資産運用を行う場合、投資期間が短期であろうと長期であろうと、おおむね「出口戦略」を描くことになります。出口戦略がそもそも必要かということについては、別の機会に説明しようと思いますが、今回お伝えする出口戦略とは、どのタイミングで投資を止めるかということです。   具体的には「利益確定」と「損切り」が出口戦略を実行するための手段になりますが、今回から数回にわたって主要な株価指数などを用い、シナリオを作成しながら出口戦略を描く方法について一緒に学んでいければと思います。   ※この記事は2022年11月17日時点の情報を基に執筆しています。記事の内容は、あくまでも資産運用の方法を提示するものであり、実際の投資において相場がこうなると断定するものではないことをご理解ください。

利益確定とは


 
「利益確定」(以下、利確)とは、文字どおり利益を確定することで、「利確(りかく)」と呼ぶこともあります。昔から投資をしている人には、「利食い(りぐい)」の方が馴染みが深いかもしれません。
 
例えば株式投資を行っている場合、図表1のように1000円で買った株式が1500円に値上がりし、その時点で売却すると500円の利益が確定します。このような益出しを利確といいます。
 
【図表1】
 

 
※筆者作成
 

レジスタンスライン(上値抵抗線)の引き方

利確をするには、相場がどの程度の水準まで上昇するか、あらかじめ想定した上で行う必要があります。このときに使うテクニカル分析のツールが「レジスタンスライン(上値抵抗線)」です。
 
以前の記事でレジスタンスラインについてお伝えしましたが、相場の節目ごとに引いた横線のことです。
 
それでは、S&P500の日足チャートを用い、レジスタンスライン(上値抵抗線)の引き方をあらためて確認してみましょう。
 
【図表2】 S&P500(日足)
 


 
出典:TradingView Inc. 「TradingView」
※解説を目的に使用しています。
 
図表2は真っさらな状態のチャートですが、上段がS&P500の日足チャートで、中段にMACD(移動平均収束拡散)、下段に相場の相対的な強さを測るRSIといったインジケーターを表示しています。
 
また、日足チャート上には4本の単純移動平均線(SMA)を描画し、紺色が200SMA、薄い紺色が100SMA、紫色が50SMA、薄紫色が20SMAとなっています。MACDやRSI、移動平均線の詳細については、以前の記事をご確認ください。
 
このような画面環境を整えた上で、次のチャートでレジスタンスライン(上値抵抗線)を引いていきます(図表3)。
 
【図表3】 S&P500(日足)
 

 
出典:TradingView Inc. 「TradingView」
※解説を目的に使用しています。
 
ここでのシナリオは、S&P500は今後、もう少し上昇することを前提としたものです(相場シナリオを描く際は、波動を捉えながらトレンドを推定するようにしてください)。この前提で、これからS&P500がどの水準まで上昇していく可能性があるかを探ってみます。
 
ここで使うのがレジスタンスライン(上値抵抗線)ですが、チャート上ではレジスタンスライン(上値抵抗線)を点線で示しています。
 
レジスタンスライン(上値抵抗線)は、相場の節目、つまり過去にどの水準で転換したかに着目して引いていきます。図表3のチャートでは4本のレジスタンスライン(上値抵抗線)を引きましたが、それぞれおおよそ「4000」「4100」「4200」「4300」の水準で引いています。
 
これらのレジスタンスライン(上値抵抗線)が示すことは、市場参加者が上値の目処として、これらの水準を意識しながらトレードを行っているということです。そのため、相場がこれらの水準に近づくと、市場参加者は売る頃合いと認識し、利確の動きが出やすくなります。
 
例えば、直近ではS&P500は「4000」水準の手前で揉み合っています。相場が揉み合うとは、上げればいいか、下げればいいか、相場が方向感の定まらない動きをすることですが、なぜ、この水準で揉み合っているのかというと、S&P500では「4000」水準が非常に強い抵抗レベルになっているからです。
 

MACDとRSIの確認

投資家としては、この水準で利確をするかどうか迷います。
 
そのため、「4000」という水準が本当に利確ポイントかどうか、他のテクニカルツールを用いて確認していきます(図表4)。
 
【図表4】 S&P500(日足)
 


 
出典:TradingView Inc. 「TradingView」
※解説を目的に使用しています。
 
チャートの中段にはMACD、下段にはRSIを表示していますが、それぞれについて確認すると、MACDは上昇トレンドを描いていることが分かります。
 
直近のMACDでは、2022年8月高値の水準がピークになっており、現在はこの水準に近づいていますが、まだ到達していません。一方、RSIは「80」に近づき、割高感が高まってきていますが、MACDと同様、2022年8月高値の水準と比べると、まだ少し低い水準に位置しています。
 
これらから導き出されることは、S&P500はまだ上昇の余地があるということです。
 

単純移動平均線による確認

上昇の余地があるということは仮説として、おそらくS&P500は「4000」レベルを突破してくるだろうと考えることができます。
 
仮に、このような仮説を立てた場合、次に単純移動平均線(SMA)の位置を確認していきます(図表5)。
 
【図表5】 S&P500(日足)
 


 
出典:TradingView Inc. 「TradingView」
※解説を目的に使用しています。
 
ここで確認する移動平均線は紺色の200SMAです。現時点では、200SMAの値は「4073.12」ですが、200SMAは非常に強力な上値抵抗になるため、おそらくこの辺が可能性の高い利確ポイントになるだろうと判断していきます。
 
その上のレジスタンスライン(上値抵抗線)が、おおよそ「4100」レベルであるため、S&P500は「4000」〜「4100」のレンジで反転下落する可能性が高いと踏み、この価格帯を利確する水準と想定します。
 

フィボナッチ・リトレースメントによる確認

次に、フィボナッチ・リトレースメント(フィボナッチ級数における関係比を応用したテクニカルツール)でも確認します(図表6)。
 
現在、S&P500が「4000」レベルで揉み合っている理由の1つは、フィボナッチ・リトレースメント「0.618」が「4000」水準に位置しているからです。フィボナッチ・リトレースメントが「0.618」水準に達しているため、S&P500は今後、いつ下落してもおかしくないといえます。
 
【図表6】 S&P500(日足)
 


 
出典:TradingView Inc. 「TradingView」
※解説を目的に使用しています。
 
このような推測を基に、S&P500における利確ポイントは「4000」〜「4100」のレンジ内であろうという仮説を立てると、利確の水準は図表7の赤い矢印のようなイメージになります。
 
【図表7】 S&P500(日足)
 

 
出典:TradingView Inc. 「TradingView」
※解説を目的に使用しています。
 

まとめ

相場格言に「頭と尻尾はくれてやれ」というものがあります。上昇相場を魚の頭と尻尾に例えたものですが、頭や尻尾まで食べるなという意味です。
 
上昇相場においては、上昇の初めの段階が頭、終わりが尻尾になりますが、下落相場で底値をつけてもすぐに買いに行かない、また上昇相場で天井をつけるまで持ち続けないことを訓示しています。端的にいうと「欲深くなるな」ということですが、利確の本質的な意味は、人間の持つ欲深さを戒めるための行為ともいえます。
 
こうした意味で人生と似ているような気がしますが、深追いしないこと、自制することの大切さを利確は教えてくれているのかもしれません。
 

出典

TradingView Inc. TradingView
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)