2023年現在、公的年金は原則65歳から支給されます。ただし、経済状況などにより年金の支給タイミングを65歳より前に繰り上げたり、65歳よりも後にしたりすることも可能です。 ただし、年金の支給を前倒しにすると、もらえる年金額が減額されてしまいます。また、一度変更したらあとから再変更することはできません。「ちょっと生活が苦しそうだから……」と安易に決めると失敗のもとになるので、注意する必要があります。   本記事では、繰上げ受給した場合の減額率や受給開始のタイミングによる受給額の違いを解説します。

年金の繰上げ受給はどれだけ減額される?

年金の受給タイミングを繰り上げる場合、年金を請求した時期(前倒しした期間)に応じて年金が減額され、その後、減額率は変わることはありません。
 
図表1の通り、1962年4月2日以降生まれの場合、繰上げ支給すると毎月0.4%ずつ減額率が加算されていきます。そのため、1年間で4.8%、60歳になった時点で年金支給の請求をした場合、65歳で受給開始するよりも24%減額されます。
 
一方、受給タイミングを繰り下げる場合は毎月0.7%増加します。75歳まで受給タイミングを繰り下げられるため、最大で84%受給額を増やせます。
 
厳密には年齢などによって減額率や繰下げ年齢の限度は変わるので、詳細は日本年金機構の情報を確認するようにしましょう。
 
図表1
 

 
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 年金の繰下げ受給より筆者作成
 

実際にどれだけ変わるかシミュレーションしよう

厚生労働省の発表によると、2021年度の厚生年金保険(第1号)受給者平均年金月額は約14万5000円でした。
 
一般的な会社員の人が受け取れる年金額を月14万5000円(年間174万円)として、年金を60歳に繰上げ受給した場合と、70歳まで繰下げ受給した場合の総支給額を図表2でシミュレーションして比較します。
 
図表2
 

 
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 年金の繰下げ受給より筆者作成
 
図表2から、年金の総受取額が逆転するのは80歳を超えたあたりということが分かります。厚生労働省の情報によると、男性の平均寿命はおよそ81歳、女性はおよそ88歳ということです。この数字だとどちらでもそれほど変わらないと思うかもしれませんが、平均寿命は年々のびてきていますので、長生きするのがリスクにつながることは避けたいですね。
 

安易な繰上げ受給は老後破綻のもとになる

高年齢者雇用安定法の改正などにより、60歳以降も働きやすい環境が整いつつあります。社会とのつながりを続ける意味でも無理のない範囲で働き続けるのは良い選択といえます。それだけでなく、年金受給を遅らせることが可能になるので、単純に給与収入を受け取る以上のメリットがありそうです。
 
60歳は1つの区切りの年齢と考える人も多いと思います。それまで長い間働いてきた人の中にはこれから働かずに年金で生活していこうと計画している人もいるかもしれません。
 
ただし、年金の繰上げ受給は残りの人生の長さによっては総受給額を減少させてしまう要因になります。老後は医療費が増えるなど今よりも出費が増える可能性もありますので、年金の繰上げ受給を慎重に検討しないと、老後破産の原因となってしまうかもしれません。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給

日本年金機構 年金の繰下げ受給

厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況

厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正〜70歳までの就業機会確保〜

厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

 
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級