会社によっては、給与にみなし残業代が含まれていることもあります。中には月30時間と、多く感じられるような時間が設定されていることもあり、その存在について疑問を感じる人もいるようです。   もしも、決められたみなし残業の時間を超過した場合は、どのような扱いとなるのでしょうか。また、月のみなし残業時間が30時間というのは「多い」といえるのでしょうか。みなし残業について考えていきます。

みなし残業とは

みなし残業とは、従業員の給与について、あらかじめ一定時間分の残業代を見込んで支給する制度です。そして、実際の残業時間がみなし残業の時間未満であっても、満額のみなし残業代が支給されます。
 
例えば、月給19万7500円であり、基本給16万円に加えて、みなし残業30時間分として3万7500円を支給する……というような給与形態の場合、実際の残業時間が0であっても、みなし残業30時間分の残業代3万7500円が満額支給されます。
 

みなし残業30時間は多いのか?

みなし残業の30時間は、多いとも少ないとも、一概には言い切れません。みなし残業は、会社によっては45時間や60時間と、もっと多くの時間が設定されていることもあるからです。
 
とはいえ、基本的に時間外労働(休日労働は除く)が月に45時間、年間360時間が上限とされていることを考えると、少ないとはいえない残業時間です。人によっては、多く感じられても不思議ではありません。
 
なお、みなし残業が30時間分もついていると、労働時間に対する実質的な賃金が、同じ総支給額の方と比較して低くなることもあります。
 
例えば、みなし残業30時間で月給19万7500円(基本給16万円に加え、みなし残業時間分の3万7500円を支給)のAさんと、みなし残業(通常の残業含む)なしで基本給18万円のBさんでいえば、Bさんのほうが時間給は高くなります。これを時間単価で考えてみると、Aさんは時給1000円であるのに対し、Bさんは時給1125円になるからです(1日8時間、月20日の労働換算)。
 
もし、30時間の残業があった場合、Bさんには、25%の割増賃金を含む残業代30時間分に当たる4万2180円が支給され、月給は総額で22万2180円となります。残業時間という条件を同じにしてみると、みなし残業代のないBさんの支給額のほうが、Aさんよりも2万4680円も高くなります。
 

みなし残業は超過分があれば支給することが原則

みなし残業として設定された時間を超えて働いた場合は、超過分の残業代は別途支給されることになっています。例えば、みなし残業の時間である30時間を超えて、1ヶ月に40時間の残業をした場合、その超過分に当たる10時間分の残業代を受け取ることができます。
 
仮に先ほどのように、30時間分のみなし残業が設定され、みなし残業代として3万7500円支給されている方が、40時間残業したとしましょう。そうすると、超過する10時間の残業代は25%の割増賃金を含み、1万2500円が追加支給されるということになります。
 

みなし残業は残業を強制するものではない

みなし残業と聞くと、その時間分の残業を強制されるのではないかと思われますが、そうではありません。みなし残業の存在は、残業を強制させるものではないからです。
 
とはいえ、みなし残業を設定しているにもかかわらず、実際の残業時間がみなし残業時間以下であると、企業としては労働していない時間にも賃金を支給していることになります。これは、企業から見れば損をしていることになりますので、みなし残業時間には、実際の残業時間に近い時間が設定されていることも珍しくありません。
 
また「みなし残業分は残業するべきだ」という風潮が社内に存在していることもあり、トラブルが生じることもあるようです。
 

まとめ

みなし残業の設定時間は、勤務先によって異なっています。30時間のみなし残業を一概に「多い」とは言い切れませんが、考え方次第では多く感じても不思議ではありません。むしろ「少ない」と感じる人のほうが少ないでしょう。
 
なお、設定されたみなし残業時間を超えても、超過分は支給されますので、法律上は残業代は0円にはなりません。
 
もし、みなし残業について悩んでいるようであれば、自身で基礎的な部分について学び、それでも解決できない場合は、労働基準監督署などに相談してみてください。
 

出典

厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
 
執筆者:柘植輝
行政書士