離婚したAさん(女性・36歳)は10歳の子1人・Bさんを連れて、Cさんと再婚しました。ところが、再婚相手の夫・Cさんが病気で亡くなりました。Cさんは会社員で、そのCさんが亡くなった当時、AさんもBさんも、Cさんにより生計を維持されていました。   AさんとCさんとの間に子はいません。遺族年金は支給されるのでしょうか?

遺族年金の対象遺族である子は実子か養子

遺族年金には、定額で支給される「遺族基礎年金」と、報酬比例で支給される「遺族厚生年金」があります。亡くなった人が必要な要件(保険料納付要件など)を満たしている場合、死亡当時、生計を維持されていた遺族は、遺族基礎年金や遺族厚生年金の対象となります。
 
その遺族とは、遺族基礎年金の場合は子のある配偶者、あるいは子、遺族厚生年金の場合は配偶者、子、父母、孫、祖父母です(図表1)。遺族基礎年金も遺族厚生年金も、遺族の優先順位として最も高いのは子のある配偶者となります。
 

 
遺族のうち、子とは18歳年度末までの子、あるいは一定の障害のある20歳未満の子を指します。遺族基礎年金は、子のある配偶者か子が対象遺族ですので、そもそもこういった子がいない場合は支給されません。
 
一方、遺族厚生年金は子がいることは必須条件ではなく、子のいない配偶者でも対象です。
 
そして、子は亡くなった人の実子または養子を指しています。夫が亡くなった場合は、その夫からみての実子、あるいは養子となります。
 
つまり、今回のようにAさんが子連れで再婚した場合、BさんはCさんからみての実子でないため、BさんとCさんが養子縁組をしていたかどうかで年金の受給が変わります。
  

養子縁組していた場合

Cさんの生前に養子縁組をしていた場合は、Cさんの死亡当時、Bさんは生計を維持されていた子となり、子のある配偶者となるAさんは遺族基礎年金を受給できます。
 
また、遺族厚生年金については、子(Bさん)も対象遺族に含まれますが、子のある配偶者(Aさん)が優先して遺族厚生年金を受給します(図表1)。そのため、死亡当時の妻であったAさんが遺族基礎年金、遺族厚生年金の2階建てで受給します。
 

養子縁組していなかった場合

一方、養子縁組をしていないと、Bさんは亡くなったCさんからみての「子」ではありません。Bさんは遺族基礎年金の対象となる遺族ではなく、Aさんも子のある配偶者になりません。そのため、遺族基礎年金は受給できません。
 
これに対し、遺族厚生年金については、子がいることが必ずしも条件ではないことから、Aさんは2階部分・遺族厚生年金のみ受給できます(図表2)。
 

 

養子縁組の有無で変わること

このように年金制度上、子がいるかどうかで、受給できる年金の種類や年金の受給額に差が生じることになります。
 
今回は、子連れ再婚後に養子縁組をしていれば遺族年金が支給されるケースでしたが、年金制度上、養子縁組をしたことにより、支給されていた遺族年金が支給されなくなるルールも存在しています。
 
もちろん、養子縁組の有無によって、支給対象となるかどうかが変わる制度は年金以外にもあり、年金のことだけで養子縁組をするかどうか決められるものでもありません。
 
養子縁組を考える際、まずは養子縁組をすることで受けられること、受けられなくなることを整理する必要があるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー