退職時に企業から退職金を受け取ることがあります。退職金は、会社員として働いてきた人の、特に老後に向けての資産形成に非常に重要な役割を果たします。   しかし、他の人や企業の退職金についての詳細を知らない人も多いでしょう。今回は、退職金「1200万円」が平均と比較して高いか低いかを、勤続年数や学歴、企業規模などの観点から考えます。

退職金制度は8割以上の企業が実施

企業のすべてが退職金制度を取り入れているわけではありません。厚生労働省による「平成30年就労条件総合調査の概況」によると、形態にかかわらず退職給付制度を設けている企業は、全体の80.5%です。
 
企業規模が大きいほど、同制度の導入割合が高くなる傾向があります。「受け取れるだけありがたい」という感覚は視点や状況によって変わりそうです。中小零細企業に勤めている人は、こうした感覚がより大きくなるでしょう。
 
しかし、退職金を受け取っている人は多数派であるといえるため、受け取って当たり前という感覚を抱く人がいても、決して不思議ではありません。
 

大卒の平均退職金額は約2000万円


厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査の概況」では、勤続年数20年以上かつ45歳以上の退職者1人あたりの平均退職給付額も公表されています。
 
これによると、平成29年の退職者で、さらに大学・大学院卒と限定した場合、定年による退職者1人あたりの平均退職給付額は1983万円です。高校卒のうち管理・事務・技術職の人は1618万円、高校卒のうち現業職の人は1159万円となっています。
 
給付額は、退職事由によっても異なります。例えば、会社都合の場合、大学・大学院卒の平均退職給付額は2156万円、高校卒(管理・事務・技術職)は1969万円、高校卒(現業職)は1118万円です。やはり、会社都合では退職金額が平均と比べて多くなる傾向がみられます。
 
反対に、自己都合での退職は他の事由と比較して低い傾向がみられます。大学・大学院卒は1519万円、高校卒(管理・事務・技術職)は1079万円、高校卒(現業職)は686万円です。
 
・勤続年数によっても変わる退職金額
勤続年数が20〜24年の人の平均退職給付額は、大学・大学院卒で1267万円、高校卒(管理・事務・技術職)で525万円、高校卒(現業職)で421万円です。同じく25〜29年では、大学・大学院卒が1395万円、高校卒(管理・事務・技術職)が745万円、高校卒(現業職)が610万円となっています。
 
30〜34年では、大学・大学院卒で1794万円、高校卒(管理・事務・技術職)で928万円、高校卒(現業職)で814万円です。35年以上勤務すると、大学・大学院卒で2173万円と、全体の平均を上回ります。高校卒(管理・事務・技術職)でも1954万円、高校卒(現業職)では1629万円が平均で受け取れるようです。
 
・規模の大きい企業ほど退職金額も多い
「平成25年就労条件総合調査」では、企業規模ごとの退職金給付額も公表されています。これによると、1000人以上の規模を持つ企業では、形態により差はあるものの、大学卒であれば1764〜2525万円が受け取れたようです。同規模の企業で高校卒(管理・事務・技術職)であれば1645〜2286万円、高校卒(現業職)では1243〜1733万円となっています。
 
300〜999人の企業では、大学卒で1338〜2074万円、高校卒(管理・事務・技術職)で1013〜1978万円、高校卒(現業職)で809〜1348万円です。100〜299人の企業では、大学卒で1147〜1635万円、高校卒(管理・事務・技術職)で871〜1447万円、高校卒(現業職)で721〜1532万円となっています。
 
30〜99人の企業では、大学卒で919〜2343万円、高校卒(管理・事務・技術職)で786〜1713万円、高校卒(現業職)は退職一時金制度のみのデータで527万円です。
 

学歴や勤続年数などによって大きく異なる退職金額

退職金制度は約8割の企業が取り入れていますが、退職金額は学歴や企業規模、勤続年数などにより大幅に異なります。「受け取れるだけありがたい」といった感情は正しいものといえそうです。
 
しかし、勤続年数が20年以上の大卒者は平均で約2000万円の退職金を受け取っています。高卒者でも管理・事務・技術職であれば約1600万円です。1200万円の退職金は、平均よりは低いといえるでしょう。
 

出典

厚生労働省 平成30年就労条件総合調査の概況
厚生労働省 平成25年就労条件総合調査の概況:結果の概要(5 退職給付(一時金・年金)の支給実態)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー