残高、および未払利息です。
 

(2)親族など特殊な関係のある人からの借入金

金融機関などからの借入金に対し、親族など特殊な関係のある人からの借入金は、必ずしも債務控除の対象と認められるとはかぎりません。債務控除の対象として認められるためには、次の条件を満たし、関連書類を保存しておくことが必要になります。


・借入までの経緯が説明可能であること
・契約の内容がはっきりし、契約書が存在していること
・借入時の預金の動きに裏付けがあること
・返済時期が到来している場合、一部の返済が行われていること

 

2. 債務控除の対象とならないもの

 

(1)保証債務

保証債務とは、本来の債務者が債務を履行しない場合に、債務者に代わって履行をすべき保証人が負う債務をいいます。保証債務の場合は、将来、その履行義務が発生するか否かが不確実であるため、基本的に債務控除の対象とはなりません。
 
ただし、相続開始の時点で、本来の債務者が弁済不能の状態にあるときは、その弁済不能な部分に関しては債務控除が可能になります。
 

(2)団体信用保険が付された住宅ローン

住宅ローンは金融機関からの借入金であるため、本来ならば、債務控除の対象になります。
 
ただし、団体信用保険が付された住宅ローンで、被相続人が被保険者となっており、被相続人の死亡により保険金が支払われる場合は、その債務が保険金で補てんされるので債務控除の対象外となります。
 

まとめ

「その1」では、相続税の計算における債務控除の位置付けと、債務控除のうち借入金について説明しました。「その2」では債務控除のうち、未払金と葬式費用について説明したいと思います。
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー