残業時間は時期によって異なるのに、毎月支払われる残業代がいつも同じで疑問に感じている人もいるでしょう。   理由は、勤務先が「みなし残業」制度を導入しているからです。   この記事では、みなし残業について解説します。裁量労働制の残業代についても紹介するので、勤務形態ごとに自分の残業代のしくみについて理解しましょう。

みなし残業とは

みなし残業とは、実際の残業時間ではなく、あらかじめ見込んだ残業時間(以下、みなし残業時間)を基に残業代を支払う賃金制度のことです。残業時間が毎月同じくらい発生すると見込まれた場合、毎月支給される残業代は一定金額になります。
 
事業所にとっては毎月残業時間を計算する手間が省け、従業員も収入が安定するなどのメリットがあります。一方、実際の残業時間がみなし残業時間を上回った場合、受け取れるはずの残業代がもらえないというリスクもあります。
 
みなし残業制度を導入している事業所についても、法定労働時間を超える残業に対しては残業代に割増賃金(原則25%)が加算されます。
 

みなし残業の対象者

みなし残業の対象者は、制度を導入している事業所に勤務している人です。制度を導入するかどうかは、事業所によって異なります。勤務形態については、「就業時間が朝9時から夕方6時まで」などの定時勤務の人も、みなし労働時間制の人も対象となります。
 

定時勤務の人のみなし残業

就業時間が「朝9時から夕方6時(所定労働時間8時間)」で、みなし残業時間が「夕方6時から8時」と定められている場合、残業が1時間の日も3時間の日も、毎日2時間残業したものとして残業代を計算します。
 
1ヶ月の実際の残業時間の合計がみなし残業時間を下回った場合でも、みなし残業時間分の残業代が定額支給されます。ただし、割増賃金率の高い深夜残業や休日残業をした場合、その分が加算されます。
 

みなし労働時間制の人のみなし残業

みなし労働時間制とは、実際の労働時間ではなく、あらかじめ見込んだ労働時間(以下、みなし労働時間)働いたものとみなす勤務形態のことです。実際の労働時間が把握しにくい場合や、従業員が仕事の進め方や時間配分を決定するほうが効率的である場合などに適用されます。
 
みなし労働時間制は、「事業場外労働のみなし労働時間制」と「裁量労働制」に大別できます。それぞれの制度内容と残業代は、次の通りです。
 
「事業場外労働のみなし労働時間制」は、会社に立ち寄らず直行や直帰することが多い営業の仕事などで、労働時間の把握が難しい場合に「業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したものとみなす制度です。例えば、「業務の遂行に通常必要とされる時間」が1日9時間ならば、1時間分のみなし残業代が支給されます。
 
「裁量労働制」には、専門性の高い研究やシステム開発、デザインなどの業務を行う人を対象とした「専門業務型」と、企業運営に関する企画や立案、調査・分析を行う人を対象とする「企画業務型」があります。裁量労働制が適用される従業員は、仕事の仕方や時間配分を自分で決定可能です。
 
裁量労働制では、実際の残業時間と関係なく「労使協定などで定めた時間」がみなし労働時間になります。事業場外労働の場合と同様、「労使協定などで定めた時間」が法定労働時間を超える場合、みなし残業代が発生します。
 
事業場外労働や裁量労働制で働く場合、「業務の遂行に通常必要とされる時間」や「労使協定などで定めた時間」が適切であるかどうかを確認しましょう。会社が提示した労働時間より実際の労働時間のほうが長いと考えられる場合は、みなし残業代が発生(または残業代がアップ)する可能性があります。
 
また、深夜や休日の残業に対しては、「定時勤務の人のみなし残業」と同様、高い割増賃金率が適用されます。
 

みなし残業時間が適切か確認しましょう

みなし残業では、みなし残業時間を基に残業代が支払われます。みなし残業時間が実際の労働時間より短く設定されていれば、受け取れるはずの残業代がもらえなくなります。
 
みなし残業時間が適切かどうかを確認し、問題があれば勤務先と相談することも必要です。
 

出典

厚生労働省 「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適切な運用のために
厚生労働省 専門業務型裁量労働制
厚生労働省 企画業務型裁量労働制
 
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級