2013年度税制改正によって、2015年1月1日以降に発生した相続遺産にかかる基礎控除額が従来の60%に引き下げられています。今までは相続税がかからなかったケースでも、納税になる可能性が出てきました。   さて、相続税の納税資金対策が必要か否かの判断は、どのよう行ったらよいのでしょうか? 納税の方法は? 将来の納税資金対策のために知っておきたい基本的な知識を紹介します。

遺産に関わる基礎控除額

相続税は、相続財産のすべてに課税されるわけではなく、基礎控除額と呼ばれる一定の額までは相続税がかからない仕組みになっています。基礎控除額は法定相続人の人数によって決まります。以下の計算方法で算出します。
 

《算出の方法》 2015年1月1日以降に発生した相続

 『 3000万円+(600万円×法定相続人の数) 』
 
(例)被相続人:夫 法定相続人:妻、子2人 の場合
3000万円×600万円×3=4800万円
 

《参考:従来の算出方法》

 『 5000万円+1000万円×法定相続人の数  』
 
(例)被相続人:夫 法定相続人:妻、子2人 の場合
5000万円×1000万円×3=8000万円
 
このように従来の60%に引き下げられたことで、いままでは相続税がかからなかったケースでも、相続税がかかる可能性がでてきます。
 

基礎控除とは別に、相続財産の価額から控除できる債務と葬式費用

基礎控除以外に相続財産の価格から控除できるものとして、「被相続人の債務」と「相続人が負担した葬儀費用」があります。
 

【被相続人の債務】

借入金や未払金などのほか、被相続人が納めなければならなかった税金のうち、まだ納めていなかったものが該当します。
 

【相続人が負担した葬式費用】

葬式費用とは、
 

(1) お寺などへの支払い
(2) 葬儀社などへの支払い
(3) お通夜に要した費用

 
などが該当します。
 
ただし、墓地や墓碑などの購入費用、香典返しの費用や法要に要した費用などは、葬式費用に含まれません。
 

特例

その他、特例が適用されることで納税額の軽減できる場合もあります。代表的なものを紹介します。
 

【小規模宅地等の特例】

被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用、もしくは居住用の宅地等については、その宅地等のうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定割合が減額されます。
 
例えば、居住の用に供されていた宅地等の場合には、限度面積330平方メートルまでの部分が80%減額されます。
 

【配偶者の税額軽減】

被相続人の配偶者の課税価格が 1 億 6000 万円までか、配偶者の法定相続分相当額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。
 

相続税の納付方法

相続税の納付方法についても確認しておきましょう。
 

【現金による一括納付が原則】

相続税の納付は、現金による一括納付が原則です。また、期限も定められており、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人が亡くなった日)の翌日から 10ヶ月目の日までです。被相続人の住所地を所轄する税務署に相続税の申告書を提出するとともに、納税します。
 
申告書の提出期限に遅れて申告と納税をした場合には、原則として加算税および延滞税がかかります。
 

【延納と物納】

現金による一括納付ができない場合には、分割で納付する「延納」という選択もあります。さらに「延納」でも納付できない場合には、現金の代わりに相続で取得した財産で納付する「物納」という選択もあります。ただし「延納」「物納」にはそれぞれ以下の要件があります。
 

■延納の要件(概要)

次に挙げるすべての要件を満たす場合に、延納申請ができます。
 

●相続税が10万円を超えている
●金銭で納付することを困難とする事由があり、納付を困難とする金額の範囲内である
●延納税額および利子税の額に相当する担保の提供(延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合は除く)する
●定められた期日までに担保提供関係書類を添付して延納申請書を税務署長に提出する

 

■物納の要件(概要)

次に挙げるすべての要件を満たしている場合に、物納の許可を受けることができます。
 

●延納によっても金銭で納付することが困難である事由があり、納付を困難とする金額が限定している
●物納財産は相続財産のうち以下の財産および順位で日本国内にある

 
《第1順位》
・不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
・不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
 
《第2順位》
・非上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます)
・非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
 
《第3順位》
・動産
 

まとめ

相続財産の総額と基礎控除額を比較して、相続財産のほうが大きければ原則納税となります。ただし、特例が適用できればこの限りではありません。具体的な相続税の計算は国税庁のホームページ(※)に掲載されています。必要な方はご覧いただき、相続に向けての参考にしてください。
 
(※)国税庁 相続税のあらまし
 

出典

国税庁 相続税のあらまし
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
国税庁 No.4211 相続税の延納
国税庁 No.4214 相続税の物納

国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務

国土交通省 地価・不動産鑑定 令和4年公示価格

 
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント