超高齢社会の日本において、介護職は必要不可欠な職種です。とはいえ、介護職は重労働な割に、他業種と比べ給与水準が低いため、進んで就職する人が少なく慢性的な人材不足が生じ、定着率が低いことが課題です。   こうした状況を改善するため、政府は2009年から介護職の昇給を推進してきました。ここでは、2022年2月から行われている昇給の内容や今後の見通しを紹介します。

2022年2月からの介護職の賃上げとはどういう内容なの?

2022年に実施された介護職の処遇改善は、大きく分けて同年2月から9月まで実施された「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」と同年10月以降実施されている「介護職員等ベースアップ等支援加算」になります。これらはいずれも国費を財源としており、介護職員1人当たり給料3%分に相当する、月額9000円のベースアップの実現を目的にしています。
 
両制度とも要件や対象職種はほぼ同じですが、交付金で補っていた金額を10月からは介護報酬に組み込むよう制度が変更されました。
 
この交付金は「福祉・介護職員処遇改善加算(1)(2)(3)のいずれかを取得していること」「2022年2月から実際に賃上げを実施していること」「交付金全額を賃金改善に充当、かつ賃金改善合計額の3分の2以上をベースアップ等に充当していること」の要件を満たす事業所を対象にしています。
 
厚生労働省が公表した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、全体として94.1%の事業所が介護職員処遇改善加算を取得しているため、介護職に携わる多くの方が賃上げの対象になるのです。
 

賃上げの対象者や具体的な昇給金額はどの程度?

賃上げの対象者は、上記の事業所に勤務する介護職員で、正職員のほか、パートやアルバイトも含まれます。ただし、今回はデイサービス施設や入所施設で実際に介護を行うものが対象で、地域包括支援センターや訪問リハビリテーション施設は対象ではありません。
 
また、実際に介護を行わないケアマネージャー、管理栄養士や事務職員などは賃上げ対象から外れていますが、事業所がこれらの職員の処遇改善に配慮することも認めています。具体的な昇給金額は、職員1人当たり月額9000円です。
 
実際の交付金は、厚生労働省が定める基準に沿って、要介護者1人に対して最低の職員配置を基準に算出しています。このため、基準より職員を多く配置している事業所では、1人当たりの支給金額は減少してしまうのです。また、実際の介護を行わない職員も処遇改善の対象に加えた場合も、支給金額は減少することになります。
 

今後の昇給の見込みはどうなの?

政府の政策により常勤の介護職員の月給が実際にどの程度増えているのか、厚生労働省が公表している資料でみてみましょう。「平成21年度介護従事者処遇状況等調査」と「令和3年度介護従事者処遇状況等調査」から平成21年9月と令和3年9月の月給が分かります。
 
それによりますと前者が25万7880円で、後者が32万3190円になっており、12年で6万5310円ほど昇給しているのです。諸物価の高騰も進むなか、政府も、また厚生労働省の審議会においても、介護職員の継続的な処遇改善に触れているので、今後も物価水準や他業種の給与水準をみながら昇給は続いていく見通しです。
 

資格を取りキャリアアップしてさらなる給料アップを目指そう

国が介護職の処遇改善に向けて、今後も取り組むのは好ましいことです。そのほか、職員がさらなる給料アップを目指すこともできます。介護支援専門員や社会福祉士などの資格は、取得することで給料が高くなるので、これらの資格を取る方法や、介護主任など役職手当の取得を目指す方法があります。
 
さらに、施設によって給与水準も異なるので、キャリアアップを図ることができる条件の良い施設に転職する選択肢も検討してみましょう。
 

出典

厚生労働省 介護職員の処遇改善

厚生労働省 「介護職員処遇改善加算」のご案内

厚生労働省 令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果

厚生労働省 平成21年度介護従事者処遇状況等調査

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー