子どもの嫌がらせは今や現実世界だけではなく、インターネット上でも起こるようになっています。   現実世界ではなく、ネットの世界で子どもが同級生から嫌がらせを受けたような場合、相手の親に損害賠償金を請求することは可能なのか、考えてみます。

いじめや嫌がらせを理由に損害賠償の請求は可能である

子どもが同級生からいじめや嫌がらせを受けているという場合、その親に対して損害賠償(慰謝料)を請求することは可能です。いじめや嫌がらせは民法上、不法行為に該当します。不法行為とは、他人の権利や利益を正当な理由なく侵害するような行為をいいます。
 
親しい友人同士のちょっとしたいじり程度ならともかく、精神的に苦痛を感じてしまうようないじめや嫌がらせは、不法行為に該当する可能性が高いのです。そして、親には子の監督義務があり、いじめや嫌がらせがあった場合、その責任を怠ったとして、相手の親に損害賠償請求が可能になります。
 
上記の理由から、自分の子が同級生からいじめや嫌がらせを受けたとき、そのいじめや嫌がらせを行った相手の親に対して、損害賠償を請求することは可能だといえます。
 

ネット上での嫌がらせも損害賠償の対象となるのか

近年では、パソコンやスマートフォンが普及し、子どもたちにとってインターネットが身近な存在になっています。それにより、現実世界でのいじめや嫌がらせだけでなく、ネットでの嫌がらせを行う「ネット嫌がらせ」が行われることも多いようです。
 
インターネット上での書き込みによる誹謗(ひぼう)中傷や、SNSグループでの無視など、嫌がらせ行為がインターネット上で行われた場合においても、損害賠償の対象となります。
 

いじめや嫌がらせに対する損害賠償の請求の仕方は?

いじめや嫌がらせを理由とした損害賠償の請求は、弁護士や司法書士、行政書士を通じて内容証明郵便を作成・発送して行われるのが一般的です。
 
内容証明郵便は日本郵便株式会社が、いつ、どういった内容の文書が誰から誰宛てに送られたのかを証明してくれるものです。原則、対面で直接相手に手渡され、文書の書式も普段は見慣れない厳かな形式となるため、受け手に心理的なプレッシャーを与えられるものです。
 
さらに、配達証明サービスをオプションでつけることで、配達された事実までも証明され、確実にいじめを理由に損害賠償を請求したことが証拠として残ります。
 
内容証明郵便は郵便局にて作成できるほか、最近では電子内容証明として、インターネット上で自宅からでも作成と発送ができるようになっています。弁護士などが作成した内容証明郵便には、作成した方の肩書と名前が記載されるため、一個人が作成したものよりも重みがあります。
 

損害賠償の支払いを現実に受けるのは難しい

理論上、ネットでの嫌がらせを理由に、嫌がらせを行った相手の親に損害賠償を請求すること自体は可能であっても、その支払いを現実に受けるのは相当に困難です。
 
内容証明郵便は文書を送った事実は証明できても、いじめの事実自体を証明できるわけではないからです。大抵の場合、相手の親は「自分の子どもはやっていない」と否定したり、「子どものやったことだから」と損害賠償の支払いに消極的になります。
 
そのため、損害賠償の請求前には、実際にネット嫌がらせがされている画面を印刷したり、スクリーンショットをとって保存するなどして証拠の収集が必要です。それができない場合は最低限「場所、日時、内容、そのときの心情」を事細かに、かつ時系列順にメモしておきましょう。メモでも証拠になるからです。
 
とはいえ、証拠を用意して提示し、それとは別に内容証明郵便を送付しても、無視されてしまえばそれまでです。内容証明郵便を送っただけでは、意見を主張したにすぎないからです。
 
最終的に相手が事実を認め、損害賠償の支払いをしなければ、民事訴訟によることになります。民事訴訟にはかなりの時間と労力、そしてお金を要することになります。
 
子どもが同級生にやられたネットでの嫌がらせを理由に、相手の親へ損害賠償を請求すること自体は不可能ではないですが、実際に支払いを受けるにはかなりハードルが高いことを知っておいてください。
 

ネット上での嫌がらせに対する損害賠償が可能

子どもが同級生からネット嫌がらせを受けた場合、相手の親に対して損害賠償の請求が可能です。しかし、個別の事情によっては、損害賠償の支払いを受けることが困難な場合もあります。
 
嫌がらせを理由とする損害賠償の請求を考えたときは、速やかに一度、弁護士へ相談しておくことをおすすめします。
 
執筆者:柘植輝
行政書士