定年後に、地方への移住を考えている人は多いでしょう。しかし、地方への移住には都会より高くなる費用があることに注意が必要です。   本記事では、地方生活で都会よりも高額になるかもしれない費用や、地方生活の課題と目に見えにくい費用について解説します。地方移住に伴い高くなる費用を確認して、移住の判断やシミュレーションをする際の参考にしてください。

地方生活で都会よりも高額になるかもしれない費用

地方での生活において、国民健康保険料、水道料金、車の維持費などが都会に比べて高額になる可能性があります。地方に移住した後の費用をシミュレーションするためには、どのような費用が高くなる可能性があるのか、事前に把握しておくことは重要です。
 
本項では、地方生活で都会よりも高額になるかもしれない費用について紹介します。

 

国民健康保険料

国民健康保険料は、所得割、均等割、資産割、平等割という4つの基準に基づいて計算されますが、自治体によって税率などが異なるため、保険料に差異が生じます。
 
厚生労働省の「平成29年度市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」によれば、都道府県別で標準化保険料算定額が安い地域と高い地域は、図表1・2のとおりです。
 
【図表1】標準化保険料算定額が安い都道府県ベスト5

都道府県名 国民健康保険料(1年間)
埼玉県 10万2533円
神奈川県 10万3669円
愛知県 10万6055円
東京都 10万7388円
茨城県 10万8861円

※厚生労働省「平成29年度 市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」より筆者作成
 
【図表2】標準化保険料算定額が高い都道府県ベスト5

都道府県名 国民健康保険料(1年間)
徳島県 14万5629円
佐賀県 14万3079円
山形県 14万2577円
大分県 14万1562円
熊本県 13万9049円

※厚生労働省「平成29年度 市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」より筆者作成
 
国民健康保険料は、最も高い地域と最も安い地域では年間で数万円もの差があるため、移住を検討している地域の保険料をチェックしておくとよいでしょう。

 

水道料金

総務省統計局の「家計調査 家計収支編 2022年」によると、二人以上の世帯の上下水道料の全国平均は6万2487円でした。都道府県庁所在市および政令都市別で1世帯当たり年間の安い地域と高い地域のベスト5は、図表3・4のとおりです。
 
【図表3】水道料金が安い都道府県庁所在市および政令都市

都道府県庁所在市および
政令都市名(都道府県名)
上下水道料金(年間)
北九州市(福岡県) 4万3030円
大阪市(大阪府) 4万5138円
徳島市(徳島県) 4万5474円
神戸市(兵庫県) 4万6281円
札幌市(北海道) 4万7658円

※総務省統計局「家計調査 家計収支編 2022年 二人以上の世帯 表番号6 住居〜光熱・水道」より筆者作成
 
【図表4】水道料金が高い都道府県庁所在市および政令都市

都道府県庁所在市および
政令都市名(都道府県名)
上下水道料金(年間)
山形市(山形県) 9万4282円
さいたま市(埼玉県) 8万4349円
松江市(島根県) 8万4247円
長野市(長野県) 8万3633円
富山市(富山県) 7万9826円

※「総務省統計局「家計調査 家計収支編 2022年 二人以上の世帯 表番号6 住居〜光熱・水道」より筆者作成
 
水道料金は、最も高い地域と最も安い地域では、年間で約5万円、1ヶ月当たりでは約4200円の差があることが分かります。

 

車の維持費

車の維持費には、税金(自動車税など)、保険料(自賠責保険など)、ガソリン代、駐車場代、ローン返済などがあります。税金や保険料などは、車の種類や事故歴などによって変わります。また、地方は、都会と比べて車の使用頻度が高まるため、ガソリン代は高くなる可能性があるでしょう。
 
一般財団法人自動車検査登録情報協会の「自家用乗用車(登録車と軽自動車)の世帯当たり普及台数」によると、都道府県別の世帯当たり普及台数の全国平均は1.032台で、最も多いのが福井県の1.708台、最も少ないのが東京の0.421台でした。
 
地方へ転居すると1世帯当たり1〜2台の車を所有する可能性があり、それに伴い維持費も都市部より高くなるかもしれません。

 

地方生活の課題と目に見えにくい費用

地方への移住に伴う費用は、国民健康保険料や水道料金などにとどまりません。医療機関や買い物施設の不足、車の必要性、求人不足と低い給与といった、目に見えにくい要素にも気を配るべきです。これらの要素にも考慮したうえで、地方移住の計画を立てる必要があります。
 
本項では、地方生活の課題と目に見えにくい費用について詳しく見ていきましょう。

 

医療機関や買い物施設が少ない場合がある

地方は都会に比べて、医療機関や買い物施設が少ない傾向にあります。都市部では、自宅から歩いて10分以内にスーパーやコンビニがあることは珍しくありませんが、地方ではそのようなことはまれです。地域によっては、最寄りのスーパーへ行くのに車で10分以上かかるところもあります。
 
このため、高齢になっても運転が必要な可能性は高いです。75歳以上になると、認知機能検査と高齢者講習の免許更新などもクリアしなくてはなりません。医療機関や買い物施設が少ないことも、考慮しておく必要があります。

 

求人数が少なく給与が安い可能性がある

地方では、都市部に比べて求人が少なく給与も低い可能性があるため、移住の際には仕事面でも慎重に検討する必要があります。
 
例えば、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」によると、令和5年度の最低賃金の時給は都市部では東京都が1113円、神奈川県が1112円、大阪が1064円となっていますが、地方では岩手県が893円、沖縄県が896円、秋田・愛媛・高知・宮崎・鹿児島県が897円と低い水準です。
 
定年後に仕事することを検討している方は、求人数や給与が都会とは違うことを理解しておく必要があります。

 

転居費用もかかる

地方と都会で費用に大きな違いがあるわけではありませんが、地方への移住に伴う転居費用が発生します。
 
具体的には、物件の敷金や礼金、引っ越し費用、家具や家電の購入費用などが含まれ、場合によっては高額な支出が必要となることがあります。地方への移住を検討する場合は、これらの費用を事前に確認しておきましょう。

 

地方への移住前に生活費の違いをシミュレーションしておこう

国民健康保険料、水道料金、車の維持費など、これらの費用は地方への移住に伴い増加する可能性があります。さらに、地方では医療機関や買い物施設などが都会に比べて限られていることも考慮すべきです。
 
都会から地方への定年後の移住を検討する際には、増加する費用や目に見えにくい費用にも注意を払い、適切な判断とシミュレーションを行い検討していきましょう。

 

出典

厚生労働省 平成29年度 市町村国民健康保険における保険料の地域差分析
総務省統計局 家計調査 家計収支編 2022年 二人以上の世帯 表番号6 住居〜光熱・水道
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー