築古の賃貸物件にありがちな設備の補修。何をどこまで直してもらえるのかについては、オーナーと管理会社の裁量によって決められています。となると対応項目が物件ごとに違うということもありえます。   本記事では賃貸物件を借りた3回の経験から、設備の補修対応の違いやサービスの良い管理会社の見分け方についてお伝えします。

自己負担項目で補修しなければいけない項目とは

「トイレの便器がガタガタしているので直してください」
 
先日、入居中のアパートの管理会社に修理依頼の電話をしました。備え付けの設備なのだから、当然直してもらえるはずだと思ったのです。
 
しかし、回答はすげなく「ご自分で業者に修理を依頼してください。そういう契約になっています」と。便器のどの箇所に不具合が起きているかの確認もありませんでした。
 
図表1


入居中の物件の賃貸借契約書より抜粋
 
驚いて賃貸借契約書を見直しましたが、図表1にあるように便器について自己負担になっているのは、トイレ詰まり等軽微な故障の点検・清掃・調整のみ。まさか便器そのものの不具合も自己負担と言われるとは思いもしませんでした。
 
この物件では以前、以下の小修繕を依頼し対応してもらっています。


・窓が開閉できない
・浴室と風呂場の敷居部分がはがれている

いずれも管理会社の担当社員が訪れ、窓のはめ直しや敷居紙の貼り直しをしてくれました。そのため、今回も対応してもらえると思っていましたが、以前と担当者が変わっていたので、修繕を受けてくれたのが担当者の裁量だったのかもしれません。
 
「経年劣化による不具合だから貸主負担で直してください」と訴えることも可能ですが、今回は「運悪くサービスの悪い管理会社に当たってしまったな」という感想です。
 

サービスの良い管理会社もある

一方で、良心的な会社に当たったことがあります。その管理会社は修繕のための業者を雇っており、どんな小さなことでも依頼すると当日か遅くても翌日には業者が来てくれました。
 
実際に直してもらったのは以下の項目です。


・インターホンの不良
・敷居のささくれ
・画びょうの穴

インターホンは設備なので直してもらえるのは納得です。しかし敷居から木片がささくれのようにとがっているのは、掃除機をかけたことによるものと判断されても仕方ないですが、快く直してもらえて驚きました。もちろん無料です。
 
おまけに、ちょっとした壁紙のはがれも直してくれました。本来は入居者の過失によるものは直してもらえないはずなのですが。何より「電話すればすぐに見てもらえる」という安心感は非常にありがたいものでした。
 

対応は管理会社によって違う

筆者は今まで3件の賃貸物件に住んできましたが、会社ごとに修繕の対応は異なりました。


A社:修繕依頼せず
B社:何を依頼してもすぐに修繕業者が見に来てくれる。軽微な修繕は無料
C社:来るのは管理会社社員、修繕はほぼ自己負担

A社では初めての賃貸入居だったので、何を依頼すればいいのか分からず全て自分で修繕。思えばもったいないことをしました。B社は前述の「サービスの良い管理会社」。C社はトイレの修繕を断られた業者です。
 
残念ながらA社、B社の賃貸借契約書が残っておらずどんな契約だったか見直すことができないのですが、少なくともB社で契約を理由に修繕依頼を断られたことはありません。
 

民法では細かな修繕項目は決められていない

一般的な賃貸物件で、付属設備が破損した場合の費用負担は以下の対応になっています。


・入居者の故意や過失で破損させた場合:入居者負担
・災害などで設備が破損した場合:管理者負担

民法では賃貸人と賃借人の立場を条文化していますが、細かな項目までは記載していません。
 
だからこそ「住宅賃貸借契約書」と「重要事項説明」が大事になってきます。オーナーの中には、資力が乏しく老朽化した建物の修繕費負担を賃借人に負わせたいと考える人もいます。
 

サービスの良い管理会社を見つけるには

住宅賃貸契約書は、契約時にしか見る機会がないことが多いので、サービスの良い管理会社を見つけるのは難しいことです。それでも対策を立てるとするなら以下の方法があります。


・下見の際に、修繕の範囲と使っている業者を確認する
・契約前に口コミサイトを見る
・契約書をよく読んで修繕の事例を尋ねる

住んでから「こんなはずではなかった」ということのないよう、契約前に修繕について確認しておくことをおすすめします。
 
執筆者:大月智美
漢検2級、ビジネス実務マナー検定3級、秘書技能検定2級、ビジネス文書技能検定2級、色彩士検定3級