病気やけがで病院にかかるとき、自家用車、電車やバス以外に、タクシーを使うこともあるでしょう。こうしたときのタクシー代に使える公的給付はあるのでしょうか? 本記事では、病院に行くときのタクシー代について、公的給付が使えるケース、請求の方法、給付額等について解説します。

健康保険からの給付

健康保険の給付のひとつに「移送費」があります。これは病気やけがのため、緊急で病院にかかったとき等の交通費について支給されるものです。
 

「移送費」が支給されるのは特別な場合のみ

しかし「移送費」が認められるのは、医師の指示により緊急で移送されたとき等に限られます。そのため、通常の通院には使えません。
 
移送費が支給される要件は次のとおりです。
 

●保険診療にもとづく療養のために、病院に移送されたこと
●病気やけがにより、移動が著しく困難だったこと
●緊急その他やむを得ない場合だったこと

 

移送費は現金で支給される

前述のケースに該当し、タクシーで病院に移送された場合は、後日、保険者(全国健康保険協会または健康保険組合)に対し、書面で移送費の請求をします。その後、保険者が移送費の必要性を認め、支給が決定したときは、請求者の銀行口座等に移送費が振り込まれます。
 

タクシー代が全額戻るわけではない

移送費の金額は「最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用により算定された金額」(健康保険法施行規則第80条)とされています。そのため、実際に支払ったタクシー代の全額が戻ってくるわけではありません。
 

請求前に保険者に確認する

「移送費」のような現金給付は、自分から請求しない限り受給できません。
 
しかし前述のとおり、移送費の要件は非常に限定されたものです。そのため申請する前に、保険者(全国健康保険協会または健康保険組合)に、自分がタクシーを使った状況が移送費に該当するか問い合わせた方がよいでしょう。その際、請求に必要な添付書類についても、併せて確認しておきましょう。
 
なお、国民健康保険の場合も「移送費」の支給があります。国民健康保険に加入している人が移送費の請求をする場合は、住所地の市区町村に問い合わせてください。
 

労災では「通院」代も給付がある

一方、けがをした原因が労災の場合は、一定要件のもと「通院」に要した電車・バス・車代などの給付があります。ただしタクシー代については、電車等ではなくタクシーを使う必要性が認められる場合に限られます。
 
労災保険から通院の費用が支給されるのは、次に該当した場合です。なお、病院は住所地または勤務地から片道2km以上あることが原則です。
 

●住所地または勤務地と同一市町村内の労災指定病院に通院したとき
●同一市町村内に適切な病院がない場合、隣接する市町村内の労災指定病院に通院したとき
●交通事情などの関係で隣接する市町村内の労災指定病院に通院した方が利便性は高いとき
●同一市区町村にも隣接市区町村にも適切な労災指定病院がない場合に、最寄りの労災指定病院に通院したとき
●片道2km以内でも、傷病の状況から交通機関を利用しなければならないと認められるとき

 

まとめ

通常のけがや病気での通院にタクシーを使っても、一般的には健康保険からの給付はありません。ただし緊急時などやむを得ないと認められる場合に限り、移送費が支給される場合もあります。後日、申請が必要になったときのためにも、タクシー代の領収書は保管しておきましょう。
 

出典

全国健康保険協会 移送費

e-Gov法令検索 健康保険法施行規則

厚生労働省 国民健康保険の給付について

厚生労働省 第13章移送費(通院費)について

厚生労働省 あなたは通院費を請求していますか?

 
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士