「男性のほうが女性より稼いでいる」というイメージをもつ人は多いでしょう。実際、平均賃金を比べると、男性のほうが女性より高い実態があります。性別による平均賃金の差は、なぜ生まれるのでしょうか。   本記事では男性と女性の平均賃金を紹介するとともに、平均賃金の差につながる4つの要因を解説します。ぜひ、男女間の賃金格差の問題について考えるきっかけにしてください。

日本の平均賃金はどの年齢層でも女性のほうが低い

厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、日本の平均賃金は男性が33万7200円、女性が25万3600円で、男性のほうが8万円以上高くなっています。年齢別の平均賃金は、男女それぞれ図表1のとおりです。
 
【図表1】

年齢 男性 女性
〜19歳 18万5600円 17万7300円
20〜24歳 21万5400円 21万700円
25〜29歳 25万3300円 23万6200円
30〜34歳 29万500円 24万8500円
35〜39歳 32万7000円 26万円
40〜44歳 35万7600円 26万9900円
45〜49歳 38万2800円 27万900円
50〜54歳 41万2100円 27万7900円
55〜59歳 41万3600円 27万3300円
60〜64歳 31万8100円 23万4400円
65〜69歳 27万4800円 22万2200円
70歳以上 25万6500円 21万100円

出典:厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査の概況 第2表
 
全ての年齢層で女性の平均賃金のほうが低く、最も差が大きい50代前半では、13万4000円もの開きがあります。
 

平均賃金に男女差が生まれる理由

女性の平均賃金が男性よりも低くなる理由として、主に以下の4つの状況が賃金額に影響していると考えられます。
 

●管理職に就いている女性の割合が低い
●女性のほうが非正規雇用の割合が高い
●女性のほうがキャリアを中断しなければならないケースが多い
●手当の支給が男性に偏っている

 
それぞれの理由について、各種統計の数字などをもとに解説します。
 

管理職に就いている女性の割合が低い

内閣府男女共同参画府が公開している「男女共同参画白書 令和3年版」によると、令和2年度の役職者に占める女性の割合は係長級21.3%、課長級11.5%、部長級8.5%と男性を大きく下回っています。
 
また、「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」によると、役職者の平均賃金は非役職者の約1.3〜2倍以上です。以上を考慮すると、女性の役職者の割合が低いことが女性の平均賃金が男性と比べて低い一因だと考えられます。
 

女性のほうが非正規雇用の割合が高い

総務省「労働力調査 2021年平均結果」によると、役員を除く雇用者全体のうち非正規の職員・従業員の割合は、男性が約22%、女性が約54%です。一般的に非正規雇用者は正規雇用者と比べると賃金が低い傾向があることから、非正規雇用者の割合に男女間で大きな差がある現状も、平均賃金に男女間格差が生まれる大きな原因だと考えられるでしょう。
 

女性のほうがキャリアを中断しなければならないケースが多い

出産・育児、家族の介護や看護のための休業や離職によって、キャリアを中断しなければならない女性が多いことも、男女間の平均賃金の差を生み出す一因です。「男女共同参画白書 令和3年版」によれば、4割以上の女性が第1子出産前後に仕事を退職している現状があります。また、介護・看護による離職者のうち76%が女性です。
 
以上のような理由で女性はキャリアが中断してしまうケースが多く、昇給の妨げになりやすいと考えられます。
 

手当の支給が男性に偏っている

家族手当や住宅手当などの諸手当が主に男性世帯主に支給されていることも、男女間の平均賃金に差が生じる要因です。「男女間の賃金格差問題に関する研究会」の分析では、手当の支給を全面的に廃止した場合、男女間の賃金格差は1.4%程度縮小するという試算が出ています。
 

賃金の男女間格差は日本社会が抱える根深い問題

女性の平均賃金が男性を大きく下回る状況は、女性の管理職の少なさや非正規雇用の多さ、出産育児などにともない女性のほうがキャリアの中断を迫られやすいことなど、さまざまな要因が生み出していると考えられます。格差が解消されるには、雇用や就労に関する制度設計の見直しなど、社会制度から変えていく必要があるでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況

厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査の概況

内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書 令和3年版

総務省統計局 労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)平均結果の概要

内閣府男女共同参画局 男女間の賃金格差問題に関する研究会報告

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部