「うちは大学無償化の対象だから子どもの大学進学の費用は考えなくて大丈夫」。そう楽観視している子育て世帯の方が時折いらっしゃいます。   果たして大学無償化の対象になれば、本当に子どもの大学進学のための学費を用意しなくてもよいのでしょうか。確認してみましょう。

大学無償化制度の概要

大学無償化制度とは、正式名称を「高等教育の修学支援新制度」といい、大学や短期大学、4年制ないし5年制の高等専門学校、専門学校に通う学生を支援する制度です。支援の内容としては、授業料・入学金の減免と、返還を要しない給付型奨学金の支給となっています。
 
大学無償化制度の対象となるには世帯の収入や資産が一定以下であることのほか、学生本人が進学先で学ぶ意欲を有することが必要です。特に世帯収入は重要であり、大学無償化制度の対象となっても収入に応じて支援の内容が分かれます。
 
大学無償化制度によって受けられる支援の上限額は昼間制か夜間制かや、学校の区分などによって異なります。参考までに、昼間制の大学などに通う場合の支援の上限額は給付型奨学金が年額約91万円、授業料減免が年額約70万円、入学金減免が約28万円となっています。
 
図表

出典:文部科学省 「授業料等減免額(上限)・給付型奨学金の支給額」
 
なお、全ての学校が大学無償化制度の対象となっているわけではありません。学校によっては対象外となっていることもあります。進学先が制度の対象であるか否かは必ず文部科学省の対象機関リストで確認しておいてください。
 

大学無償化といえども全額無償となるわけではない

大学無償化と聞くと大学に関する費用が全て無償になるように思えてしまいますが、そうではありません。
 
先に見たように、学校の区分などによって上限額が決まっています。また、先に紹介した上限額は住民税非課税世帯の方の場合です。住民税非課税に準ずる世帯においては年収に応じて上限額の3分の2ないし3分の1になります。
 
具体的に何円までなら住民税非課税世帯となるのかは家族構成などによって異なります。参考までに、給与所得者の父と専業主婦の母、中学生の弟か妹、そして18歳の本人という4人家族の場合、年収270万円までなら住民税非課税世帯として上限額まで支援を受けられます。年収300万円までの場合は上限額の3分の2の支援を、年収380万円までの場合は上限額の3分の1の支援を受けられます。
 
また、大学の学費には授業料だけでなく学校の設備費や実習の費用、教科書代などもかかります。大学無償化制度の支援によって授業料はある程度まかなえても、そのほかの支出を含めるとある程度まとまった金額が必要となるケースがほとんどです。
 
また、その授業料自体も、学校によっては大学無償化制度による支援だけでは大きく不足することもあります。そのため、大学無償化制度の対象となっても、必ず子どもの学費としていくらかは用意しておくべきです。
 

大学無償化の対象となっている場合どれくらいの学費を用意しておくべきか

日本政策金融公庫によれば、高校卒業から大学卒業までにかかる費用は国公立大学で783万2000円、私立文系大学で949万7000円、私立理系大学で1109万2000円です。
 
大学によっては給付や減免などの支援を受ける前に入学金などの一部費用の納付を求められることもあるため、大学無償化制度の対象だから1円も学費を用意しないというのは危険です。
 
また、進学先で学業が不振となれば途中で支援が打ち切られることもあります。世帯の状況や進学先の学校、自宅から通うかなど諸状況によっても異なるため一概にはいえませんが、可能であれば進学予定の大学の入学金と初年度の授業料相当の金額くらいは用意をしておくべきでしょう。
 
なお、どうしても用意ができないという場合は、国や銀行の教育ローンや貸与型の奨学金を利用して学費を用意することをおすすめします。
 

大学無償化といえども最低限の学費の用意が必要である

大学無償化とはいっても、必ずしも大学生活でかかる全ての費用が支援されるわけではありません。また、世帯収入によって支援される金額が異なるため、大学無償化制度を利用して進学させる場合でもある程度の学費の準備は必要です。
 
大学無償化制度で子どもを進学させる場合でも進学予定の学校でかかる学費と制度の支援内容から逆算して、支援でカバーできない部分の学費や入学時にかかる入学金程度は何らかの手段で用意をするようにしてください。
 

出典

文部科学省 学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度 授業料等減免額(上限)・給付型奨学金の支給額
文部科学省 高等教育の修学支援新制度 高等教育の修学支援新制度の対象機関リスト(全機関要件確認者の公表情報とりまとめ)
日本政策金融公庫 ニュースリリース 子ども1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は増加 〜令和2年度「教育費負担の実態調査結果」〜
 
執筆者:柘植輝
行政書士