査定額30万円の宝飾品の売却に税金はかかる?
家族の遺品整理で見つかった宝飾品などを売却すると、税法上「譲渡」という扱いになります。宝飾品を買取店やリサイクルショップなどに売却して得た利益は譲渡所得に該当し、総合課税の対象になる可能性があります。
譲渡所得のなかでも宝飾品は、「その他の資産」に分類されます。国税庁では、譲渡所得の対象となる資産を「貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得」と定めています。つまり、譲り受けた宝飾品の買取査定額が30万円を超える場合、売却すると税金がかかるのです。
ただし、1個または1組が30万円を超えるものが対象であり、例えば1個が20万円の宝飾品を3個売却しても、税金はかかりません。
譲渡所得の計算方法
遺品整理で見つかった宝飾品を1個または1組30万円超で売却した場合、給与などの所得と合算されて税金がかかります。しかし、売却額がそのまま譲渡所得額とはなりません。特別控除などもあり、税金がかからないケースもあります。課税対象になる譲渡所得は、次の2段階で計算します。
1.譲渡益の計算
2.譲渡所得の計算
以下で、それぞれについて解説します。
譲渡益の計算
遺品の宝飾品を売却する際の譲渡所得を算出するためには、まず譲渡によって得た利益を計算します。宝飾品の売却代金から、購入代金や必要経費などを差し引いた金額が譲渡益です。譲り受けた宝飾品の場合は、故人しか購入金額が分からないというケースが少なくありません。宝飾品の取得費が不明なときは、売却代金の5%相当額を取得費とします。
宝飾品を1個35万円で売却したときの、譲渡益の計算式は次のとおりです。
35万円−35万円×5%=33万2500円
33万2500円が譲渡益になります。
譲渡所得の計算
遺品の宝飾品を売却した譲渡益の合計から、特別控除額を差し引いた金額が課税対象額です。譲渡所得は、資産を取得してから譲渡するまでの期間によって短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれます。所有期間が5年以内のものが短期譲渡所得、5年を超えるものが長期譲渡所得です。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の譲渡益の合計から、最高で年間50万円が特別控除されます。譲渡益が50万円以下の場合は、譲渡益額が特別控除額になります。さらに長期譲渡所得では、特別控除後の金額の2分の1が課税対象です。
遺品の宝飾品の譲渡益が35万円で、譲り受けてから5年以内に売却したときの譲渡所得の計算式は次のとおりです。
35万円−35万円(特別控除)=0円
売却額が譲渡所得の対象となる30万円を超えるものであっても、特別控除の範囲内であれば、実質税金はかからないのです。
遺品を売却するときの注意点
遺品を売却するときに注意したいのは、相続における分割協議が決まっているものかどうかの確認です。遺品整理を手伝い、高価な宝飾品があれば形見分けとしていただくにしても、他の親族とのトラブルにもなりかねません。故人の意思や相続の有無などを把握したうえで、親族たちと話し合い、譲り受けましょう。
また、故人に債務などがあって、相続放棄を選択した場合、たとえ1個の宝飾品であっても相続できません。逆に遺品を売却したことで、相続の意思があるとみなされるリスクもあります。
遺品を売却する際には税金に注意!
遺品整理で見つかった宝飾品が1個または1組が30万円を超える価値がある場合、売却すれば税金がかかります。特別控除などの措置があるものの、所有期間や宝飾品の量、売却金額によって課される税金の額は異なります。遺品を売却する際には、税務署などの専門機関に問い合わせるのもよいでしょう。
出典
国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
国税庁 No.3258 取得費が分からないとき
国税庁 No.1460 譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー