毎月の家賃を節約するため、都心の職場から遠い場所に住み、遠距離通勤をする方は時々存在します。しかし、遠距離通勤によって毎月の厚生年金の保険料が上がり、損をしていることもあります。   そこで、通勤手当と厚生年金の保険料の関係について確認していきます。

厚生年金の保険料はどう決まる?

厚生年金の保険料は、加入者が受け取る給与を一定の幅で区切った「報酬月額」に当てはめて決められる「標準報酬月額」を基に計算していきます。標準報酬月額は、原則として4月から6月の報酬月額の平均(おおまかには給与の平均)を基に決定され、その年の9月から翌年8月の間で適用されます。
 
例えば、給与が4月に28万円、5月に27万円、6月に30万円という方の場合、給与の平均額は28万3000円ほどです。これを厚生年金保険料の表に当てはめると、標準報酬月額は28万円となります。すると、本人が加入する厚生年金の保険料は2万5620円となるわけです(日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料表(令和5年度)」より)。
 

厚生年金の保険料の計算における「給与」の範囲は?

厚生年金の保険料の計算において「給与」とされるのは、毎月受け取る基本給や残業代などだけではありません。所得税や住民税は非課税とされている「通勤手当」も、給与に含んで考えます。
それゆえ遠隔地から通勤しているような場合は、会社から非課税で支給される通勤手当の金額も増加し、結果的に標準報酬月額も増加するため、厚生年金保険料の負担が大きくなるのです。
 
例えば、残業代と基本給からなる給与が4月に28万円、5月に27万円、6月に30万円という方が2名いたとします。
 
徒歩通勤により通勤手当のないAさんの場合、厚生年金の保険料は2万5620円です。しかし、通勤手当が毎月1万円あるBさんは、給与が29万円から31万円の間にあることになり、自身が負担する厚生年金の保険料は、2万7450円となります(日本年金機構「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」より東京都のデータを基に記載)。
 
両者の差は月々1830円で、年間だと2万1960円もの差です。
手取りとして自由に使えない通勤手当が存在しているがゆえに、今自由になる手取りが、年間2万円以上も減っているということになります。給与や交通費が高い人ほど、厚生年金保険料も高額になりやすい傾向にあります。
 
そのため、節約のために遠くに住んで長距離通勤しているにもかかわらず、あまり節約になっていないということがあるのです。
 

通勤手当は健康保険料にも影響する

通勤手当の額が影響するのは、厚生年金の保険料だけではありません。健康保険料にもその影響は及びます。
 
先ほどの事例で言うと、Aさんの健康保険料は1万6548円です(介護保険第2号被保険者に該当する場合)。それに対して、Bさんは1万7730円になります。月々の差は1182円で、年間だと1万4184円になります。厚生年金の保険料との差を含めると、両者の差は年間で3万6144円もの額になります。遠距離通勤により通勤時間がかかっているのに、社会保険料は高くなり、損をしている気分になるでしょう。
 

まとめ

厚生年金の保険料や健康保険料は、通勤手当も含めて計算されます。そのため、毎月の通勤手当を除いた額面が同じであれば、通勤手当がある分それらが高くなり、思ったほど節約になっていないこともあります。
 
もし、家賃を節約するために遠くに住んでいることで、通勤手当が高額となってしまっている場合、浮いている家賃から、増加している厚生年金の保険料と健康保険料の合計額を、引いてみてください。もしかすると「これなら職場の近くに住んだ方が良い」と思うことがあるかもしれません。
 

出典

日本年金機構 厚生年金保険の保険料
全国健康保険協会 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
 
執筆者:柘植輝
行政書士