工場で働く場合、雇用形態によって年収や待遇に大きな違いがあります。それでは、正社員と派遣社員で待遇にどのような差があるのでしょうか。また、どちらのほうが仕事がしやすいのでしょうか。この記事では、平均年収の違いなどを交えながら、正社員と派遣社員の待遇の違いをくわしく解説します。また、派遣社員を選ぶメリットについても説明します。

正社員は収入が安定

厚生労働省が公表している「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」によると、製造業の正社員の1ヵ月あたりの平均賃金は31万4500円でした。このうち、男性の平均が33万4500円、女性が24万4400円でした。同じ正社員でも男性と女性で賃金に差がある理由の一つに、男性は女性よりも平均勤続年数が長いことが挙げられます。仕事内容から、出産・育児などで仕事を辞めざるを得ない女性がいるというのもあるでしょう。
 
また、国税庁の「令和3年分(2021年分)民間給与実態統計調査」によると、製造業(1年を通じて勤務した給与所得者)の平均年収は516万3000円で、このうち給料・手当の合計が421万4000円、賞与が94万9000円でした。男女別にみると、男性の平均年収が592万8000円、女性の平均年収が317万1000円でした。
 
なお、製造業でも企業規模によって平均年収が変わってきます。資本金が2000万円未満の株式会社だと平均年収が357万7000円でしたが、資本金が10億円以上の株式会社だと671万1000円と、大きな差がありました。なお、製造業は学歴を問わず仕事を始めやすい業種ですが、大手企業となると理系の大学や大学院を卒業した人のほうが、新卒での就職に有利です。
 

派遣社員は年収が240万円ほど

それでは派遣社員の年収はどのぐらいでしょうか。「賃金構造基本統計調査」によると、正社員・正職員以外の1ヵ月あたりの平均賃金は21万1500円と、正社員の67.2%にとどまりました。男女別にみると、男性が23万9900円、女性が18万1700円です。これは派遣社員以外の非正規雇用の数字を含んでいますが、派遣社員が1ヵ月にもらう給与はこの金額に近いでしょう。求人サイトによると、ライン作業(工場)を行う派遣社員の平均時給は1249円で、仮に1ヵ月160時間働いた場合、19万9840円となります。地域別にみると、東海4県(静岡県・愛知県・岐阜県・三重県)の平均時給が最も高く、関東、関西(三重県を除く)が続きました。
 
正社員と派遣社員の待遇で最も違うのは、賞与の有無です。派遣社員の場合、賞与はないのが一般的です。時給1249円で1ヵ月に160時間、12ヵ月働いた場合の年収は239万8080円となり、正社員の平均の半分以下となります。また、工場の近くの駅から送迎バスが走っていることもありますが、正社員は最寄り駅までの交通費(通勤手当)が出るのに対し、派遣社員は交通費が出ません。さらに、派遣社員の場合、休みが多い月はもらえる給料が少なくなってしまいます。
 
期間限定で働きたい場合やほかにやりたいことがある場合などは、正社員ではなく派遣社員のほうが仕事がしやすくなります。未経験で仕事に就く場合や、ブランクを経て仕事をする場合にも、派遣元がサポートをしてくれるので、仕事に就くまでのハードルは下がります。もちろん、派遣社員として働きながら経験を積んだり資格を取ったりすれば、よりよい条件で働くことにつながるかもしれません。
 

正社員と派遣社員で年収に大きな差

工場で働く正社員と派遣社員を比べると、正社員のほうが収入が安定していて、平均年収でも大きな差があることが分かります。一方、派遣社員などの非正規雇用は、副業や自分がやりたいことと両立しやすいですし、未経験やブランクがある場合でも仕事に就きやすくなります。派遣社員でも資格をとるなどスキルを身につけることで、正社員への転職も見えてくるかもしれません。
 

出典

国税庁 令和3年分民間給与実態統計調査

国税庁 令和3年分民間給与実態統計調査 第2表 給与所得者数・給与額・源泉徴収義務者数

国税庁 令和3年分民間給与実態統計調査 第7表 企業規模別及び給与階級別の給与所得者数・給与額(合計)

国税庁 令和3年分民間給与実態統計調査 第9表 業種別及び給与階級別の給与所得者数・給与額(続)

厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況

厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況 第5表 産業、性、年齢階級別賃金及び対前年増減率

厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況 第6-1表 雇用形態、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び雇用形態間賃金格差

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー