投資をする際は全般的にいえることですが、「金利」の動向に着目することがファンダメンタルズ分析上、最も重要なアプローチといえます。   前回は金融政策と金融相場、業績相場といった相場の循環(サイクル)について、金利を絡めてお伝えしましたが、今回は引き続き、投資の「実践」に主眼を置きつつ金利を軸にして、マーケットに参加するプレーヤーがどのように相場観を抱いているのか考えていきます。 ※この記事は2022年7月29日時点の情報を基に執筆しています。

投資は「金利」を軸に考える


ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)分析を行う上で、重要な要素の1つが「金利」です。
 
金利が上昇すれば景気は悪くなり、逆に金利が低下すれば景気はよくなります。これだけでも、ファンダメンタルズ分析における金利の重要性が何となく分かるかもしれません。実体経済が金利の動向に大きく左右されるように、株式市場などにおいても、金利の影響は絶大なものといえます。
 
前回の記事(「投資におけるファンダメンタルズ分析の基本の「キ」。金融相場と業績相場。業績相場は来なかった⁉」)では、結局のところ「業績相場は来なかった」と結論付けました。
 
金融相場後の反落局面が、そのまま景気の減速、後退局面に移行してしまったという理由からですが、あくまでも可能性が高いという話ですので、景気後退(リセッション)については前回の記事をご確認ください。
 
この記事の執筆時点(2022年7月29日)では、アメリカの株式市場は上昇基調にあります。「アメリカ経済がリセッション入りしている可能性が高いのに、どうして株価が上がるの?」と思われるかもしれませんが、この点に関しては金利を軸に考えていく必要があります。端的にいうと、現在マーケットでは次のような思惑が広がっています。
 
「アメリカは景気後退した可能性が高い」→「金融緩和政策への転換は遠くない」→「金利が低下する」→「景気はよくなる」→「今のうちから株式を買っておこう」
 
理屈をひも解けば、1つの意見として成り立つのはうなずけます。株式市場は基本的に金融緩和政策を好むわけですから、金利が下がるなら株価は上がると考えるのはセオリーどおりといえます。
 
ただし、これについて実際は賛否両論もあり、「景気後退局面に本格的に突入するわけだから、株式市場はもう一段下落する可能性が高いだろう」と考える投資家もいます。
 
どちらが正しくて、どちらが間違っていたかは結果が証明することですが、この議論のポイントは両者ともセオリーとしては間違っていないため、単純に株価が上昇するタイミングの話といえます。
 
「今が買いだ!」と思っている人は、再び金融緩和政策に転じる日が近いと考えているため、リセッション入りを好機と捉えています。一方、「買い場はもう少し先でしょう」と思っている人は、本格的な景気後退局面をしっかりと確認した後に、FRB(連邦準備制度理事会)が金融緩和政策に転じると考えています。
 
つまり両者とも、いずれは再び金融緩和政策に戻るだろうと考えている点は共通していますが、それが近いか、遠いかという話です。
 
金融緩和政策の再開が意味するところは、遅かれ早かれ金利が「低下する」、「引き下げられる」ということです。
 
つまり、金利についての思惑が株式市場を動かしているといえます。このように金利の動向は、相場の中心軸、投資の中心軸になり得ます。これについて理解がなければ、前回の記事でお伝えした金融相場や業績相場についても理解することが難しくなります。
 

「金利」から「為替」を読む

それでは、金利をファンダメンタルズ分析の中心軸に据えた場合、株式市場に与える影響だけでなく、その他の市場にどのような影響を及ぼすかについても確認しておきましょう。これは、いわゆる「相場の変動要因」の話で、複雑でよく分からないと思う人が一般的には多い印象を受けますが、金利を軸に捉えると理解しやすくなります。
 
景気後退局面に入っている、もしくは今後、本格的な景気後退局面に入っていくといった場面では、金利の低下が連想されやすいといえますが、金利が低下することをもう少し深掘りすると、「ある国とある国の金利差が縮小する」というところまで連想を広げることができます。
 
例えば、日本とアメリカの金利差が縮小する場合、これを「日米金利差の縮小」といいますが、為替は円高・ドル安局面に転じていきます。
 
日米金利差の縮小が為替を円高・ドル安に導く理由は、例えば今のような状況では、日銀の金融政策は依然として金融緩和政策を維持しているので、政策金利の水準に変化はありませんが、アメリカの場合、再び金融緩和政策に舞い戻るといった期待がマーケットでは広がっています。
 
そのため、いずれアメリカの政策金利である「FF(Federal Funds)レート」が低下することが想起され、実体は「日本の金利<アメリカの金利」であるにもかかわらず、「これまでと比べて金利差が縮小する」と着目されてドル売りにつながり、円が買い戻されています。
 
為替に関していうと、金利は単純にどちらが高いか、低いかではなく、「金利差が拡大するのか、縮小するのか」まで踏み込んで考える必要があります。アメリカにおいて景気後退局面(リセッション)入りとは、為替面ではこのような現象を意味しますが、特に米国株投資を行っている場合はドル安になるわけですから、保有している米国株の価値は下がります。
 
ただし現時点では、マーケットはリセッション入りを好感している、つまり、金融緩和政策への再転換の期待を背景に米国の株価指数は上昇しているため、ドル安から受ける資産価値の目減りよりも株高による資産価値の増加が上回っている可能性が高く、大きな心配はしなくていいと考えることはできます。
 
一方で、これからアメリカで本格的な景気後退が起こると考える場合、米国株はもう一段の下げとなる可能性があるため、さらなるドル安(円高)と株価下落のダブルパンチは覚悟しておく必要があるかもしれません。
 
これらについては先ほど述べたとおり、タイミングの違いの話ですが、金利を軸に考えると為替の道筋が比較的はっきりと見えるようになります。
 
基本的な理解としてまとめると、金利が上がる国の通貨が高くなり、この点をドル・円相場でいうとドル高・円安になりますが、応用編として金利差の拡大・縮小という考え方を身に付けておくと、現在のような局面がスッと理解できるようになります。
 

まとめ

今回は、「金利」を軸にした株式市場や為替市場の解釈について、現在の相場環境で何が起こっているのかをひも解きながら説明しました。繰り返しになりますが、金融や経済の世界は金利に支配されているといっても過言ではないことから、金融リテラシーを身に付けるには根本的に金利を理解することがとても重要といえます。
 
次回は、私たちの暮らしの中で身近なコモディティー(原油や穀物、資源)価格について、金利を軸に確認していきたいと思います。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)