会社員や公務員で厚生年金保険に加入している人は、「4〜6月に残業が多い場合は厚生年金保険料が高くなる」という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。結論からいうと、4〜6月に残業が多い場合、厚生年金保険料は高くなります。ただし、厚生年金保険料が高ければ将来的に受け取れる年金を増やせるので、その分だけ老後資金として備えられます。   本記事では、厚生年金保険の概要をはじめ、厚生年金保険料はどんな仕組みで決まるのか、標準報酬月額や標準賞与額について詳しく解説します。

厚生年金保険とは?

 
厚生年金保険とは、公的年金制度の一つで老齢基礎年金である国民年金に上乗せされて支給される年金です。加入条件は以下のとおりで、老後資金としてより多くの年金を受け取れます。

●厚生年金保険の適用事業所に勤務する会社員・公務員
●70歳未満の人

ただし、非正規雇用であっても「1ヶ月あたりの労働時間が通常の労働者の4分の3未満」で以下に該当すれば、厚生年金保険の加入対象となります。

●勤務時間が週20時間以上
●月収8万8000円以上(年収106万円以上)
●雇用期間が1年以上見込まれる
●学生ではない

 

厚生年金保険の保険料率と計算方法

 
厚生年金保険の保険料額は、以下のように標準報酬月額や標準賞与額に一定の保険料率を掛けて計算します。

●毎月の保険料額:標準報酬月額×保険料率
●賞与の保険料額:標準賞与額×保険料率

厚生年金保険の保険料率は、平成29年9月の引き上げ終了後は18.3%に固定されています。例えば標準報酬月額が30万円の場合、保険料率18.3%を掛けると5万4900円です。しかし、厚生年金保険料は被保険者と企業が半分ずつ負担(労使折半負担)して国に納めるため、実際に給与から天引きされるのは2万7450円となります。
 

厚生年金保険の標準報酬月額と標準賞与額とは?

厚生年金保険の標準報酬月額とは、厚生年金保険料を計算するための基準となる金額です。給与額(役職手当や家族手当、残業手当、通勤手当なども含まれる)に応じて、1等級から32等級までに分けられており、等級に対して標準報酬月額が段階的に定められています。
 
賞与については、標準報酬月額ではなく標準賞与額が対象です。税引き前の賞与額から1000円未満を切り捨てた額で標準賞与額(賞与支給1回につき150万円が上限)が決定し、標準報酬月額と合わせて保険料の額を計算します。
 

4〜6月の残業で将来的に受け取れる年金額を増やせる

厚生年金保険は、少しでも多く保険料を納付したほうが将来的に受け取れる年金額を増やせます。納付した額に応じて受給額が決まる、報酬比例制度を採用しているからです。
 
標準報酬月額は、毎年1回、7月1日に見直されます。その年の4〜6月(各月支払基礎日数17日以上)に支払われた報酬総額を3ヶ月で割った平均額を標準報酬月額に当てはめ、9月から翌年8月まで毎月の保険料額として適用される仕組みです。この標準報酬月額の決定方法を「定時決定」とよび、ほとんどの被保険者が対象となる方法と認識してよいでしょう。
 
なお、この場合の報酬額には基本給のほか、通勤手当、家族手当、通勤手当、家族手当、住宅手当、年4回以上の賞与など、さまざまな手当が含まれています。また、残業手当も標準報酬月額を計算するための報酬に含まれるため、4〜6月に残業が多ければ報酬総額が高くなるのと比例して、厚生年金保険料も高くなります。
 

納めた保険料が多ければ受け取れる年金額も増やせる

厚生年金保険料は4〜6月の給料が基準となり、その年の9月〜翌年8月までの保険料が決まる仕組みです。年度末の繁忙期の給与が支給されるタイミングが4〜5月頃になるため、残業時間が増えて残業手当が高くなりやすい時期かもしれません。
 
そこで、4〜6月の給与額の平均が高くなり、厚生年金保険料も高くなったとしても、将来的に受け取れる年金額が多くなります。「老後資金を少しでも増やしたい」と考えている人は、可能なかぎり残業をするのも方法の一つといえるでしょう。
 

出典

日本年金機構 適用事業所と被保険者
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー