遺族年金とは?
遺族年金は、現役世代の被保険者が亡くなった場合にその遺族に対して給付するものと、年金を受給している人が亡くなった場合にその遺族に対して給付するものという2つの性格があります。また、遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、亡くなった人の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。
本事例では、年金を受給している夫が亡くなった場合に60歳の妻に支給される遺族厚生年金について説明します。
遺族厚生年金の年金額は「亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」の金額となっています。また、40歳以上65歳未満の妻で以下の要件を満たすと「中高齢寡婦加算」として年額59万6300円が支給されます。
●夫が亡くなった際に40歳以上65歳未満の妻で生計を同じにしている子がいない場合
●遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた妻が遺族基礎年金を受給できなくなった場合
これら2つの要件を満たすことで遺族厚生年金とは別に中高齢寡婦加算が支給されるので、遺族年金の合計額は大きくなります。しかし、中高齢寡婦加算は65歳になると支給が停止するので注意してください。
月15万円の年金を受け取っていた夫が亡くなった場合
月15万円の年金を受け取っていた夫が亡くなると、妻が受給できる年金額はいくらになるのでしょうか?
この場合の遺族厚生年金を計算するためには亡くなった人の老齢厚生年金の金額を知る必要があります。月15万円の年金を受け取っていた場合、老齢厚生年金と老齢基礎年金の2つを受け取っていたと考えられます。令和5年4月からの年金額は、老齢基礎年金を満額受け取った場合月に6万6250円です。そのため、老齢厚生年金は8万3750円になります。
この老齢厚生年金は報酬比例部分、経過的加算、加給年金で構成されていますが、ここでは便宜的に報酬比例部分のみを考えます。8万3750円の4分の3が遺族厚生年金の年金額になるので、6万2813円(小数点以下四捨五入)です。年額は75万3756円となります。
さらに本事例では、中高齢寡婦加算も受け取れるので年額59万6300円が加算されます。合計額は135万56円です。
妻が65歳以上になると遺族年金は減ってしまう?
年額で135万56円を受け取れる60歳の妻ですが、65歳になると遺族年金は減ってしまいます。中高齢寡婦加算は65歳未満の妻が対象だからです。そのため、65歳になると中高齢寡婦加算の給付がなくなるので、合計額が減額されます。
もっとも、65歳になると妻の老齢基礎年金の受給が始まるので、実際に受け取れる年金額は増える可能性もあります。また、妻が老齢厚生年金も受け取れる場合は注意が必要です。妻の老齢厚生年金の金額分が遺族厚生年金から引かれるからです。
万が一のために遺族年金について覚えておきましょう
遺族年金を受給できるということは大切な親族が亡くなったということです。そのため、あまり考えたくはないかもしれませんが、遺(のこ)された遺族にとって遺族年金は生活を支える重要な年金となります。そこで、万が一のために遺族年金についてどのような人が対象か、どのように金額が決まるのかを覚えておきましょう。
出典
日本年金機構 遺族年金
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー