「国民年金の保険料は、毎年増えているのではないか」と、疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。また、「保険料が増えるのであれば、年金支給額も増えるのか」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。   本記事では、国民年金の保険料や年金支給額がどのように決まるのかを解説します。なお、特に断りのない限り、本記事の「年金支給額」とは「老齢基礎年金の支給額」のことをいいます。

保険料は物価変動率や実質賃金変動率に影響を受ける

令和元年度以降の国民年金保険料は、表1のとおりです。
 
図表1

保険料を納付する月分 国民年金保険料
平成31年4月〜令和2年3月 1万6410円
令和2年4月〜令和3年3月 1万6540円
令和3年4月〜令和4年3月 1万6610円
令和4年4月〜令和5年3月 1万6590円
令和5年4月〜令和6年3月 1万6520円

※日本年金機構 「国民年金保険料の変遷」を基に筆者作成
 
毎年度の保険料額は、図表2の計算式によって算出されます。
 
図表2

図表2

出典:日本年金機構 「国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?」
 
この計算式からは、将来の保険料は「物価変動率」や「実質賃金変動率」に影響を受けることが分かります。
 
ちなみに、令和元年度以降、「平成16年の制度改正で決められた保険料額」は1万7000円です。例えば、令和5年度の保険料は、以下のように算出します。
 

保険料額(1万6520円)≒ 1万7000円 ×(※)0.972
(※)0.972(保険料改定率) ≒0.976(前年度保険料改定率) ×[ 0.998(物価変動率) × 0.998(実質賃金変動率) ]

 

年金支給額は名目手取り賃金変動率とマクロ経済スライドに影響を受ける

令和3年度から令和5年度の年金支給額(満額・67歳以下の場合)は、図表3のとおりです。
 
図表3

年金が支給される年度 年金支給額
令和3年度 78万900円(月額6万5075円)
令和4年度 77万7800円(月額6万4816円)
令和5年度 79万5000円(月額6万6250円)

※筆者作成
 
年金支給額(満額)は、以下の計算式によって算出されます(国民年金法第27条)。
年金支給額(満額)= 78万900円 × 改定率
 
この改定率は、新規裁定者(初めて年金を受け取る方)の場合、原則として、「名目手取り賃金変動率」に「マクロ経済スライドによる調整」を行うことによって決定します。つまり、年金支給額は「名目手取り賃金変動率」と「マクロ経済スライドによる調整」に影響を受けるということが分かります。
 
ちなみに、令和3年度から令和5年度の改定率は、令和3年度が「1」、令和4年度が「0.996」、令和5年度が「1.018」です。なお、名目手取り賃金変動率は、「実質賃金変動率」「物価変動率」「可処分所得割合変化率」から算出します。マクロ経済スライドは、賃金や物価から算出します。
 

まとめ

以上のことから、国民年金の保険料、年金支給額について、以下のことがいえます。
 

・国民年金の保険料は、今後、増え続けるとはいえない
・年金支給額は、将来、増えるかもしれない

 
国民年金の保険料、年金支給額は、いずれも物価変動率と賃金変動率に影響を受けます。
 
国民年金の保険料の計算で採用される物価変動率・賃金変動率と年金支給額の計算で採用される物価変動率・賃金変動率は、厳密には違う数値ですが、増減については、ある程度の相関関係にある(保険料が増えれば、それに伴い年金支給額も増える)といえます。
 
ただし、日本の公的年金制度は「賦課方式」を採用しており、現在納めている保険料は、基本的には現在の年金給付に充てられます。つまり、経済的な要因により支払う保険料が増えたとしても、将来の年金支給額が増えるとは限りません。
 
私たちが将来受け取れる老齢基礎年金の額は、将来の経済状況に左右されます。このことから、私たちは経済についても、関心を持つべきだといえるでしょう。
 

出典

日本年金機構 「国民年金保険料の変遷」
日本年金機構 「国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?」
日本年金機構 「令和5年4月分からの年金額等について」
厚生労働省 「令和3年度の年金額改定についてお知らせします」
厚生労働省 「令和4年度の年金額改定についてお知らせします」
厚生労働省 「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
厚生労働省 「教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー