企業活動によって生み出された利益は、給与や株主配当などに充てられますが、その一部は内部留保として社内に蓄積されます。巨額の内部留保を保有する企業もあるので、少しでも賃上げに回すべきではと感じる人も多いことでしょう。   しかし企業経営の数字を知ると、給与を簡単にはアップできない理由が見えてきます。そこで本記事では、内部留保の目的や課題について解説します。

企業が内部留保をおこなう目的と国内の現状

内部留保とは、給料や税金、各種経費などを差し引いたあとの利益を積み上げたものを意味します。貸借対照表では、利益余剰金として右側(その資金をどのように調達したのか)に記載されます。
 
この利益余剰金は、主に以下の内容で構成されるものです。

・利益準備金:企業の利益のうち、内部留保するべきと定められているもの。株式会社では、配当した剰余金の額に10分の1を乗じて得た金額を計上する
・その他利益剰余金:企業が任意で積み立てるもの
・繰越利益剰余金:上記以外の剰余金。純損失が発生したときはマイナスで計上する

これらの内部留保は、資金繰りが苦しくなったときの補てんや将来的に新規事業をおこなうときにも利用されます。
 

日本の内部留保の現状

では、日本国内における内部留保の現状はどうなっているのでしょうか。
 
財務省の「年次別法人企業統計調査(令和4年度)」によると、令和4年度の資金調達の構成における内部留保は56兆833億円でした。構成比では49.3%で、全体の約半分を占めています。2018年の37兆5310億円(構成比40.4%)と比較すると、企業における内部留保の蓄積が進んだことが分かります。
 

現金であるとはかぎらない

内部留保は、必ずしも現金で蓄えられているとはかぎりません。有価証券の含み益や不動産などに、形を変えている場合もあるでしょう。そのため、帳簿では内部留保が増大していたとしても、給与として還元できるものばかりではないことを知っておく必要があります。
 

内部留保の重要性と課題

内部留保は企業の信用力につながるので、金融機関から融資を受けるときにも評価されるポイントです。内部留保が多い=安定して利益を出していると判断され、金融機関も安心して融資できるためです。
 
また、日本の企業間取引は与信取引が主流です。与信取引では一定期間内の取引を後日まとめて決済するので、取引から収入を得るまでにはタイムラグがあります。このような背景から、売上(売掛金)があるにも関わらず手元資金がゼロになる「資金ショート」に注意しなければなりません。
 
資金ショートすれば従業員に給与が払えず、仕入れもできないので倒産リスクは高まります。そこで、いざというときの資金源として内部留保を蓄積する必要があります。
 

内部留保で給与は払えない

内部留保に対する批判の多くは、現金で蓄積されているという誤解から生じています。前項で解説したとおり、必ずしも現金で蓄えられているものではないので、給与に還元できない内部留保も存在します。
 
そこで、内部留保に賃上げの原資を求めるのではなく、企業がしっかりと現金を稼げるようになる必要があります。内部留保が潤沢なら金融機関からの融資を受けやすくなり、投資や買収など企業活動の幅も広がるでしょう。結果として企業の収入は増え、従業員の給与アップも期待できます。
 

まとめ

なにかと問題視されやすい内部留保ですが、企業が安定して活動するためには欠かせない存在です。内部留保が少なすぎれば、コロナ禍のような経済危機を乗り越えられない場合もあるでしょう。
 
しかし内部留保を適切に蓄えていれば、成長を目的とした攻めの投資に使えるので、企業価値は高まり従業員への還元にもつながります。
 

出典

財務省 年次別法人企業統計調査(令和4年度)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー