老後は年金だけでは足りない?
老後に十分な資金が必要といわれる理由は、社会保障給付費(年金を含む)だけでは、収入が不足してしまうためです。
総務省統計局の家計調査(2022年)で発表された、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における、家計収支を見てみましょう。
1ヶ月あたりの社会保障給付額(年金を含む)は22万418円であり、そのほかの収入を合わせて、実収入は24万6237円です。
対して支出は、生活するうえで必要な消費支出が23万6696万円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万1812円であり、合計すると26万8508円です。
実収入から支出を差し引くと、2万2271円不足することが分かります。
この不足分を、自分たちの資金から補わなければなりません。
仮に老後生活を30年間として計算すると、約800万円の資金が必要となります。
年金は人によってもらえる金額が異なるため、この不足分には個人差があるでしょう。
老後は本当に2000万円以上必要なのか
不足分の金額は、受け取る年金やライフスタイルによっても、大きな差が出ます。
さらに、医療費や介護費が追加でかかることを考えると、800万円よりも余裕のある資金が必要といえます。
医療費と介護費の平均データを見てみましょう。
【医療費】
厚生労働省の調べによると、令和2年度の一人あたりの国民医療費は、65歳以上で年間73万3700円となっています。
老後30年間で計算すると、約2200万円かかり、3割負担として考えると660万円必要だといえます。
しかし、年齢が上がるにつれて、医療費の自己負担分は減少(70歳からで2割負担、75歳から1割負担 ※現役並み所得者を除く)し、さらに高額療養費制度が活用できることもあって、もう少し負担は減るかもしれません。
【介護費】
生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、月々の介護費用は平均8万3000円、介護期間の平均は61.1ヶ月とのデータがあります。
そのほかにも、住宅改造や介護用ベッドの購入などに、平均74万円がかかっているとのこと。
仮に5年間介護が必要になった場合は、498万円(8万3000円×12ヶ月×5年)+74万円で、572万円かかる計算になります。
介護費に関しても、介護保険制度を活用することで、負担額は抑えられることもあります。
上記の医療費と介護費を合計すると、660万円(30年間分の医療費)+572万円(5年分の介護費)で、1232万円になります。
これに、先述の生活費の不足分800万円を足すと、2032万円となります。
老後に2000万円以上が必要といわれる理由は、ここにあります。
老後資金は余裕を持って準備しよう
今回の結果より、万が一のことを考えると、老後資金は2000万円以上あると安心できることが分かりました。
特に年齢が上がるにつれて、医療費や介護費の負担は増える可能性があるため、年金だけでまかなうことは難しいでしょう。
十分な老後資金を用意するには、早めに準備を始めることが大切です。
資金は多いに越したことはありませんが、貯蓄や資産運用をするうえでの、ひとつの目安として参考にしてください。
出典
厚生労働省 令和2(2020)年度 国民医療費の概況(6ページ 表5 年齢階級別国民医療費)
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要(18ページ 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 −2022年−)
公益財団法人 生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査(170・173・174ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー