「年金を受ける権利」には時効があるということを知らない人も多いかもしれません。年金を請求せずに放置していると、所定の期間が過ぎたら時効になってしまいます。   本記事では、年金の時効について、具体的な事例も紹介しながら解説しています。

年金の時効とは

年金を受給するためには、年金の受給権を持った人が、年金請求書に必要事項を記入し、提出しなければなりません。そして、年金受給の請求をしないまま5年が経過すると、それ以前の年金についてはさかのぼって受け取ることはできなくなります。
 
ただし、やむを得ない事情があり、時効完成前に請求ができなかった場合、その理由を書面で申し立てることにより、時効とならない仕組みもあります。
 

年金の時効となる具体例

例えば、65歳から年金として年額60万円もらう権利があるものの、年金の請求手続きをしない場合、どうなるのでしょうか。
 
この場合、仮に72歳で退職をしてから、過去の分も含めてもらおうとしても、〜65〜67歳までの2年分は時効でもらうことはできません。つまり、100万円以上損してしまったとも言えます。
 

いつまでに手続きすれば時効にならないのか

年金は受け取る権利が発生した月の翌月分からもらえます。例えば、令和5年7月にもらえる権利が発生した場合、8月分から受給可能です。そして、年金は後払いのため、10月に8月と9月分が支払われます。
 
この8月分と9月分を時効で消滅させないためには、いつまでに請求すればよいのでしょうか。時効の起算日は、年金支払月の翌月の初日ですので、令和5年11月1日に時効の起算がスタートします。つまり、ここから5年後の令和10年10月31日が時効の満了日です。
 
よって、令和5年8月分、9月分は令和10年10月31日までに手続きすれば、時効とはなりません。
 

繰下げ受給の注意点とは?

年金の繰下げと時効を勘違いして、時効によって損をしてしまう場合があります。年金の繰下げとは、原則65歳からもらう年金を66歳以降に遅らせることで、毎月受け取る年金額を増やすことです。
 
繰下げはあくまでも65歳以降にもらえる年金を増やす行為ですが、時効で受け取れなくなってしまった年金については、繰り下げの増額が適用されません。
 
また、65歳よりも前にもらえる特別支給の老齢厚生年金についても、受け取りを遅らせると受給額が増えると考える人もいるかもしれませんが、特別支給の老齢厚生年金については、繰下げ支給制度が適用されないことを覚えておきましょう。
 

まとめ

年金の受給資格があっても、時効になってしまうと年金を受け取れません。
 
ただし、手続きをすれば時効にならない場合もあるので、年金制度をしっかりと理解し、必要なタイミングで請求するようにしましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の時効
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー