障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や、誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気づきます。そうした人たちは、後になって「しまった! 」となりかねません。   そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第23回は「最初から額改定請求も行う?」です。

早々と行うのには理由がある

額改定請求というのは、通常、障害年金の受給者の障害の程度が重くなったときに、上位等級の認定を求めて行うものです。しかし、裁定請求をするときに、併せてこの請求を行うことがあります。請求の種類が障害認定日請求で、障害認定日当時より請求時のほうが重くなったと思われるときです。
 
裁定請求の時点、つまり、まだ障害年金を受給できるかどうかも分かっていない時点で早々とこの請求を行うことには違和感があるかもしれません。しかし、それには理由があります。
 

期待していると、とんだ肩透かしも

障害認定日請求の場合は通常、障害認定日時点の障害等級が判定され、障害状態に該当しない場合は、事後重症請求に切り替えられて請求時の障害等級が判定されます。
 
このため、上記の場合は障害認定日の時点と請求時の時点の2回、判定が行われるわけですが、もしも、障害認定日の時点で障害の状態に該当していると判定されると、請求時の時点での障害等級については判定が行われません。障害認定日で3級だった場合は、そのまま3級が続くわけです。
 
時として「障害認定日で3級、請求時で2級」などと判定されることもありますが、これは、厚生労働省が自主的に判定をしているもので「職権改定」と呼ばれます。請求者が「請求時は、昇級されるのではないか」と期待をしていると、とんだ肩透かしになりかねません。そこで、あらかじめ、額改定請求をしておくのです。
 

疑義照会でのお墨付きがある

この方法は、厚生労働省と日本年金機構間の疑義照会でも認められています。疑義照会というのは、法令や規程などの解釈や取扱いなどが不明確な場合に上部機関に対して問い合わせを行うことで、回答の形で示されます。
 
それによると、「障害認定日から1年以上経過している場合、障害厚生年金の認定日請求と請求時における額改定請求は、同時に行うことができると解される。(中略)障害基礎年金の取扱いについても同様と解される」と回答されており、お墨付きが与えられています。(*1)
 

額改定請求も行うメリットは……

裁定請求をするときに額改定請求も行うメリットは、次のとおりです。

(1)請求時の等級判定が確実に行われる。
(2)請求時の等級に納得がいかない場合は、直ちに審査請求ができ、もしも認められれば、裁定請求を行った月の翌月分から上位の障害年金を受給できる。

(2)については具体例を挙げて説明します。
 
仮に、障害認定日が2018年1月である人が2022年4月に裁定請求をしたとしましょう。請求方法は障害認定日請求です。2022年7月に裁定結果が明らかになり、障害認定日3級、請求時も3級だったと仮定します。
 

「空白期間」をなくせるのが、お得

裁定請求時に額改定請求を行っていなかった場合は、請求者は改めてその時点の診断書を作成してもらい、額改定請求を行うことになります。額改定請求を7月中に行い、無事、2級が認められれば、2022年8月分から2級の障害年金を受給できます。
 
ところが、裁定請求時に額改定請求も行っていた場合は、すぐに審査請求が行え、新たな診断書も不要です。そして、2級が認められれば、2022年5月分から2級の障害年金を受給できます。裁定請求から審査請求までの「空白期間」をなくせるのが、お得な点です。
 

昇級が確実な場合は、待つのも一法

ただ、額改定請求を行って昇級が認められなかった場合は、障害の状態が明らかに増進した場合を除いて、1年を経過するまで再度の額改定請求を行うことはできません。したがって、近々に何らかの手術などが予定されていて、昇級が確実な場合は、その時点まで待って、額改定請求を行うのも一法でしょう。
 
「最初から額改定請求も行う? 」の「ウソ・ホント」は「ホント」といえそうです。
 

出典

(*1)疑義照会「障害厚生年金の障害認定日における請求が一年以上遡及して行われた場合における額改定同時請求の可否について」2015年12月10日
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士