国民年金保険料を本来の納付期間外でも納付できる、追納とよばれる制度があることをご存じでしょうか。年金は納付した保険料によって受給額が変動するため、追納は受給額を増やすための有効な手段となります。   本記事では追納のメリットや注意点をご紹介します。概要を理解したうえで、追納の利用を検討してみましょう。

国民年金における追納とは?

国民年金における追納とは、国民年金保険料の「免除」「納付猶予」「学生納付特例」を受けた期間中に支払う予定だった保険料を後から納付することを指します。
 
国民年金の受給額は、本来納めるべき期間のうち何ヶ月保険料を納めたかによって決定するところ、追納を行えばより多くの月で保険料を納めることが可能になります。
 

追納を行うメリット

追納は義務ではなく、納付者の任意で行うものです。追納を行うとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、追納を行うメリットをご紹介します。
 

年金の受給額が増加する

年金の受給額が増加することは、追納を行う最大のメリットといってもよいでしょう。老齢基礎年金の受取額が決定される際、免除や納付猶予などを利用して年金を納めていない期間があれば、その期間に応じて年金受給額が減額されます。
 
追納を行うことで、免除や猶予を受けていた期間に支払わなかった保険料を納付し、将来の年金受給額を増加させることができます。
 

社会保険料控除に算入して節税できる

追納で支払った保険料は社会保険料控除に算入できるため、当該年度の所得金額を抑えることにつながります。その結果、所得金額を参照して決定する所得税や住民税といった税金が安くなり、節税効果を得られるでしょう。
 
社会保険料控除に算入したい場合には、確定申告もしくは年末調整で手続きを行う必要があるので注意が必要です。
 

金銭的に余裕があるタイミングで納付できる

追納を利用することで、金銭的に余裕があるタイミングで国民年金保険料の納付ができます。家計のやりくりが厳しい、学生で収入が少ないなど金銭的に余裕がないタイミングでは支払いを猶予してもらい、金銭的な余裕が出たら猶予期間の分もまとめて支払う、という選択ができるのは追納を利用する大きなメリットといえるでしょう。
 

追納を行う際の注意点

ここまで紹介したように追納には多数のメリットがあるため、可能であればぜひとも追納を行いたいところです。ここからは、追納を行う際に注意すべき点、確認しておくべき点をご紹介します。
 

対象期間は過去10年以内

追納ができるのは、追納が承認された月から数えて10年以内です。この期間を超えてしまうと追納の対象外となってしまうため、追納を希望する際にはできるかぎり多くの期間分を追納できるよう早目に追納の申請を行いましょう。
 

追納する時期によっては保険料が増額される

追納を行う時期によっては、保険料が増額される場合があります。具体的には、免除や納付猶予を受けた翌年度から数えて3年度目以降に追納を行う場合、当時の保険料よりも割高な保険料を支払うことになります。年数を重ねるごとに追納時の加算額も増えていくので、できるだけ早い段階で追納を行うようにしましょう。
 
【図表1】

通常の保険料 追納時の保険料
(令和5年度に支払う場合)
追納時の加算額
平成25年度 1万5040円 1万5220円 180円
平成26年度 1万5250円 1万5370円 120円
平成27年度 1万5590円 1万5700円 110円
平成28年度 1万6260円 1万6360円 100円
平成29年度 1万6490円 1万6570円 80円
平成30年度 1万6340円 1万6410円 70円
令和元年度 1万6410円 1万6460円 50円
令和2年度 1万6540円 1万6570円 30円
令和3年度 1万6610円 1万6610円 0円
令和4年度 1万6590円 1万6590円 0円

日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」「国民年金保険料の変遷」を基に筆者作成
 

未納の場合には追納できない

保険料未納の場合には、追納を行うことができないので注意が必要です。追納は手続きを踏んだうえで免除や猶予制度を認められた場合のみ利用できる制度であり、手続きをせずに単に支払いを怠って未納となった場合には利用できません。
 
既定の納付期限から2年が経過すると未納となってしまうため、追納を考えている方は保険料の支払いが滞る場合にも、免除や猶予を受けるための手続きを行うようにしましょう。
 

追納をうまく使って年金受給額を増やそう!

本記事では、追納のメリットや注意点を紹介しました。免除や猶予期間を認められていることが条件となる追納制度ですが、うまく使えば年金制度をより便利かつお得に利用できる制度となっています。
 
追納を利用できる状況にある方は、ぜひ積極的に追納を利用してみてはいかがでしょうか。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー