物価上昇による支出増加が消費者の生活を苦しめる中、会社員の収入を増加させる企業の「賃上げ」に注目が集まっています。物価上昇率を上回る賃上げを各企業が実施すれば消費者の生活は守られます。   すでに賃上げ実施を宣言する企業も出てきており、例えば、全国に店舗を展開する串カツ田中ホールディングスは正社員の賃金を平均で5%引き上げると発表しました。   日本経済団体連合会(経団連)は2024年の賃上げ目標を「5%以上」と掲げ、各企業に実施を要求していますが、賃上げ5%が実施されても実は単純に手取り収入が5%増えるわけではないのです。本記事では、経団連が発表している5%以上の賃上げ目標の裏に隠れている真実について解説します。

「賃上げ」には定期昇給とベースアップの双方が含まれている

一般的に、「賃上げ」と聞くと、社員の基本給が一律に上がる「ベースアップ」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、実はこの賃上げ目標は、年齢や勤続年数に応じて企業が行っている定期昇給(定昇)2%を前提に、ベースアップ目標を3%以上とする方針を指しているのです。
 
つまり、実質的なベースアップは3%以上であり、ニュースやメディアで公表されている目標の5%とは乖離(かいり)があるのです。
 

定期昇給とベースアップは何が違うのか

定期昇給とは、会社がそもそも定めている昇給制度で、年に1回などの定期的なタイミングで昇給していく制度です。あくまで「個人」としての年次や役職、評価に応じて給与が増えていく仕組みであり、企業の人件費に組み込まれている制度です。そのため、昨今の物価上昇に伴う賃上げの動きとは連動していません。
 
定期昇給は、賃金が高い傾向にある高齢社員の定年退職と、賃金が最も安い状態で入社する新人の入社が重なるため、企業全体の給与水準はあまり変わりません。つまり、実質的な賃上げとはいえないのです。これに対して、ベースアップは全社員の給与を一律で上げる仕組みです。こちらは本質的な賃上げといってよいでしょう。
 

「賃上げ」ではなく「ベースアップ」に注目すべき

経団連やメディアなどが報じる賃上げ目標の5%には、定期昇給とベースアップが混在しているため、純粋な賃上げとはいえません。「賃上げ」ではなく、企業の「ベースアップ」がどれくらい行われているかに注目していく必要があります。
 
総務省が公表しているデータでは、2022年度の消費者物価指数は3.2%上昇しており、この物価上昇率を超えるベースアップを実現しなければ物価上昇に追いつくことができず、生活が苦しくなる世帯が増えることになります。今後の自身の勤める企業と経済全体の賃上げの本質的な動きを注視していきましょう。
 

出典

日本経済団体連合会 春季労使交渉・協議の焦点
総務省統計局 2020年基準消費者物価指数全国2023年(令和5年)平均(2024年1月19日公表)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー