奨学金を借りることを考えている高校生の中には「返済不要の奨学金を利用したい」と希望する方も少なくないようです。しかし、返済不要の奨学金には学力要件が課せられています。   そこで、学力が不安な方に向け、返済不要の奨学金の支給を受けるための要件について日本学生支援機構の例をもとに確認していきます。

返済不要の奨学金には学力要件がある

返済不要の奨学金には学力要件が設けられています。具体的には、日本学生支援機構の実施する返済不要の奨学金の場合、進学前の予約採用においては下記のうちいずれかを満たすことという学力要件が設定されています。

・高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること
・将来、社会で自立し、および活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること

 
このうち、学習意欲についての判断は、学校において面談やレポートの提出などを通じて判断されます。そのため、必ずしも世間一般で言う、学力の高く「頭がいい」と言われる学生しか返済不要の奨学金を受けられないわけではありません。つまり、「あまり頭がよくない」と学力に不安のある学生も、返済不要の奨学金を受けられる可能性がないわけではないのです。
 
ただし、5段階評価で3.5以上の条件を満たしている生徒と並べるような意欲を面談などで示して認められる必要があります。それを考えると、返済不要の奨学金を受けるハードルは高いものだと言えます。
 

学力要件以外にも家計の収入要件もある

返済不要の奨学金の場合、気にすべきは自身の学力だけではありません。家計の収入要件も重要になってきます。給付型奨学金には厳格な家計の収入要件が定められているからです。
 
【図表】


 
出典:独立行政法人日本学生支援機構 進学前(予約採用)の給付奨学金の家計基準
 
目安として、一般的な4人家族であれば、年収378万円が所得の上限となります。学力要件もそうですが、収入要件によって返済不要の奨学金を受けられないことも珍しくはありません。学力要件とあわせて収入要件についても確認しておくようにしてください。
 

貸与型の奨学金もあわせて検討したい

返済不要の給付型奨学金は受け取るまでに一定のハードルがあり、誰でも簡単に受給できるわけではありません。現実的に考えると貸与型の奨学金も検討していくことになります。
 
貸与型の奨学金には、第一種と第二種とがあります。第一種は無利子、第二種は有利子となります。特に第二種奨学金であれば、「進学先の学校における学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる者」といったように、比較的緩やかな基準が設けられています。
 
また、仮に返済不要の奨学金を借りられたとしても、国立大学に自宅から通う場合は基本的に月額2万9200円、私立大学でも3万8300円が上限となり、奨学金だけで大学に通うことは困難です。それに対して貸与型の第二種奨学金であれば、月額で最大12万円借り受けることができます。
 
給付に至るまでのハードル、そして給付される金額について考えると、奨学金を利用して進学を希望する場合は、返済不要の給付型奨学金だけではなく、貸与型の奨学金についてもあわせて検討をしておくべきでしょう。
 
ただし、貸与型の奨学金は卒業後返済が必要になるという点を踏まえ、返済可能な範囲で利用する必要があります。
 

まとめ

返済不要のいわゆる給付型奨学金は、給付に一定以上の学力を求められることになります。しかし、面談などそれに代わる方法で学習意欲を認められることができれば学力に不安のある学生でも奨学金の給付を受けられることもあります。
 
とは言え、給付型の奨学金は基準が厳格であり、かつ、人によっては給付金額も必要十分でない可能性があります。奨学金を利用して進学を考えているのであれば、返済不要の給付型奨学金だけではなく貸与型の奨学金についても検討してみてください。
 

出典

独立行政法人日本学生支援機構 進学前(予約採用)の給付奨学金の家計基準
 
執筆者:柘植輝
行政書士