厚生労働省年金局が公表している「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2021年度末における厚生年金保険受給者の老齢年金平均受給額(月額)は14万5665円でした。   公的年金に加えて、確定拠出年金や退職金などで将来に備える計画を立てている人もいるでしょうが、年金の受給額そのものを増やしたいと考える人も多いのではないでしょうか。本記事では高齢になっても働き続ける場合、どれだけ年金が増えるのかを解説します。

70歳まで働くと受給年金は年額約20万円増える

会社員など厚生年金保険の加入者は、原則65歳から老齢厚生年金を受給できるようになります。国民年金(老齢基礎年金)も含めると、基本的な年金額の計算は以下のようになります。
 
年金額=老齢基礎年金+老齢厚生年金(報酬比例部分+加給年金額)
 
加給年金額は配偶者や子どもの年齢など一定の条件を満たすと特別に加算される年金額ですが、ここでは考慮しません。
 
2023年度における老齢基礎年金の満額は年79万5000円です。これまでに40年間(480ヶ月)分の保険料を不足なく納めていれば、これ以上増えることはありません。
 
つまり、高齢になっても働き続けることで増やすことができるのは厚生年金部分です。厚生年金部分の計算はやや複雑ですが、簡単に説明すると、働き続ける場合、受給できる年金額は以下の分だけ増えることになります。
 
報酬比例部分の増加分=平均標準報酬額×5.481(※)/1000×働いた月数
※計算を簡単にするため、2003年4月以降の被保険者期間の乗率を使用しています。
 
仮に60歳以降に10年間(120ヶ月)働いて、平均標準報酬額が30万円だった場合、約20万円(月額2万円弱)年金額が増加することが見込めます。
 
30万円×5.481/1000×120=19万7316円(年)÷12=1万6443円(月)
  

年金受給額が増える以外のメリットも

高齢になっても働くことのメリットとして、単に年金額が増えるだけではなく、年金に頼らずに生活できる期間を長くできることもあります。
 
年金は通常65歳から受給開始となりますが、働き続けることで年金の受給開始時期を66歳以後に遅らせることができます。これが年金の繰下げ受給です。年金の繰下げ受給をする場合、繰り下げた月×0.7%分年金額が増加します。これにより将来の経済的リスクを軽減できます。
 
例)年金受給額が月15万円(年180万円)で70歳まで繰下げ受給した場合
 

0.7%×60(12ヶ月×5年)=42%
180万円×1.42=256万6000円(年)÷12=21万3000円(月)

※この場合、年金受給開始を5年繰り下げると、毎月約6万円増額されることになります。
 
繰下げ受給ではなく、在職中に年金を受給する場合には、年金の額と給与(賞与を含む)の額に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合もあるので注意が必要です。
 

年金額を増やしたいなら長く働くのがおすすめ

近年、年金問題が取り上げられることも多いですが、公的年金は、現時点で最も安定した将来に対する備えだといえます。本記事では、長く働いて年金受給の開始を遅らせるという比較的簡単な方法で年金の金額を増やす方法を説明しました。
 
老後も働くといっても、必ずしも現役世代と同じように働く必要はありません。自身の財政状況、生活スタイルや体力に合わせつつ老後も働き続けることは、将来のお金の不安を軽減する合理的な方法といえるのではないでしょうか。
 

出典

厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況

日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額

日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分

 
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級