60歳で定年退職して、すぐに年金暮らしをしたいと考える人もいるでしょう。老齢年金は原則65歳から受け取れますが、早くもらいたい人は60歳から繰上げ受給をすることができます。   しかし、繰り上げてもらうことで受給額が減額されてしまいます。老後いくらあれば生活できるのかを考え、現実的に判断することが大切です。本記事では、夫婦で年金を繰上げ受給したらいくらくらいになるのか、老後にかかる生活費を考えながらシミュレーションしていきます。

年金平均受給額は20万333円

サラリーマンの夫と、国民年金のみの専業主婦の夫婦の場合で、年金受給額を試算します。
 
厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金・国民年金合わせた年金の平均受給月額は14万3965円、妻の国民年金のみの平均受給月額は5万6368円です。
 
これらを合わせた金額の、20万333円が夫婦2人の平均受給月額となります。これは65歳からもらえる金額で、早く受給する場合は減額され、その金額は一生変わりません。具体的にどれくらい減額されるのかシミュレーションしていきます。
 

60歳で繰上げ受給する場合のシミュレーション

繰上げ受給をする場合、1月あたり0.4%減額されます。
 
60歳0ヶ月で受給する場合、60ヶ月早く受給することになるため、「0.4%×60ヶ月」で、24%減額されることになります。図表1は請求時の年齢と減額率の早見表です。
 
図表1

図表1

日本年金機構 繰上げ請求早見表
 
60歳で年金受給を開始する場合、最新(令和3年度)の夫婦2人の年金受給額平均に、24%の減額率をかけると、以下になります。


・夫:14万3965円×24%=3万4552円
・妻:5万6368円×24%=1万3528円

受給額は以下のとおりです。
 


・夫:14万3965円−3万4552円=10万9413円
・妻:5万6368円−1万3528円=4万2840円

 
夫婦2人の受給額を合計すると、15万2253円です。繰上げ受給しない場合は20万333円のため、5年繰上げ受給すると、月4万8000円ほど受給額が減り、一度繰り上げるとこの金額は変わりません。
 
ここでは平均年金受給額を基に計算しましたが、自身のおおよその年金予定受給額を当てはめて具体的に計算してみるとよいでしょう。
 

生活費の平均

老後にかかる生活費が想定できれば、繰上げ受給をしてよいかどうかの判断ができるでしょう。
 
総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕 2022年(令和4年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦2人の無職世帯の消費支出の平均額は月約23万6000円、税金や社会保険料の支出である非消費支出は3万1812円です。
 
加えて食費や光熱費のほか、高齢になると医療費や介護にかかる支出も増えていくことが想定され、前述した繰上げ受給の年金額(15万2253円)では赤字になります。
 

退職金で補てん

定年まで勤め、退職金が支給される人もいるでしょう。退職金があれば、繰上げ受給の年金が少なくても、補てんしながら生活ができる可能性があります。
 
中央労働委員会の「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、大卒男性の定年退職による退職金の平均は約2200万円とされています。
 
先述したように、繰上げ受給の年金月額が約15万2000円として、支出が月約26万8000円(非消費支出含む)であれば毎月11万6000円の赤字です。
 
この赤字分11万6000円を、退職金で補てんしながら生活していくことで、見通しが立つ場合もあるでしょう。なお、2200万円を毎月11万6000円切り崩すと、約190ヶ月(15年10ヶ月)で底をつきます。60歳から切り崩した場合、75歳で退職金はなくなることになります。
 
また、平均寿命が伸びていることや、急な病気などによる出費も考えられるため、老後の見通しや計画は慎重に行う必要があります。
 

繰上げ受給を行うかどうかは計画的に検討を

ここまで、繰上げ受給の平均額、生活費、補填する退職金について解説しましたが、単純に繰上げ受給の年金額だけを見ると、かなり少なくなってしまうことがわかります。
 
公的年金以外に、個人年金の受給や、iDeCoなどの加入があり、生活費以上の受給が見込める場合は、繰上げ受給を安心して選択することができるでしょう。年金の繰上げ受給は、一度決めたら変更はできないため、しっかり老後の生活設計を立てておくことが大切です。
 

出典

厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編2022年(令和4年)平均結果の概要
中央労働委員会 令和3年賃金事情等総合調査(確報)
 
執筆者:渡邉志帆
FP2級