65歳から受給することのできる老齢基礎年金の額は、20歳から60歳までに保険料を納付した月数などによって決まります。一方、主に経済的理由から国民年金保険料を納めることが困難な場合、納付が猶予される制度がありますが、猶予された期間は保険料を追納しないかぎり、年金額には反映されません。   今回は、老齢基礎年金の仕組みと国民年金保険料の追納制度について解説します。

老齢基礎年金の仕組み

1.老齢基礎年金とは

老齢基礎年金は、原則として全国民を対象とした年金制度です。20歳から60歳になるまでの40年間の「国民年金加入期間」などに応じて年金額が計算され、65歳から受給することができます(※1)。
 

2.老齢基礎年金額の算定方法

老齢基礎年金の額は、図表1のとおり保険料を納付した月数(保険料納付済月数)および全額または一部免除された保険料を納めた月数(図表内では「免除月数」と表す。減額された保険料を納めていない月は未納扱い)によって算定されます(※1)。
 
図表1

図表1

(※1を基に筆者作成)
 
従って、20歳から60歳までの40年間に保険料が免除された期間がなければ、保険料納付済月数が480月(40年)となり、満額の老齢基礎年金を受給することができます。
 
なお保険料納付済期間には、国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間はもとより、20歳から60歳になるまでの第2号被保険者および第3号被保険者の期間も含まれます。
 

国民年金保険料の納付猶予と追納制度

国民年金保険料は、毎月納付することが原則ですが、経済的に納付することが困難な場合は、保険料の全額または一部を免除されたり、保険料納付の猶予を受けられたりする制度があります(※2)。
 
なお、今回の説明では、保険料の全額または一部が免除される制度の説明は割愛させていただきます。
 

1.保険料の納付猶予とは

20歳から50歳未満の方が、本人および配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する方は前々年所得)が一定額以下の場合は、申請し承認されると保険料の納付が猶予されます(※2)。
 

2.学生の納付特例とは

国内に居住する20歳以上の国民は、国民年金の被保険者として保険料の納付が義務付けられていますが、一定の要件を満たす学校に通う学生には、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」を利用することができます(※3)。
 

3.保険料の追納とは

保険料を猶予された期間や学生納付特例制度を利用した期間は、老齢基礎年金や障害・遺族基礎年金を受給するために必要な「受給資格期間」に含まれますが、あとから保険料を追納しないと、老齢基礎年金額には反映されません。
 
追納ができるのは、追納が承認された月の前10年以内の猶予期間に限られていますので、原則古い期間の分から納付します。なお、2年以内の保険料は、納めるべき年度の保険料のみを払えばよいことになりますが、3年以上前の保険料には、当該年度の保険料に追納加算額が追加されます(※4)。
 

4.保険料の追納額

例えば、保険料の納付猶予を受けた方や全額免除されていた方が、令和4年度分の保険料を令和5年に追納する場合の保険料は月額1万6590円(令和4年度額)ですが、10年前の平成25年度分の保険料を追納する場合は、追納加算額180円を含み月額1万5220円(平成25年度の本来の保険料は1万5040円)となります(※4、5)。
 
なお、追納した保険料は、支払った年の社会保険料控除の対象となります(※6)。
 

5.老齢基礎年金額の増加額

1年分の保険料を追納すると、将来受給する老齢基礎年金額を、下式のとおり1万9875円(令和5年度額)も増やすことができます。これは、満額の老齢基礎年金(480月分)のうち、12月分に相当する額です。
 
79万5000円×12月/480月=1万9875円(令和5年度額)
 

まとめ

国民年金の第1号被保険者は、毎月保険料を納付する必要がありますが、経済的理由などにより保険料の納付が困難な場合は、保険料納付猶予制度を利用することができます。また、一定の条件を満たす学校に通学する学生は、学生納付特例を利用することができます。
 
保険料の納付を猶予された期間や学生納付特例を利用した期間は、保険料を追納しないかぎり、老齢基礎年金額を満額に近づけることはできません。1年分の保険料を追納することによって、老齢基礎年金を約2万円も増やすことができますので、可能であれば保険料を追納することをお勧めします。
 

出典

(※1)日本年金機構 老齢年金ガイド(令和5年度版)
(※2)日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※4)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
(※5)日本年金機構 国民年金保険料の変遷
(※6)日本年金機構 タックスアンサーNo.1130 社会保険料控除
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士